Webライターとして生きる

五条ダンのブログ。「楽しく書く」ための実践的方法論を研究する。

クリエイターが知っておきたいビットコインのリスクとデメリット

はっきり言ってしまって、僕は他者に「ビットコインを使おうよ!」とおすすめする気持ちはみじんもなくて、むしろこれから暗号通貨を始めようとする友人がいようものなら「や、やめた方がいいんじゃないかな……」と止める側の人間である。

というのは、先日とある仮想通貨を10万円分買ったのだけれど、その3日後の資産評価がこの有様だ。

(※画像はAndroidアプリ  ビットコインウォレット coincheck のスクリーンキャプチャ)

 

 なんということでしょう。

 10万円が、数日寝かせただけで77,429円に……。

含み損なので損失は未確定だが、円換算で2万円ちょっと減らしてしまった。

現状、仮想通貨はどこぞの仕手株かってくらいに値動きが激しい。それこそ前日比10%単位で上がったり下がったりする。これは僕が買ったネム(XEM)に限らず、ビットコインでも同じ。

仮想通貨は価格変動リスクがあまりにも高く、むやみに人に勧められるものではない。

この記事ではそのような生々しい話を入れながら、クリエイターが(仮想通貨でマネタイズしてやろうと考える際に)知っておかなければならない、ビットコインのリスクとデメリットを紹介しよう。

1.ファンに対して価格変動リスクの高い商品を勧められるか?

まずこの一点に尽きる。

例えばクリエイターが、VALUでビットコインを集めるにせよ、投げ銭や寄付形式でビットコインを集めるにせよ「私を応援するために円をビットコインに換えてね」とは言いづらい。

なぜならば、それは「価格変動リスクの高い商品」をファンに対して勧めることに繋がるからだ

仮想通貨のチャートを調べてもらえば分かるとおり、前日比+15%だとか、-15%だとか、株や為替以上に値動きが激しい。

今、ビットコインは上昇トレンドにある。損をしている人は少ないかもしれない。

しかし仮想通貨バブル(?)が弾けて大暴落が始まったとき、目を覆うほどの惨状が広がるのは容易に想像できる。

補足すると、すでに幾ばくかのビットコインを保有している人に対して「ビットコインで支援してください!!」と呼びかけること自体に何ら問題はない。その人はすでに仮想通貨のリスクを知った上で、それを保有しているはずだから。

問題なのは、クリエイターに乗せられたファンが、仮想通貨のことをよく知らずに手を出してしまうことだ。VALU界隈の騒動も見過ごせない。

(注釈)

VALU:自分を株式会社に見立てて、株券のようなもの(VALU)を発行できるサービス。VALUの価格は需給によって変動し、売買はビットコインで行われる。VALUを保有するVALUER(株主)には優待を出すことができる。

クリエイターがファンに資金援助を募れるサービスとして注目される。

詳細は上記公式サイトを参照されたし。

VALU界隈の騒動:著名なユーチューバーがVALUにおいて相場操縦・風説の流布・インサイダー取引のようなことを行い、ファンからビットコインを巻き上げた一件。

有名なブロガーやユーチューバーあるいは漫画家がVALUを発行したとき、ファンはよく分からないままに円をビットコインに交換しようとする。

円を仮想通貨に換えるのは、手間もかかるし、手数料もかかるし、リスクもある。

ある日ビットコインが暴落したとしても、クリエイター側はその責任を負えない。

(参考)円決済でファンがクリエイターを支援できるサービス一覧

クリエイターがファンからお金を集めて優待を出したいのであれば、ふつうに円決済できるサービスを使った方が、ずっと安心できる。

例えば下記のサービスを使えば「自分を支援してくれた人だけが読める有料記事、ダウンロードコンテンツ」を円決済で売り出すことができる。

2.(デメリット)ビットコインを送るには送付手数料がかかる

「少額の投げ銭をしたいときや、寄付をしたいときにはビットコイン送金が役に立つ」とメリットが語られることも多い。

たしかに、銀行口座をネットに晒して「私に寄付してください!」とは、なかなか言えないし、本名がバレてしまうデメリットもある。銀行振込には手数料がかかるから、100円だとか200円だとか、少額の投げ銭をするには向かない。

そんなとき、ビットコインならば100円でも200円でも、ほんのわずかな手数料で送金できる。

と、僕も思い込んでいたのだが、ビットコインを相手に送るときには手数料が必要となる。取引所によっても異なるが、コインチェックだとBTC送付手数料は0.0005BTCだ。

安い!と思われるかもしれないが、現在のレートで円換算したら236円もかかってしまう!

これ国内だったら、ふつうに銀行振込の方が安いではないか。

三井住友銀行のATMから他行宛に振り込む場合でも216円。住信SBIネット銀行ならば、月3回まで無料で振り込める。

ビットコインの手数料が安いとか言われるのは、あくまで海外送金と比較した場合であって、国内送金であればふつうに銀行振込の方が安いし便利である。

ビットコインの普及によって、クリエイターへの少額寄付・投げ銭システムが普及するかと問われれば、難しいと答えざるを得ない。

あと「送金速度が早い」といったメリットもさかんに言われるが、これも海外送金と比べた場合であって、国内送金であれば銀行振込の方が圧倒的に早いです。

ビットコイン決済は早くても10分、場合によっては数時間~数日待たないと反映されないケースもある。

3.(デメリット)円→ビットコイン→円と交換するときにも実質的な手数料がかかる

仮想通貨取引所のアフィリエイトサイトで「ビットコインは売買手数料がかからない」と謳っているところがあるものの、これは嘘に近い。たしかに、売買手数料という名目では取っていない。

しかしスプレッドが開いているため、円→BTC→円の交換には実質的な手数料がかかる。

例えば仮想通貨取引所のひとつである、GMOコインの売買画面を確認したところ、次の画像のような価格が表示された。

(※画像は GMOコイン売買画面のスクリーンショット。売却価格および購入価格は常に変動します)

 

1BTC(ビットコイン)の

  • 売却価格:473,825円
  • 購入価格:476,825円

つまり1BTCあたり3,000円のスプレッド(価格差)が開いている。

これはどういうことかと言うと、今この瞬間に「円→ビットコイン→円」への交換を行った場合、それだけで3,000円はお金が減る。

言い換えると、1BTCあたり3,000円分の実質的な売買手数料がかかっているという意味だ。

これは、株やFXと比べると割高に感じる。SBI証券で株価48万円の株式を売買したとしても、約定にかかる売買手数料は600円もかからない。(株とビットコインを比較するのもあれだが)

 

なおコインチェックで確認したところ1BTCのスプレッドは数百円だったので、取引所によっても差がかなりあるようだ。

4.(デメリット)仮想通貨取引所から日本円を出金するときにも手数料がかかる

仮想通貨取引所のビットコインウォレットにBTCを貯めて、いざ日本円に換えて出金しようとするときに、上記の実質売買手数料に加えて、日本円の出金手数料もかかってしまう。

例えば、僕がメインで使っているコインチェックだと、日本円の出金時に400円の手数料が引かれてしまう。

ここまでくどくどと述べてきたが、要約すると

  1. 日本円をビットコインに換える
  2. ビットコインを相手に送る
  3. ビットコインを日本円に換える
  4. 日本円を仮想通貨取引所の口座から引き出す

のすべてのプロセスにおいて手数料がかかってしまう。

ゆえに、投資や投機を目的とする以外で「ビットコインを使うメリットが薄い」ということを伝えたかった。

5.(デメリット)ビットコインの送付速度が遅い

もしビットコインの決済スピードが早い(リアルタイムで反映される)のであれば、コミケなどの同人誌即売会で活躍する機会はあったと思う。

しかし現状、ビットコインは送金速度が遅いので、リアル決済の場ではなかなか使いづらい。

仮想通貨取引所ビットフライヤーのFAQにはこのように注意書きがある。

ブロックチェーンにおけるトランザクションの承認には時間がかかる場合があり、承認に数日を要することもございます。

引用:仮想通貨の送付が反映されません。 - ビットコインのサポート【bitFlyer】

トランザクション(入出金取引)の完了に数十時間も待たされたという話も出ている。将来的には解決されるかもしれぬが、何にせよ使いづらい。

まとめ

クリエイターがビットコインを使うには、下記のリスクとデメリットがある。

  1. 価格変動の激しい仮想通貨を自分のファンに対して勧めるリスク
    僕が仮想通貨投資で、10万円をたったの三日で7万7千円に減らしてしまった話を思いだそう。投資家が損失を出すのは自己責任で済む話だが、有名人が「ビットコインおすすめやで!」とファンを煽って買わせた場合、話は別である。
  2. BTC建てで貯めた売上金が、仮想通貨の相場崩壊によって大きく目減りしてしまうリスク
    ビットコイン建てで売上金を貯めた場合、もしも仮想通貨バブル(?)が弾けて10%も20%も価格が下落したとき、自分が大きく損をしてしまう。
  3. 何かと手数料がかかってしまい、少額決済や投げ銭システムに使いづらい
  4. 何かと手数料がかかってしまい、国内であれば銀行振込の方が安く済む
  5. 送金速度が遅く、同人誌即売会などのリアル決済の場では使いづらい

クリエイターがマネタイズをするのであれば、わざわざビットコインにこだわる必要はなく「BOOTH」や「Enty」を使えば良いし、あるいはKDPで電子出版をしたって構わない。

「クリエイターはビットコインを始めるべし!」と無責任に勧める情報がWebに増えてきたので、注意喚起を兼ねてここではリスクとデメリットを取り上げた。

以上、クリエイターの皆さんのお役に立てれば嬉しく思う。

(了)

Amazonプライムの特典は本当にメリットばかりと言えるのか?

