クリエイターが知っておきたいビットコインのリスクとデメリット
はっきり言ってしまって、僕は他者に「ビットコインを使おうよ!」とおすすめする気持ちはみじんもなくて、むしろこれから暗号通貨を始めようとする友人がいようものなら「や、やめた方がいいんじゃないかな……」と止める側の人間である。
というのは、先日とある仮想通貨を10万円分買ったのだけれど、その3日後の資産評価がこの有様だ。
(※画像はAndroidアプリ ビットコインウォレット coincheck のスクリーンキャプチャ)
なんということでしょう。
10万円が、数日寝かせただけで77,429円に……。
含み損なので損失は未確定だが、円換算で2万円ちょっと減らしてしまった。
現状、仮想通貨はどこぞの仕手株かってくらいに値動きが激しい。それこそ前日比10%単位で上がったり下がったりする。これは僕が買ったネム(XEM)に限らず、ビットコインでも同じ。
仮想通貨は価格変動リスクがあまりにも高く、むやみに人に勧められるものではない。
この記事ではそのような生々しい話を入れながら、クリエイターが(仮想通貨でマネタイズしてやろうと考える際に)知っておかなければならない、ビットコインのリスクとデメリットを紹介しよう。
1.ファンに対して価格変動リスクの高い商品を勧められるか?
まずこの一点に尽きる。
例えばクリエイターが、VALUでビットコインを集めるにせよ、投げ銭や寄付形式でビットコインを集めるにせよ「私を応援するために円をビットコインに換えてね」とは言いづらい。
なぜならば、それは「価格変動リスクの高い商品」をファンに対して勧めることに繋がるからだ。
仮想通貨のチャートを調べてもらえば分かるとおり、前日比+15%だとか、-15%だとか、株や為替以上に値動きが激しい。
今、ビットコインは上昇トレンドにある。損をしている人は少ないかもしれない。
しかし仮想通貨バブル(?)が弾けて大暴落が始まったとき、目を覆うほどの惨状が広がるのは容易に想像できる。
補足すると、すでに幾ばくかのビットコインを保有している人に対して「ビットコインで支援してください!!」と呼びかけること自体に何ら問題はない。その人はすでに仮想通貨のリスクを知った上で、それを保有しているはずだから。
問題なのは、クリエイターに乗せられたファンが、仮想通貨のことをよく知らずに手を出してしまうことだ。VALU界隈の騒動も見過ごせない。
(注釈)
VALU:自分を株式会社に見立てて、株券のようなもの(VALU)を発行できるサービス。VALUの価格は需給によって変動し、売買はビットコインで行われる。VALUを保有するVALUER(株主)には優待を出すことができる。
クリエイターがファンに資金援助を募れるサービスとして注目される。
詳細は上記公式サイトを参照されたし。
VALU界隈の騒動:著名なユーチューバーがVALUにおいて相場操縦・風説の流布・インサイダー取引のようなことを行い、ファンからビットコインを巻き上げた一件。
有名なブロガーやユーチューバーあるいは漫画家がVALUを発行したとき、ファンはよく分からないままに円をビットコインに交換しようとする。
円を仮想通貨に換えるのは、手間もかかるし、手数料もかかるし、リスクもある。
ある日ビットコインが暴落したとしても、クリエイター側はその責任を負えない。
(参考)円決済でファンがクリエイターを支援できるサービス一覧
クリエイターがファンからお金を集めて優待を出したいのであれば、ふつうに円決済できるサービスを使った方が、ずっと安心できる。
例えば下記のサービスを使えば「自分を支援してくれた人だけが読める有料記事、ダウンロードコンテンツ」を円決済で売り出すことができる。
2.(デメリット)ビットコインを送るには送付手数料がかかる
「少額の投げ銭をしたいときや、寄付をしたいときにはビットコイン送金が役に立つ」とメリットが語られることも多い。
たしかに、銀行口座をネットに晒して「私に寄付してください!」とは、なかなか言えないし、本名がバレてしまうデメリットもある。銀行振込には手数料がかかるから、100円だとか200円だとか、少額の投げ銭をするには向かない。
そんなとき、ビットコインならば100円でも200円でも、ほんのわずかな手数料で送金できる。
と、僕も思い込んでいたのだが、ビットコインを相手に送るときには手数料が必要となる。取引所によっても異なるが、コインチェックだとBTC送付手数料は0.0005BTCだ。
安い!と思われるかもしれないが、現在のレートで円換算したら236円もかかってしまう!
これ国内だったら、ふつうに銀行振込の方が安いではないか。
三井住友銀行のATMから他行宛に振り込む場合でも216円。住信SBIネット銀行ならば、月3回まで無料で振り込める。
ビットコインの手数料が安いとか言われるのは、あくまで海外送金と比較した場合であって、国内送金であればふつうに銀行振込の方が安いし便利である。
ビットコインの普及によって、クリエイターへの少額寄付・投げ銭システムが普及するかと問われれば、難しいと答えざるを得ない。
あと「送金速度が早い」といったメリットもさかんに言われるが、これも海外送金と比べた場合であって、国内送金であれば銀行振込の方が圧倒的に早いです。
ビットコイン決済は早くても10分、場合によっては数時間~数日待たないと反映されないケースもある。
3.(デメリット)円→ビットコイン→円と交換するときにも実質的な手数料がかかる
仮想通貨取引所のアフィリエイトサイトで「ビットコインは売買手数料がかからない」と謳っているところがあるものの、これは嘘に近い。たしかに、売買手数料という名目では取っていない。
しかしスプレッドが開いているため、円→BTC→円の交換には実質的な手数料がかかる。
例えば仮想通貨取引所のひとつである、GMOコインの売買画面を確認したところ、次の画像のような価格が表示された。
(※画像は GMOコイン売買画面のスクリーンショット。売却価格および購入価格は常に変動します)
1BTC(ビットコイン)の
- 売却価格:473,825円
- 購入価格:476,825円
つまり1BTCあたり3,000円のスプレッド(価格差)が開いている。
これはどういうことかと言うと、今この瞬間に「円→ビットコイン→円」への交換を行った場合、それだけで3,000円はお金が減る。
言い換えると、1BTCあたり3,000円分の実質的な売買手数料がかかっているという意味だ。
これは、株やFXと比べると割高に感じる。SBI証券で株価48万円の株式を売買したとしても、約定にかかる売買手数料は600円もかからない。(株とビットコインを比較するのもあれだが)
なおコインチェックで確認したところ1BTCのスプレッドは数百円だったので、取引所によっても差がかなりあるようだ。
4.(デメリット)仮想通貨取引所から日本円を出金するときにも手数料がかかる
仮想通貨取引所のビットコインウォレットにBTCを貯めて、いざ日本円に換えて出金しようとするときに、上記の実質売買手数料に加えて、日本円の出金手数料もかかってしまう。
例えば、僕がメインで使っているコインチェックだと、日本円の出金時に400円の手数料が引かれてしまう。
ここまでくどくどと述べてきたが、要約すると
- 日本円をビットコインに