プロブロガーはどうやら「Amazonプライムをおすすめしなければならない宿命」に取り憑かれている。嘘だと思うならAmazonプライムの体験談を検索してみよう。

ほとんどの記事は、プライム会員のメリットを長文で羅列し、ひたすら読者を勧誘するのに終始する。

せっかくブロガーとして活動しているのだから

自分の体験を語ってよ!!

と僕は思うのだが。

ちょうど明日でAmazonプライムの加入期間を終える。これを機に、実体験に基づくレビューを書いていきたく思う。

使い勝手の悪い「Kindleオーナーライブラリー」

去年の8月から12月まで「Kindle Unlimited」という電子書籍の読み放題プログラムに加入していた(月額980円)。なので、プライム特典のひとつであるKindleオーナーライブラリーを使う機会はほぼ無かった。

しかし今年に入ってから利用してみて、使い勝手の悪さに戸惑った。

プライム会員は毎月1冊、Kindleオーナーライブラリーの本を自由に読むことができる。

ところが問題なのは「Kindle端末を持っている人しか利用できない」言い換えれば、PCやスマホのKindleアプリからではオーナーライブラリーの本を読めないのだ。

ただ、僕はKindle Paperwhiteの端末を持っている。だからオーナーライブラリーは問題なく利用できる……のだけれども……。

しかし困ったことに、Kindle端末のストア検索がめちゃくちゃ使いづらい!

読み込みに時間がかかるし、ときどきフリーズして落ちてしまう。画面が小さくて、書籍の一覧を6冊ごとしか表示できない。

さらにオーナーライブラリーの対象本には、個人出版の本も大量に引っかかる。セルフパブリッシングだから質が低いとは口が裂けても言えないが、とにかく、自分の読みたい本を見つけるのが難しい。

結局、Kindleオーナーライブラリーで読む本を探すのに、ぐだぐだと1時間近く迷ってしまう。その時間があれば、最初から自分の読みたい本を購入してしまった方が、トータルでは得なのに……と我ながら後悔する。

ひとつ理解に苦しむのが「Kindle UnlimitedではPC・スマホからでも本を選べて読めるのに、なんでKindleオーナーライブラリーではできないんだ」ということ。

ここは将来的に改善されてほしい部分だ。

使うのに気が引ける「お急ぎ便」

プライム会員は、通常360円かかる「お急ぎ便」を無料で使うことができ、プライム会員であればおそらく商品購入時にデフォルトでチェックが入っていると思う。

しかしながら、お急ぎ便をはじめとする過剰サービスが配送業者を圧迫しているのは周知の事実だ。

上のような話題を見かけるたびに、心が苦しくなる。

お急ぎ便よりも「急がなくていいよ便」をオプションで用意してほしいなぁ……と思う今日この頃である。

ともあれ、プライム特典である「お急ぎ便」および「お届け日時指定便」の無料化が、利用者にとって便利なのはたしかだ。

しかしAmazonは通常配送でも十分すぎるほどに早い。それに、我が家には宅配ボックスがある。僕としては、Amazonの特別配送オプションを使おうと感じたことは、ほとんどない。

ところで先日「JA.AliExpress.com」という中国の通販サイトを利用する機会があり、頼んだ商品は中国からの国際配送で、1ヶ月近くも到着を待たされた。

だけど商品が届くのを待つ1ヶ月間は、不思議とわくわくとした気分だった。

そういえば最近は「待つ楽しみ」を実感する機会が減ったな、と思う。急ぎで必要なものでないのなら、配送はむしろ待たされた方が楽しいこともある。

待つ時間を楽しむ、心の余裕を持ちたい。

「プライムミュージック」は評価したい

良いところも書いておこう。

Amazonプライム特典の「Prime Music」は評価したい。100万曲以上の楽曲が聴き放題ということで、作業用BGMには最適である。

今となっては懐かしいNHKドキュメンタリー番組「そのとき歴史が動いた」のサントラも聴けるし、あと個人的にはアニメ「ふらいんぐうぃっち」のサウンドトラックアルバムも素晴らしかった。

他にもMegpoid GUMIのソングアルバムも良かったし、槇原敬之のアルバムもプライムで聴いて、とても懐かしかった。CDも持っているのだけれど、きょうびCDプレイヤーを使う機会もめっきり減ってしまった。そんなときこそストリーミング音楽配信である。

とはいえ、知っているアニソンの登録数は少ない。(アニソンとボカロ曲しか知らない僕もあれだが)ゆえに、ほとんどは自分の知らない曲を聴いてみるスタイルとなる。

洋楽なんかも知らない曲ばかりで、しかし聴きながら原稿執筆すると大いにはかどる。あ、カーペンターズも聴けます!

あとオカルト方面のジャンルだと「ヘミシンク」のアルバムがプライムに13件もあるのは正直驚きだった。幽体離脱を趣味とする人はお試しあれ。

個人的に、Amazonプライム特典のなかで最も満足度が高いのはPrime Musicであるといっても過言ではない

ここで話題に出すのも憚られるが「作業用BGMを聞いて作業してたよ」と言うとき、決して少なくない、というか相当に多くの人たちが、YouTubeに違法アップロードされた作業用BGMを聴いている。だがそれでは著作権違反しているアカウントに広告収益が入っても、楽曲を制作するクリエイターには一切得がない。

Amazon Prime Musicの楽曲ライセンス契約がどのようになっているかは不明だが(英語で調べても情報が出てこなかった)少なくとも音楽業界やアーティストに一銭も入らないということはないはず。

Prime Musicで素晴らしい曲に出会ったときは、どんどんダウンロード購入するなり、グッズを買うなりして支援したいもので、とにかくPrime Musicがお得かどうかは別として、音楽にはお金を支払いたい。

「プライムビデオ」はアニメもドラマも映画も観たい人におすすめ

僕はアニオタなので、実写の映画もドラマもほとんど見ない。

なので上の記事でも書いたとおり、見放題サービスはプライムビデオではなく「dアニメストア」を利用していた。過去形なのは、観たい作品をすべて観終わり、先月解約したため。

だから「アニメしか見ないよ!」という人は、プライムビデオよりもdアニメストアの方が圧倒的に登録作品数が多いので、そちらの方が満足できると思う。

ただ逆に「dアニメストアにはないのに、プライムビデオにはある」作品もいくつかあって、例えば2017年8月現在

  • 魔法少女まどか☆マギカ
  • クズの本懐

の2つは、プライムビデオの方でしか視聴できない。

7月に感想記事「【感想】クズの本懐、あるいは実存不安の文学 - Webライターとして生きる」で書いたが、プライムビデオで観た『クズの本懐』がじつに良かった。じつに素晴らしかったので、これだけでプライム会費の元は十分に取れたなと感じた。

ドラマと映画は、観ていないのでわからない。

正直に言って、僕みたいにアニメオンリーの人には(作品数自体が少ない)プライムビデオはあまりおすすめできない。

しかし「映画でもドラマでもドキュメンタリーでも何でも楽しめるよ!」って人には、プライムビデオは大いに魅力があるだろうと思う。

「プライム会員限定先行セール」は本当に得かどうか疑ってかかるべし

Amazonでやっている「タイムセール」に、プライム会員であれば一般会員より30分早く参加できる。この他に「プライムデー」というプライム会員だけの大規模セールに参加できる特典なんかもある。

で、タイムセールでは通常価格から80%OFFだとか90%OFFだとか、びっくりするくらい値引きされている製品を見かけることがよくある。

そこで天才的な僕は閃いて、「待てよ……Amazonのタイムセールで商品を手に入れて、それをメルカリで転売したら儲かるのでは?」と考えた。

さっそく、Amazonタイムセールで大幅に値引きされている製品をいくつか、メルカリでも検索してみた。結果、ほとんど値引き額と同じ価格帯で売られていましたね……。(もちろんメルカリでは新品/未使用ステータスで売っている)

つまり、そういうことです。

Amazonタイムセールでの 80%OFF! 90%OFF!みたいな値引き表示に安い!!と惑わされてはダメで、必ず他の通販サイトでの相場も調べておかなくてはいけない。

もちろん、なかには本当にお買い得な商品もあるだろうけれど、なんにせよ安物買いの銭失いと言うように、二重価格に騙されないよう気をつける必要がある。

終わりに

他にも「Amazonパントリー」「Amazonファミリー」「プライムフォト」といった特典があるものの、個人的には使う必要性が感じられず、使っていない。

結局のところ、Amazonプライムへの加入を決める特典となり得るのは(特別配送オプションを頻繁に使う場合を別として)

  • プライムミュージック
  • プライムビデオ

のふたつだと考える。

この双方に魅力を感ずるのであればプライム加入して損はないだろうし、そこまで必要じゃないな……と感じた場合はおそらくプライムに加入するメリットはない。

僕としては、Amazonプライムは「年間プラン」ではなく「月間プラン」で入るのをおすすめしたい。

年間プランだと 3,900円/年で、月換算 325円となる。

対して、月間プランでは 400円/月だ。

年間プランの方が得じゃないかと思われるかもしれないが、プライムミュージックにせよプライムビデオにせよ、聴きたい(観たい)作品はそんなに数があるものでもないし、1ヶ月も聴き放題、見放題を体験すればだいたい満足してしまう。

下手に年間プランに入ってしまうと「もっとたくさん観なきゃもったいない!」と僕なんかは謎のプレッシャーを感じてしまい、かえってもったいない。

なので例えば「1月・4月・7月・10月の隔月だけプライムに加入する」みたいな隔月方式にした方が、聴き放題・見放題コンテンツを気楽に楽しめる。

じつは、僕はdアニメストアやKindle Unlimited(読み放題)にも加入していたが、この隔月方式で楽しんでいた。

1年のうちに4ヶ月間だけプライムの月間プランに加入する場合、年間費用は400円 × 4月で1,600円しかかからない。アニメも年4クールだし、新作アニメが最終話まで出揃った時点で一気見するのもなかなか良いものである。

以上、長々と書いてしまった。せっかくなので最後にアフィリエイトリンクだけ置いておきたい。

(プライム会員加入・無料体験は上記リンクからできます)

そうそう、ひとつ大切なことを言い忘れていた。Amazonプライムは30日間の無料体験ができるのだが、注意しておきたいのはオプトアウト方式なのである。

つまり30日の無料体験に登録して、そのまま何もせず30日を超過してしまうと、勝手に有料会員に加入させられてしまう。

なので有料会員に移行する気のない人は『アカウントサービス > Amazonプライム会員情報』のページから、会員資格が自動的に更新されないよう、設定しておく必要がある。

更新止めるの忘れてて知らない間に有料会員になってしまった!という場合は、Amazonカスタマーサービスに連絡すると返金してもらえる。

僕の父も「クレジットカードの明細で心当たりのない引き落としがある。ハッキングされたかも」と電話で相談してきて、何事かと思ったらAmazonの仕業だった。お試し体験のボタンを何となく押したら、知らないうちにプライム有料会員になってしまっていた……というオチだ。

以上、Amazonプライムを検討する人のお役に立てば嬉しく思う。

(了)

「蝶が怖い」僕がわざわざ昆虫館で蝶を見てきた話

ゴキブリやムカデやナメクジよりも、蝶の方が嫌いだ。嫌い、というよりも怖い。恐怖を感じる。世の中には蝶恐怖症なるものがあるらしく、僕もそのひとりなのかもしれない。

「蝶が怖い」とはっきり自覚したのは、自分が4歳のときだった。当時住んでいた古いアパートの階段の壁に、一匹の大きな蛾が張り付いているのを見たのである。

蛾は、翅の大きさが2メートルはあるように感じられた。モスラかよ!と突っ込みを入れたくなる。でも、子供の目にはそれくらいに巨大な蛾の姿が映った。

蛾は、風に翅を揺らめかせる。枯れた葉っぱのような色をしていた。僕と手を繋いで、隣にいた母が、蛾を見上げる。そして一言、「死んでる」と呟いた。

耐えがたい恐怖のようなものが、心のなかに宿った。

子どもの頃は、蝶に似ている葉っぱを見るのも怖かった。昆虫図鑑の蝶の写真もダメだった。

そのくせ、イモムシは大好きで、小学校では嬉々としてイモムシの飼育をしていた。やがて、イモムシが蝶に変身するという衝撃の事実を知り、絶望を味わうこととなる。

高校生になる頃には、さすがに葉っぱや図鑑を見ても動じなくなった。しかし蝶は怖いまま。ちょうど横断歩道を渡っているときに、前方から蝶が飛んできた。頭が真っ白になり身体がフリーズしてしまい、危うく車に轢かれかけたこともあった。

遠足で山に行ったときには、同級生がクマバチから逃げ回るなか、僕は反対方向にモンシロチョウから逃げ回っていた。

興味本位で『チョウは零下196度でも生きられる』(太田次郎・著/PHP文庫)を読んだらますます怖くなったし、蝶を冷凍庫に入れても死なないエピソードは背筋をゾッとさせる。

標本作りのときに、蝶の胸を指でつまんで圧殺する話も耐えられない。

国語の教科書には、ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』が載っていて、主人公が蝶の標本を指で潰してバラバラにするシーンが出てくる。あれはトラウマものだ。

前置きが長くなった。ともあれ、これだけ言葉を尽くしてもまだ全然足りないくらいに、僕は蝶がこわい。

蝶を見にわざわざ昆虫館に行った

仕事の関係で、大阪府箕面(みのお)市に行く機会があった。まったく偶然だが、数日前に箕面公園の昆虫館がいいよ!というブログ記事(昆虫好きの楽園! 大阪・箕面公園の「昆虫館」に行ってきた! - 接客業はつらいよ! あけすけビッチかんどー日記!)を目にしていた。

箕面公園昆虫館には「放蝶園」という施設があり、ビニールハウスのなかに200匹以上の蝶が放し飼いにされている。

僕も大人になり、昔よりかは蝶が大丈夫になってきた。だから怖い物見たさというか、蝶恐怖症克服のために、ええいままよ!と箕面公園昆虫館を訪れることにした。

箕面公園昆虫館は、30分もあればすべて見て回れるくらいの施設だ。

入館料は大人270円、中学生以下は無料と手頃である。訪れたのは7月下旬の夏休みシーズンで、子どもがたくさん来ていた。

カブトムシ

中に入るとカブトムシの生体展示が目に入った。

カブトムシはかわいい。虫そのものは好きで、小学生のときはカブトムシを育てていた。写真は日本のカブトムシだが、コーカサスオオカブトやヘラクレスオオカブトも展示されていた。夏の特別展示とのこと。

残念ながら写真はあまり撮れなかった。というのは、デジタル一眼レフのニコンD5000を持ってきたのだが、あろうことか望遠レンズしか用意してこなかったのだ。展示を撮影しようにも距離が近すぎて焦点が合わず、ピンぼけしてしまう。かといって離れて撮ると他の人の邪魔になるし、これはミスったなあと思った。

フルーツゴキブリ

他に、落ち葉に擬態したカマキリや、巨大なゴキブリの展示もあった。

写真はマダガスカルのフルーツゴキブリ。大人気のペットなのだとか。なるほどたしかに愛嬌がある。

さて、肝心の放蝶園に足を踏み入れる。自動ドアをくぐると、そこはもうホラーハウスだ。天井を見ると、大量の蝶がわしゃわしゃあーと飛んでいて、あ、これはもう死ぬわと思った。

至る所に蝶が飛んでおり、逃げ場もない。そこはもうオバケ屋敷よりも遙かに恐ろしい場所で、僕はカチコチに固まってしまった。

放蝶園の奥の方に、蝶のなる木(?)みたいのがあった。木の実のような感じで、蝶がぶら下がっている。そこに幼児とお父さんの家族連れが来ていて、子どもが蝶に触りたがっていた。

お父さんは「よしよし」と言って子どもを抱きかかえ、木で羽休めする蝶に、手を触れさせようとする。子どもはいっぱいに腕を伸ばし、蝶を掴もうとした。蝶は人に慣れきっているのか、まったく逃げるそぶりがない。

放蝶園は、蝶に触るのは禁止である。これは注意しなければいけないなと思って、声をかけようとする。だが、いかんせん周りに蝶がうじゃうじゃといて、身動きが取れない。というよりも、目を開けているだけでも精一杯なのだ。

しかしちょうど良いタイミングで館内放送が入った。「放蝶園の蝶を追いかけたり捕まえたりするのはやめてください」といった趣旨のアナウンスが流れ、その親子は蝶をあきらめた。

僕はそれから片目を固く閉じて、カメラのファインダーに目をくっつけ、望遠レンズで離れた場所から蝶を何枚か撮った。放蝶園には花の密のお皿のようなものがいくつか設置されており、そこで蝶が蜜を吸う様子を観察できる。

ともあれ冷や汗をだらだらと流しながら、何だかんだ言って放蝶園で充実のひととき(?)を過ごし、僕は昆虫館を後にした。

昆虫の魅力が伝わってくる素晴らしい施設だった。ただし、蝶恐怖症の人は、放蝶園はやめた方が良いと思う。ショック療法で克服できるかなと期待したが、無理だったので……。

(※放蝶園の写真は要閲覧注意のため、記事の一番後ろにまとめて掲載しています。記事最下部で警告文を入れますので、苦手な方はそこでブラウザバックしてください)

箕面観光ともみじの天ぷら

昆虫館から30分ほど歩くと、日本の滝百選のひとつである「箕面滝(みのおたき)」を見ることができる。滝のそばは非常に涼しく、設置された温度計を見ると真夏にもかかわらず気温は25℃であった。

箕面滝

川ではたくさんの子どもが水遊びをしていた。売店では、鮎の塩焼きや、フライドポテトやからあげ、きゅうり、それから箕面名物である「もみじの天ぷら」が売られていた。

もみじの天ぷらはイメージに反して甘いお菓子で、その味はかりんとうにも似ている。独特なカラッとした食感があり、他ではまず食べることのできない珍しい菓子なので、箕面にお越しの際はお土産にひとつどうぞ。

もみじの天ぷら

最後に、昆虫館のすぐ近くにある箕面山瀧安寺(りゅうあんじ)(弁財天)にお参りをして、帰った。

瀧安寺

蝶が怖いのはおかしいことではない

以上、蝶が怖い話と、箕面公園昆虫館での体験、それから簡単な箕面観光レポを紹介した。箕面は僕も初めて訪れたのだけれど、なかなか日帰りでも楽しめた場所なので、お近くの方はぜひ行ってみてほしい。

さておき、ゴキブリやナメクジを怖がる人がいるように、蝶が怖いのは決しておかしいことではない。

友人も「俺はテントウムシが怖くて怖くて仕方がないんだ」と言っていた。人によって怖いものはさまざまであり、無理に克服する必要はないんだなと気づかされる。

恐怖心は恐怖心として受け入れつつ、小さな生命の尊さに心からの敬意を払いつつ、平穏に生きていきたい。

(了)

 

蛇足:箕面公園昆虫館「放蝶園」の写真

下記に、放蝶園で撮った写真を掲載します。

蝶の写真が苦手な方はここでブラウザバックしてください。

 

わざわざ写真掲載しなくても良いかなと思ったものの、折角恐怖心を乗り越えて撮影したものなので、載せておきたい。

 

  ◇

 

  ◆

 

これ、蝶が花のベッドで寝ているのかな、と思ったらどうやら蜜を吸っているようだ。

 

純粋に怖い。右側の蝶、よく見ると羽の部分に「712」と数字が書かれている。個体識別番号だろうか。

これはオオゴマダラという名前の蝶だそうで、ウィキペディア先生によると"ゆっくりと羽ばたきフワフワと滑空するような飛び方をする"(引用:オオゴマダラ - Wikipedia)とのこと。

そう、まさに蛾よりも蝶のほうに恐怖を抱く理由は、この飛び方にある。

蝶がなる木。

人が近づいても逃げないので、撮影はしやすいと思う。僕は勿論、望遠レンズで遠巻きに撮っている。なお、三脚や自撮り棒の使用およびフラッシュ撮影は禁止されている。

シャッタースピードは1/1250。飛んでいる蝶は、このくらいのシャッタースピードでないとブレてしまう。

 

(終わり)

【感想】クズの本懐、あるいは実存不安の文学

クズの本懐、見た。Amazonプライムビデオで6話まで視聴した。

僕は百合を愛する者なので、その美学に相反する本作を好きになることはないだろう。原作は漫画らしいが、読み終えたら壁に投げつけてしまうかもしれない。

しかし、しかしながら、本作は高く評価されるべきである。恐ろしい、とてつもない作品である。

『クズの本懐』のアニメを3話まで視聴した時点で、おおよそ本作に感じる怖さの何たるかに思い至ってしまった。それは強烈な実存不安である。

自分の存在理由。何のために生きているのか。生きる指針がある日突然に剥奪され、人は実存不安の奈落に突き落とされる。

本作では《恋愛》が生の指針として描かれ、しかしそれは物語序盤で喪失される。生きる意味を失った作中人物たちはその不安の穴を埋めるため《セックス》を代償行為として選択する。

ただ一回限りの人生は、あまりにも儚く、軽い。

本作は、ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』を彷彿とさせる。ひとつの文学だ。作中全体を通して性行為の描写で埋め尽くされ、読者は官能を刺激されるかもしれないが、一方でどうしようもない絶望感に包まれる。悲しくなる。つらくなる。死にたくなる。生きたくなる。

それが、存在の耐えられない軽さであり、クズの本懐でもある。

僕たちが失恋あるいは悲恋のラブストーリーに没頭し、心を動かされてしまうのは、生きる理由を失った人間が、どのような未来を掴み取るかに興味を抱くからだ。おそらく答えは無い。答えが無いなりに、人はそれを見つけてゆく。

現代における漫画・アニメ作品を決して侮ってはいけない。こんなすごいアニメがあったことに僕は驚いてしまって、椅子からひっくり返ってしまった。

私的に評価しているアニメのひとつに『グラスリップ』がある。グラスリップでは《唐突な当たり前の孤独》という謎かけが提示される。

人は生まれたときから世界劇場に投げ込まれ、周囲との関係性に応じた自分の役割を身につけ、その演技に没頭している。アイデンティティとは、自分が演じたいと願う役割の仮面である。

ところが恋をしたとき、あるいは失恋したとき、その強烈な稲妻に打たれたかのような体験が、役者の仮面を打ち砕く。唐突な当たり前の孤独が訪れ、寂しさが実存不安を掻き立てる。

クズの本懐は、単なる恋愛云々の枠組みを超えて、本当に何と言うべきか僕を深く深く絶望させた。その絶望感に、心の底から感動している。

いつかここまでの次元の物語を、書いてみたいとは思いつつ、今の自分では到底届かない領域だ。すごいものを見てしまった。


Amazon:クズの本懐 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

(了)

広告で食っている僕が「アドブロック入れて」としか言えなかった

 深夜の二時を回っていて、そろそろ布団に入り込もうかとしていた矢先、唐突にスマートフォンの着信音が鳴った。

 電話は友人からだった。彼とは長い付き合いだ。

 友人は少しパニックに陥っていて「何とかしてくれ。お前なら分かるだろう」と訴えかけてくる。話を聞いてみると、広告がどこまでも追いかけてくるので助けて欲しい、とのこと。

 その一言でおおよその事態が察せられた。僕は彼の病気について、よく知っていたからだ。

リターゲティング広告と強迫観念

 極めて個人的な情報となるのでフェイクを入れる。(冒頭の時点ですでにフィクションを混ぜていることをお許し頂きたい)

 強迫性障害、パニック障害、摂食障害といった病をイメージしてほしい。

 例えば「自分は痩せなければならない」という強迫観念を持つ人間がインターネットを使った場合、バナー広告はそれを後押しする形で働く。

 近年よく使われるのがリターゲティング広告だ。あるサイトを訪れたユーザーに対してクッキーを付与し、バナー広告を追いかけさせる。

「ダイエットサプリの販売サイトを訪問したら、他のサイトのバナー広告もダイエットサプリだらけになった」というのがリターゲティング広告の効果である。

 僕も就職活動中に、就活サイトのバナー広告がどこまでも付きまとってきて大いに弱った。漫画を読んでいても、動画を見ていても、絶えず「就活しろー!」とバナー広告が追いかけてくるのだ。これではノイローゼになってしまう。

 ましてやそれが、美容・健康あるいは金融方面となると、はるかに深刻度が増す。痩身の強迫観念を持つ人に対して、ダイエットサプリや健康食品のバナー広告がしつこく表示される。

 友人が助けを求めてきたのもまさにこれで、ダイエットや健康食品のバナー広告が常に表示されるような状態になってしまい、本当に参ってしまったらしい。

 何もこれは健康分野に限った問題ではない。

 例えばギャンブル依存を持つ人に対して、広告が何度もFX口座の開設を勧めてくるケースは考え得る。

 FXの広告は『副業』というキーワードで表示されるので、より悪質である。僕はFXも株式投資も経験者だが、あれは『副業』にはなり得ない。投機もしくは投資だ。

『誰でもできる簡単な副業♪』みたいなあおり文句でFXがおすすめされるのは、どこからどう考えてもおかしい。倫理にもとる広告が氾濫しており、これがリターゲティングされるとなると、かなり厄介だ。

 ともあれWeb広告の問題というのは、スマホでスワイプすると上から降ってきて誤クリックを誘発するバナーみたいな、物理的にうっとうしい!ものにとどまらない。

 ユーザーの行動履歴を解析して、ストーカーのようにしつこく付きまとってくるリターゲティング広告についても、見過ごせない深刻さがある。

Googleはリターゲティング広告の危険性を理解している

 AdWords(AdSense)をはじめ、Web広告を配信する立場にあるGoogleは、リターゲティング広告の危険性をもちろん理解している。

 だから一部の広告ジャンルでは、リターゲティングすることを禁じている。

 詳しくは(Personalized advertising - Advertising Policies Help)を見て頂ければ分かるが、具体的に

  • アルコール
  • ギャンブル
  • 処方薬、特定の病気の治療
  • 政治的思想

 等のセンシティブなカテゴリの広告はリターゲティングできない。

 また、ユーザーが望むのであれば「パーソナライズド広告を表示しないようにする(オプトアウトする) - Google」の設定によってリマーケティング広告・行動ターゲティング広告を無効化できる。

 さらに、特定の広告主からの広告配信をユーザー側からブロックすることもできる。(不要な広告を削除する - Google

 しかし上記のような対策法を電話越しに伝えようとしても「何言うてんのか意味わからんわっ」といった感じで話がまったく通じない。たしかに一般の人に対してリターゲティングだのパーソナライズド広告だのオプトアウトだの言っても意味不明だろうし、その設定方法も分かりづらく、ハードルが高い。

 それに上記の方法を取ったとしても「ダイエット」という巨大市場の広告をすべてブロックするのは不可能に近い。広告を配信するのはGoogleだけではない。

 

  僕は観念して「アドブロックの導入方法」をレクチャーすることにした。

 アドブロックが多くの支持を集める理由が、ようやく理解できた。

パーソナライズド広告はときに有害である

 広告はその性質上、個人の欲望や不安に訴えかける。ダイエット関連商品に限らず、化粧品、脱毛エステ、FX、保険、カードローン、引っ越し、転職、資格、婚活…etc さまざまな広告ジャンルがある。

 それらの情報がプラスに働くこともあれば、もちろんマイナスに働くこともある。

 会社に不安を持つ人が、毎日のように転職広告を見続けていたら「俺は本当に今のままでいいのだろうか……」と不安をさらに大きくさせてしまう。広告によって強迫観念を悪化させるだろうことは、想像に難くない。

 そしてネットを使う大多数の人たちは、パーソナライズド広告をオプトアウトする方法も知らないし、アドブロックの存在も知らない。

 このままネット広告のモラルハザードが続くのであれば、Web広告で稼いでいる自分も、いつか大きなしっぺ返しを受けることになるだろうと覚悟する。

 当ブログも、Google AdSenseを入れて運営している。しかし他のマネタイズ方法があるのであれば、そちらの方が本当は望ましいのだ。

「アドブロックがコンテンツを滅ぼす!」「アドブロックを入れている人はフリーライダーである!」と批判する人がいる。僕もポジショントークをするならば賛成したいところだが、今やそれも言えなくなってしまった。

 広告から自分の身を守るために、アドブロックを入れるのはやむを得ないことである。広告で食っている僕が「アドブロック入れて」としか言えなかった。

 こんな世界は、変えていかなければならない。

(了)

【書評】小説同人誌をつくろう!(弥生肇)は孤独な創作者こそが読みたい本

小説を書くのは寂しい。孤独な戦いである。

ひとりで黙々と創作を続けることに苦しくなってきた物書きに、ぜひとも勧めたいのが『小説同人誌をつくろう!(弥生 肇・著)』である。(※リンク先はAmazon)

僕はこれまで、孤高の創作者を気取っていたけれど、本書と出会うのがあと7年早ければと思わずにはいられない。もう、あれから7年の歳月が経つと思うと、本当に切ない。

自分語りが多く入るけれども、ひとつの書評として読んで頂きたい。

ツイッターの『創作クラスタ』の話

7年前、すなわち僕がツイッターをはじめたのは2010年2月のことだった。当時、僕は高校生で春からは大学に入ったのだが、学校には文芸サークルが存在しなかった。

ひとりぼっちで小説を書いていて、どうしても創作仲間がほしくなって、ツイッターで小説を書いている人を中心にフォローしていった。

やがてツイッターには『創作クラスタ』と呼ばれる、作家志望たちで交流をするとても緩い繋がり(グループ)のようなものが生まれた。その頃から、本書の筆者である弥生肇さんとは相互フォローの関係だった。

なので弥生さんが、オンライン創作マガジンやラノベ合同誌、同人誌即売会や電子書籍出版などでご活動されていたのは昔からよく知っていて、すごいなー、いいなー、と常々思っていた。

創作クラスタでのオフ会なんかも楽しそうで、正直あの頃の盛り上がりは僕にとっては羨ましくて、眩しかった。

そう。僕はツイッターの創作クラスタにいたにもかかわらず、自分から交流ということを一切やらなかった。殻に閉じこもっていた。

時折、ぼっちネタのツイートを投稿しては、フォロワーさんからファボ(※現在のいいね!のこと)を貰って承認欲求を満たす、なんとも寂しい人間だった。

僕がどうして、同人企画・同人イベントに参加できなかったかというと、一歩足を踏み出すだけの勇気がなかったからだ。

同人誌即売会でサークル出店する?

でもどうやって?

誘える仲間もいないし、同人誌をつくる方法もさっぱりわからない。

そもそも小説の同人誌を売る場があることさえ、知らなかった。

もしも7年前に書店で『小説同人誌をつくろう!』と出会えていたならば、きっと僕の大学生活は変わっていただろうにと悔やまれてならない。

繰り返すが、本書は孤独な創作者にこそ読んでもらいたい本である。

同人イベントで他の創作者さんと交流してみたいが、友だちもいないし、コミュニケーションも能力ないし、ひとりで出店参加できるかどうか不安だ。何だか怖い。――という人を本書は優しく後押ししてくれる。

ツイッターでの人間関係は儚い

かつてツイッターで繋がりのあった創作クラスタのフォロワーさんたちは、そのほとんどが今では姿を見せなくなってしまった。かくいう自分も、ペンネームを変えて別アカウントに失踪を遂げた人間のひとりであるが、ツイッターでの繋がりはかくも儚く消えゆくものだ。

オフ会とか同人イベントで、一度で良いから会っておけば良かったな……と今になって後悔している。

同人イベントで人と交流をするということ

僕は昨年に『文学フリマ大阪』に参加し、今年の1月に『文学フリマ京都』にサークル出店した。そして夏には『尼崎文学だらけ』というイベントで小説同人誌を出す予定だ。

参加レポートについては下の記事をご参照いただきたい。

つまり、7年の歳月を経てようやく自分の中での踏ん切りがついて、はじめて同人誌即売会で小説を出した。ひとりで。

結論を述べると、小説同人誌をつくるのはとても楽しかった。

やはり僕はコミュニケーションが不得手なので、そんなに多くの人とは話せなかったけれど、それでも人と人との繋がりを実感することができた。それはツイッターでの交流とはまた違った、新鮮な感覚だった。

どうして今までためらっていたのだろう。

どうしてもっと早くに体験しておかなかったのだろう。

と心の底から思うわけだが、それはやはり、これまで小説同人誌をつくるにあたっての情報が不足していた、入門書が存在しなかったことが大きい。

本書はおそらく商業出版されているなかでは唯一の(?)小説同人誌制作の入門書ということで、意義がある。かつて大学生だった頃の自分が、まさに読みたかった本だ。

本書内容の補足

本書のなかでは書かれていないことで、こういう情報も知っておくと役立つよー!という補足を少しだけしておきたい。

小説同人誌のフォントについて

本書p.23において「フォントを意識しよう」といったことが書かれているが、具体的なフォントについては記載されていない。

僕としては本文フォントは「游明朝」が綺麗なのでおすすめしたい。

また、『一太郎2017プレミアム』のおまけについてくる「筑紫明朝」も小説向け。

フォントサイズは「9.0P」が一般的だろうか。

このあたりはもう少し踏み込んで解説があっても良いなと感じるものの、ケースバイケースなためか、本書のなかでは具体例が提示されていない。

同人小説本のサイズについて

本書p.38では、同人小説本の希望サイズについてのアンケート結果が掲載されており、これ自体はデーターとして大変興味深い。結論として「文庫本サイズ」を希望する人が多いとのこと。

しかしながら、実際に文学フリマに行ってみると分かるのだが、主流は圧倒的に「B6サイズ」なのである。

これは何故かというと、文庫本サイズにすると1ページあたりの文字量が少なくなってしまう。その分、必要なページ数が増える。つまり製本コストが高くなってしまう。

なので長編小説を同人誌にする場合、どうしても(製本コストを下げたいので)B6サイズやA5サイズにするケースが多い。同人誌に二段組みが多いのもそのためであろう。

同人誌の印刷所について

本書p.42において、同人誌印刷所が4社ほど紹介されている。

このなかに出てこない印刷所で個人的に推したいのが『ちょこっと(ちょ古っ都)製本工房』さん。ここは圧倒的に安い。

文学フリマ大阪に行った際に同人誌を24冊購入したのだが、奥付を見ると「ちょ古っ都製本工房」で製本しているサークルが多かった。チェックしておいて損はないだろう。

ブース設営に必要なアイテムについて

本書p.76~では、同人誌即売会で出展参加するにあたって、準備したら良いアイテムについて、いろいろと紹介されている。

本書の内容にひとつだけ付け加えたいことがあるとするならば、「ブース設営に必要な道具のほとんどは100円ショップで手に入るよ!」ということ。

小銭入れや、本を立てかける台や、その他もろもろの多くは100円ショップで購入できる。まずはダイソーにでも足を運ぼう。

あとテーブルクロスを購入する際は、テーブルクロスで検索をかけても良いのを見つけるのが意外と難しくて、そんなときは「大判ふろしき」を探すと良いというのも小ネタ。

補足事項としてはこのくらいだろうか。

同人誌制作から電子書籍出版に至るまで、幅広く情報が網羅されており、入門書として十分な内容になっていると思う。(入門書のあとは、実践あるのみ!)

筆者のブログ記事(『小説同人誌をつくろう!』/初めての自著刊行です - ポジティブ物書きの雑記帳 )で書籍概要や目次詳細も掲載されている。買おうかどうか迷っている人はチェックしてみると良いかもしれない。

(了)

僕と小説と、笑うカラス。

 かれこれ七年くらい小説を書いていて「五条さんは文章がうまいですね」と大変ありがたい感想を頂くのだが、分かっている。この"分かっている"は、自惚れでも自負でもなくて、それはもう深い反省から発せられる言葉である。

 すなわち、文章はおそらく見るには耐えるものなのだろう。しかし肝心のストーリーが、キャラクターが、てんでうまく書けない。というのは、本人が一番自覚している。

 五千文字、長くて一万文字未満の短篇ならば、アイデアと筆力で押し切れる。だが長編小説となると、ボロが出まくる。プロット段階では芥川賞も夢じゃないぜってくらいの最高傑作で、意気揚々と書き始めるのは良いものの、だいたいいつも原稿用紙二十枚書くあたりで息切れして、ひどくつまらなく思えてしまう。

 行き着くところ、僕の苦手とするのは「人間関係を魅力的に描くこと」であり、創作において抱える自分の課題が、人生そのものだと知ったのだった。

 

「どうしたらうまく書けるのだろうね」

 ペットのロシアリクガメに愚痴をこぼすも、彼女は新調した赤玉土を掘り進めるのに一生懸命で、見向きもしてくれない。このリクガメはほとんど一日中、エサを食べるか、昼寝をするか、穴を掘るかのどれかなのだ。

「仕事を邪魔しないでちょうだい」とカメに怒られた気がした。

 

 仕方がないので、僕はエア友だちの江安くんを連れて、散歩に出かけることにする。

 京都河原町から四条大橋を渡って、鴨川沿いに北へと散策する。川ではハシブトガラスが水浴びしており、気持ちよさそうに羽をバチャバチャとさせていた。

 その日は風が強く、西から東に風が吹いていたのだが、数羽のカラスが風に逆らうようにして、川の上を低空飛行するのだった。何か変だなと思って観察を続けてみると、カラスたちはどうやら向かい風に乗って飛ぶことで《空中停止》の状態を生み出す遊びに夢中になっていた。

 風に押し戻されて川岸に着地するたびに、カラスはさも可笑しそうにケケケと笑った。もちろんカラスはケケケと笑ったりはしないのだけれど、僕の耳にはたしかにそのように聞こえた。

「愉快な鳥だね。ボクも生まれ変わったら鴨川のカラスになりたいよ」

 江安くんがしみじみと言う。

 ちょうどお散歩中のラブラドールレトリバーが川に向かって吠えかけると、カラスは目元に微笑みをたたえたまま、ワッと空に飛び去った。

 ともかく僕も、ケケケ、と笑うべきなのだろう。創作を長続きさせるコツは、何よりも自分自身を満足させることなのだから。

(了)

 

五条ダンの投稿小説

 フォロリムお気軽にどうぞ~((((o*゚▽゚*)o

告知

 17年8月27日(日)開催の「尼崎文学だらけ」(※小説の同人誌即売会/兵庫県)にサークル出店します! 原稿の進捗ダメです!!:;(∩´﹏`∩);:

 乞うご期待!!!

自治会(町内会)の草刈り問題で、現役自治会長が伝えたいこと

私は、そこそこ規模の大きい自治会の会長をしている者です。ライターの五条ダンと申します。

ちょうど5月に自治会として、地域の「草刈り清掃」をおこないました。そのときに得られた知見、そして自治会長として伝えたいことを一問一答形式で書いていきます。

Q1.なんで自治会が地域の草刈りをやっているの?

A.ボランティアです!

まず最初にはっきりとさせておきたいのが、公道・公園の草刈りは本来的には「行政」のやるべきことであり、自治会の仕事ではありません。

(※市の道路課や公園課のやるべきことです。)

当然ながら「草刈りは自治会がやらなきゃダメ」という義務が発生することはないです。

場合によっては、草刈りについて市から自治会に対して助成金が出ているケースもあるでしょう。それでもそれはあくまで「市からの依頼を受けて、自治会が善意でボランティアとしてやっている」ことに変わりはありません。

草刈りに限らず、自治会活動を義務感で縛り付けておこなうと、住民間の軋轢を生んでしまう恐れがあります。草刈りは義務でも何でもなく、善意で行政に協力しているのだという認識が大切です。

Q2.地域住民の高齢化で草刈りの継続が難しくなってきた。どうすればいいの?

A.市役所(行政)に頼もう!

私のところの自治会では「表の公道」「裏の公道」「公園その1」「公園その2」と、計4つの草刈り清掃拠点がありました。

しかしながら、やはり4つすべての場所で草刈り活動を続けるというのは、負担があまりにも大きく、長くは続きませんでした。

で、過去に市役所の方に電話をかけて、公園の草刈りだけでも市の方でやってくれと頼んだのですね。

ところが「公園は地域住民の子どもたちが使っていて、その恩恵を受けているのだから、地域の方々で協力してやってほしい」といった回答が返ってきて(その頃私は自治会の役員メンバーではなかったので詳しい経緯は分からないのですが)紆余曲折あったそうです。

たしかに子どもが喜んで公園を使ってくれているのなら公園清掃もやりがいはあるのですが、悲しいことに子どもが人っ子一人いないのですよ!!

もうまったく閑散としていて、誰かが遊んでいるところを見たことがない。10年ほど前は、子どもがたくさんいて、新しい遊具もどんどん増やしていくくらいには賑わっていました。ところが今では肝心の子どもが公園に来なくなってしまった。

少子化なのか時代の流れなのか分かりませんけれども、公園はまるで草刈りをするための雑草栽培畑のようになってしまって、本末転倒の状態でした。

脱線しすぎたので話を元に戻しますと、最終的に公園2箇所は市が業者に依頼して、やってくれることになりました。

今まで、鎌を使って手作業でやっていた作業。業者さんの電動草刈り機ならば、あっという間に終わります。

結論。

公道・公園の草刈りは、自治会が「無理のない範囲」でやれば良いのであり、それ以上のところは行政に任せるのが一番です。

Q3.自治会に加入している人は、草刈り強制参加なの?

A.自治会は任意加入団体であり、強制はダメです!

自治会の草刈り清掃の告知書がありまして、そこには「皆さまご参加くださいますようお願い申し上げます。」と堅苦しい文面で書かれている。

でもこのような強制感のある文言は宜しくないだろうということで、私が会長になってからは「ご参加できる方は、ぜひご参加ください。」の表現に改めました。

例年引き継がれる掲示ポスターも、「かわいいフリー素材集 いらすとや」の無料イラストを入れて、親しみのある形のものに一新しました。

その結果、(まったく意図していなかったことですが)本年度の草刈り参加人数は、例年よりも10名増えました。

回答にも書いたように、自治会は任意加入団体であり、地域住民が自由に入会・脱会できるボランティア組織です。(法律的にも)何かを強制するということがあってはなりません。

あと、自治会によっては草刈りに参加しなかった人に対して、出不足金(制裁金)を請求するところもあるようです。

しかし、まるで罰金のようで心が咎めますし、徴収に伺う役員さん(班長さん)も嫌だろうなぁ……と思います。出不足金の徴収にかかる見えない人件費を考慮するならば、やめた方が良いケースの方が多い。

出不足金が原因で住民同士の軋轢を生んでしまっては、自治会運営の趣旨に反します。

うちの自治会では出不足金の徴収はやりません。

その代わり、参加者さんには、お茶・ジュース・洗剤・ティッシュ箱などの粗品をお渡しするようにしています。とにかく平和的にやりましょう。

Q4.自治会で草刈りをやる意義はあるの?

A.住民間の良いコミュニケーションの場として機能しています。

自分が自治会長をやってみて分かったのは、自治会の清掃・草刈りの行事に楽しんで参加してくれている人がとても多いなということです。

ご高齢の方に「草刈り大変ですよね。疲れたらお休みされても大丈夫ですよー」と声をかけてみると、「いやいやとんでもない。私みたいな独り身のもんは、こうやって体を動かして、誰かとおしゃべりできる場があることに、本当に感謝しているんですよ」とお答えいただいた。

草を刈ることそのものよりも、地域住民が楽しくコミュニケーションを取れる機会を整えることが、草刈り・清掃キャンペーンには重要だと実感しました。

Q5.草刈りでの怪我対策はどうするの?

A.保険に加入しましょう!

地域によって名称は異なりますが「自治会活動保険」「市民保険」「ボランティア保険」みたいな保険制度があります。

私の地域では、市に事前に届け出をすることで、その日の草刈りで万が一の怪我をしたときに、傷害保険が適用されるシステムが整っています。

雑草を引っこ抜くくらいの規模であれば良いのですが、鎌や電動草刈り機を使って規模の大きい草刈りを実施するときは、やはり保険に入っておいた方が安心です。

Q6.自治会の役員が草刈り実施にあたって注意することは?

A.草刈り用具の徹底管理です!

自治会の倉庫を開けてみてびっくりしたんですが、鍬、鋤や長刃の鎌ですとか刈り込み鋏ですとか、凶器となり得るものが60本くらい入っているのですよ。これだけ武器があれば百姓一揆もできてしまうな、と。

万が一、これらの用具が盗まれて傷害事件でも起きたら大変です。子どもが触るのも危険です。

用具の個数をきっちり帳簿につけて、草刈りの前後で数の不足がないかを確認しておく必要があります。

ちなみに草刈り時に必要となる軍手やゴミ袋は、私の地域ですと、市から無償で貰うことができます。行政の方でもさまざまな支援をやっていますから、利用できる制度はどんどん利用しましょう。

自治会長は不安を抱えています

私はクジ引きで自治会長に選ばれてしまった人間で、正直、当初は自治会運営のイロハも分かりませんでした。

自治会の運営方法は本当にこれで良いのか、今でも悩んでいますし、悩みながらも試行錯誤し、改善できるところは改善していきたいと考えています。

運営していくなかで、やはり「自治会が強制して加入者に○○させる」「役員さんに○○の負担を押しつける」といったことは、あってはならないなと強く感じます。

PTA問題にも同じことが言えるのですが、我々は善意で活動している集まりであり、仕事としてやっているわけではありません。

ですから、草刈りでも負担があまりにも大きいところは行政にお任せし、自分たちのできる範囲で「楽しく」活動していきましょう。

それが、当記事で最も伝えたい主張です。

この記事には、おそらく検索経由で来てくださった読者さんが多いと思います。

「自治会 草刈り」のキーワードで検索すると、やはり不満を抱えていらっしゃる方、悩んでいらっしゃる方はとても多いです。

もしも、当記事を自治会長・町内会長さん、あるいは役員さんが読んでくださっているのであれば、地域こそ異なりますが、私とともに自治会をより良く運営するために(草刈り行事等のあり方を含め)改善してければいいなと感じます。

当ブログの自治会運営コラム

当ブログでは過去に次のような自治会コラムを書いています。こちらも合わせてご参考にしていただければ幸いです。

以上、読んでくださってありがとうございました。

(了)

低単価でライティングを引き受けるのはむしろリスクが高い

安売りがWebライターにとって有効なビジネス戦略とならないのは、現状としてWebライティングの報酬相場が崩壊しており、すでに安売り状態にあるからだ。

先日、『もやし業界「窮状」訴えに驚きの声 「今までが安すぎた」「値上げしていい」 : J-CASTニュース』といったニュースが話題になった。

もやしを安売りし過ぎるせいで、もやしの生産者が次々と廃業に追い込まれているのだとか。

ちなみにもやし生産者協会の統計によると、もやしの平均販売価格は100gあたり15円~16円で推移している。これって、クラウドソーシングにある「100文字15円」のライティング案件とそっくりじゃないか!と思わず悲しみの息を吐いた。

「今までが安すぎた」「値上げしていい」

は、もやし業界に限らず、Webライターこそが叫ぶべき悲鳴だ。

もやし安売りの一因として、もやしの原料となる種子(緑豆)の価格高騰が無視されていた側面がある。Webライティングにおいても同様で「記事制作にコストがかかること」への理解がなかなかされていない。

取材なき《リライト》ライティングの限界

一週間ほど前にランサーズで依頼のメッセージが届いた。

「1000文字200円で書いてもらえませんか?」という文言に、うっかり発注額のゼロを1個付け忘れたのかな(*´ω`*)と思ってしまった。

残念ながら、このようなライティング案件は決して珍しくない(どころか溢れかえっている)。具体的にどのようなお仕事なのかは次のとおり。

  1. 「○○」についての記事を2000文字以上で書いてください。
  2. 「○○」の情報は、インターネットで検索して調べてください。検索上位10件くらいの複数のサイトの情報を参考に記事を書いてください。
  3. 他サイトから文章をそのまま持ってくるのは駄目です。著作権を侵害しないようにオリジナリティのある表現にリライトしてください。
  4. なお、書いた記事については弊社にすべての著作権を譲渡し、著作者人格権は行使しないでください。

そのとおり。

文字単価1円を切るライティング案件は、基本的に「取材」を前提としていない。低単価案件ではそもそも取材するための時間もコストもかけられない。

最低賃金を上回る時給を確保するには、それこそ1時間以内に1記事は仕上げる必要がある。実際に僕の知るアフィリエイト法人は内勤ライターに対し、1日(8時間)に最低10本の記事を完成させるよう目標を掲げていた。

キュレーションの理想と現実

インターネットには、情報が氾濫している。信憑性の疑わしい情報、エセ科学、プロパガンダ、ステルスマーケティング、風説の流布、悪質なデマ……etc

ネットに溢れる玉石混交の情報を収集・選別・整理し、読者に役立つ形でまとめるのが「キュレーション」の理想である。

良質なキュレーションメディアを制作するには手間とコストがかかるし、キュレーター自身にも専門知識が求められる。(医療系キュレーションサイトの例を見ればお分かりのとおり)

ゆえに、本当に良質なキュレーション記事を作るのであれば、文字単価1円未満で発注をかけるのはあり得ない。

逆説的に、(言い方はすごく悪いけれども)文字単価0.2円や0.3円で発注される案件というのは「著作権侵害で怒られない程度に、他サイトから情報をうまくパクってきてねー」くらいの意識で作られている。

アフィリエイト事業者に限らず、オウンドメディア・Webメディアの運営者でも、記事制作に相応のコストが発生することはなかなか理解されない。ネットからいくらでも情報収集できるんだから、取材なんてしなくていいじゃんと思っている。

だが、取材なき《リライト》ライティングにはやがて限界が訪れる。長期的ビジョンを持つならば、小手先のSEOを考えるのではなく、真に読者にとって価値あるコンテンツを作るための方法を考えなくてはいけない。

ランサーズは頼むから目を覚ましてほしい

クラウドソーシング大手のランサーズは「THE LANCER」というオウンドメディアを運営している。そこで悲しい記事を見つけてしまった。

タイトルがそもそも「進める→勧める」の漢字変換ミスであるのは目をつむるとして、「初心者ライターに単価の低い仕事を全力で勧める」ってランサーズがそれを言っちゃあ、おしまいでしょうが!!!!

もちろん、ライターさん個人の意見としては、そういう考え方もあるのは理解できる。

僕が怒っているのはこの記事を書いたライターさんにではなくて、ランサーズ公式メディアが、このような記事を掲載していることに対してだ。

言うては何だが、低単価のライティング案件が集まる「ランサーズタスク」はブラックハットSEOの温床となっていたではないか。

ライターさんは、報酬が少なくても良いから、自分の書いた記事が誰かに読まれることを、誰かの役に立つことを望んで、それが社会的な価値を生み出すことを願って、記事を書いている――、人だってきっといるだろう。

しかし実際にはその書かれた記事は誰にも読まれることはない。サテライトサイトからメインサイトにバックリンクを送って、その被リンク施策によってサイトの検索順位を上げる《ブラックハットSEO》のために用いられる。

低単価のライティング案件は、低単価であることだけが問題なのではなくて、得てして倫理に反する事業に加担する恐れがあるから問題なのだ。

不正確な医療情報を配信し炎上したWELQ(※医療情報メディア)では文字単価0.5円前後で記事が発注されていたと聞く。そして記事の大量生産には、ランサーズをはじめとするクラウドソーシングサイトが加担していた。

(※参考: 「クラウドソーシングサイトも共犯だ」 キュレーションメディア炎上騒動についてWELQ記事寄稿ライターが怒りの告発 - ねとらぼ

初心者には低単価の仕事がおすすめ!とランサーズが言ってしまうのは、まったくもって言語道断である。

さらにランサーズ(THE LANCER)は、このような記事も公開している。

上記記事ではWebライターが2千字/時で書くべき理由として「文字単価が低くても時給1,000円ペースで稼げる」からだと主張する。たしかに、単価0.5円でもそのペースで書けば時給1,000円を達成できるだろう。しかし、本当にそれで良いのか。それがWELQの悲劇を生んだのではないか。

ランサーズはお願いだから、目を覚ましてくれ。

初心者にこそ適正単価のライティング案件をおすすめしたい

繰り返しになるが、低単価のライティング案件は、リスクが高い。

取材ができないからオリジナルな記事を書くのが難しいし、初心者であればなおのこと、著作権法や薬事法(薬機法)やその他もろもろの法律に抵触してしまう恐れがある。

それに知らず知らずのうちに、ブラックハットSEOや、反倫理的な情報サイトの構築に加担してしまうかもしれない。

最低でも、文字単価1円以上。できれば文字単価2円以上。

正直、これを高単価とは言いたくないのだが、Webライター初心者であっても、このくらいの案件からチャレンジしてみてほしい。最初のうちは仕事を得るのが大変かもしれない。だが、長期的に見れば得をするはずだ。

くれぐれも「1日に2万文字書けば、文字単価0.5円でも1万円/日は稼げるぜ!」みたいな思考に陥らないように。記事の安売り&大量生産戦略は、あとあとWELQのような問題を引き起こす。 

初心者だからと気後れせずに、自信を持とう。きちんと取材して、時間をかけて記事を作れば、必ず良い記事はできる。

僕は、専業Webライターだ。しかし、仕事で1日に1記事よりも多くは、書かない(・・・・)ようにしている。質の高い記事を書こうとすれば、どうしても時間が必要だ。

生計を立てるのに量産は必要ない。Webライターにとってそれが当たり前となる日が来ることを、心から願っている。

(了)

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見えないセカイで戦う「筆力向上」の修行法

海に浮かんだ氷山をイメージしてほしい。僕たちは水面から突き出た氷の塔を見上げて「嗚呼、あの人はなんて筆力が高いんだ。どうすればあの山のようになれるだろう」と感嘆する。

しかし、おそらく目を向けなければならないのは、海の中だ。光の当たらない、見えないセカイにこそ、筆力の本体(・・)が隠される。

前置きはこのくらいにして、さっそく本題に入ろう。

1.情報を隠すと「物語」が生まれる

情報を隠すと、物語になる。

トリックや犯行動機を隠して描けばミステリーになり、謎多きヒロインとの出会いはラブストーリーを生む。SFは世界の驚くべき秘密を暴露する。

小説を読んでいてついつい、ページをめくる指が止まらなくなるのは、隠された情報が適切なタイミングで開示されるからだ。「情報待機」と呼ばれる大変高度なレトリックである。

ゆえに、物語の面白さを分析するならば、場面においてどのような情報が未だ(・・)開示されないかを見つけると良い。

情報待機のレトリックは小説に限らず、ウェブメディアやセールスレターの世界でも好まれる。

作家が苦心して隠したであろう、情報の痕跡を探してみよう。

2.表現を隠すと「文体」が生まれる

同様に、表現を隠すと、文体になる。

ところで世に聞く「文章力」や「筆力」と呼ばれるものが、本当に客観的な指標たり得るのか、正直に言って僕は疑いを持つ。

文体には書き手各々の個性があり、その文章を良い悪いと感じるのも、読者ひとりひとりの感性に委ねられる。一概に筆力の高い低いを他者と比べるべきではない。

しかしながら、自分の持つ「文体」を伸ばすとっておきの修行法がある。知って置いて損はしない。

修行、否、ゲームと言い換えた方が良いだろうか。そう、とってもエキサイティングな遊びがある。

名付けて《縛りプレイ執筆法》だ。

すでに900文字ほど書かれた当記事の文章を読まれて、何だか違和感があるなと首をかしげた方は、相当に鋭い観察眼をお持ちである。よくぞ水面下の氷山を見破った。

今まさに僕がゼエゼエと息を切らして、ナメクジが這うようなスピードで文を書き綴るのは、何を隠そう縛りプレイのせい。ネタバレはあとでするとして、ストイックにルールを守るのがここまできついとは……ヒィィィィ。

縛りプレイ執筆法では具体的に「ある特定の表現を使ってはいけない」と自分に制限を課す。できるだけ、自分がつい多用・乱用しがちな表現を禁止すると、効果的だ。

例えばブロガーさんで、普段から「いかがでしたか」を多用しがちな場合、その表現を禁止してみて、別の表現に置き換える。

姉妹ブログ「ときまき!」の記事では、縛りプレイ執筆法の意義について次のように紹介した。

小説文体を作っていくための最大の秘訣は「自分に制約を課して代替表現を探す」の一点に尽きます。文体を分析するとき「どのような表現が使われているか」ではなく「どのような表現が使われていないか」に着目して見ると面白いです。

( 小説らしい文章の作り方(M式縛りプレイ執筆法) - ときまき! )

小説に限らず、ブログやライティングの腕を鍛えるのにも、縛りプレイは有効だ。表現を縛れば、推敲する手間が生まれる。推敲によって相応しい代替表現を見つけられたならば、表現の幅はより広がるし、苦労した分、確実に自分のものとできる。

そろそろじれったいし、ネタばらしをしよう。

当記事では執筆にあたって、下記の表現を「禁止」した。慣れないうちは、ここまで縛らない方が良いだろう。

でもだんだんと、この縛りが快感となってゆく。

当記事の禁止表現(縛り)リスト

ルール:執筆時に下記の表現を使ってはいけない

  1. ~ので、~(の)ため、そのため、なので
  2. ~という
  3. こと
  4. ~している、~ている
  5. あれ、これ、それ
  6. 逆説の「が」「だが」
  7. ~してしまう、~てしまう、~てしまい
  8. ~したい
  9. 直後文章末尾の語句重複(~する。~する。~だった。~だった。…等)
  10. そこで、そして
  11. じつは
  12. ~など
  13. 必要
  14. もし、あるいは、かもしれない
  15. ~たり、~たり

このルールは以降の文章でも適用される。

いずれも文章中で多用しがちな表現であるものの、使用禁止したところで意外と書き進められるのが分かると思う(だが実際にやってみると簡単そうで骨が折れる。1~5番あたりとくに……)。

執筆にマンネリを感じたときは、ぜひ遊び感覚でやってみよう。

繰り返しになるけれども、特定の表現を使わない(・・・・)と、独特な文体が生まれる。

個性的な文体の書き手を見かけたら、自分が普段は使わないであろう表現を文章中に探してみよう。きっとその人は、意図して言葉を置き換えたはずだ。

3.言葉を隠すと「語彙」が生まれる

「縛りプレイ執筆法」の発展系で、語彙を飛躍的に増やす方法がある。

簡単に言えば、先ほどの表現縛りならぬ《五十音縛り》で、例えば「あ」を禁止すれば「あ」を含む言葉が使えなくなる。

ありがとう、朝、愛、挨拶、アンパン、雨、明暗、不安、エイリアン……のように「あ」を含む語句の使用が禁じられる。

言い換え例は次のとおり。※代替表現でももちろん「あ」は一切使えない

ありがとう → 感謝の言葉を述べた。

→ 窓から陽が差し込み、ウグイスがずっこけたような調子で歌い出す。僕はベッドから体を起こし、眠い目をこすった。

→ 大切な人を思い、心の底から胸を貫くひとつの感情が湧き起こる。

挨拶 → 「おはよう」と彼は朗らかな口調で言った。

アンパン → つややかな丸いパンを両手に頬張ると、中の甘味(かんみ)な食材が舌に触れる。聞くところによると十勝小豆(とかちしょうず)をすり潰して砂糖で煮込んだものらしく、見かけは真っ黒いのに口に入れると大層和やかで芳甘(ほうかん)な味覚をもたらすのだった。(※餡子・小豆(あずき)・味は「あ」を含み、使えない)

残りはぜひ読者諸君で挑戦いただきたい。(決してアンパンで力尽きたんじゃないですよ。震え声)

なお、「あ」の禁止はまだレベル1で、次のステップでは「あ」と「か」の両方を禁止する――と、縛りのレベルを上げてゆく。(理論上はレベル48まである!)

トレーニングの参考書には、筒井康隆の最高傑作『残像に口紅を』を読まれたし。(リンク先はAmazon)

本作は実験小説のひとつであり、ここで述べた縛りプレイのように「あ」や「い」や「う」を含む言葉が次々と使えなくなり、使用語彙がどんどん制約されてゆく。

最後の方では使える言葉が減りすぎて「たんたんめん!」「わんたんめん!」みたいな感じになるのだけれど、とにかく本当に恐ろしい小説で、筒井康隆の圧倒的な筆力を目の前に我々作家志望はただただ打ちひしがれ、地面にひざまずき、静かに涙を流すしかない。

かつて読書メーターに、僕はかような感想を残した。

世界を観測するのは《私》であるが、世界を言い表す語彙の数が、人それぞれ異なるのであれば、私は筒井氏と比べて何と色褪せた世界で暮らしてゐるのだらうかと。この小説を読んで本当に恐ろしくなつたのは、自分自身の「欠落」を自覚させられたからである。

大げさに思われるだろうか。いやいや。本当に本当に、筒井康隆の『残像に口紅を』ほどに僕が恐怖し、影響を受けた小説はこの世に無い。

筒井康隆ご本人さんはこないだツイッターでの投稿が炎上し、物議を醸したけれども、たとえ筒井康隆を好きになれなくても『残像に口紅を』だけは騙されたと思って読んでみてほしい。

まとめ

最後に、当記事で伝えたい事項をまとめておこう。

  1. 特定の情報を隠して、適切なタイミングで開示すると面白い物語が生まれる
  2. 特定の表現を禁止してより相応しい代替表現を探すのは、良い執筆訓練になる
  3. 独特な文体には、使われなかった・・・・・・・表現が隠される
  4. 五十音縛りでボキャブラリーを増やそう
  5. 筒井康隆の『残像に口紅を』は恐ろしい

以上、文章を書く人のお役に立てれば嬉しく思う。

(了)

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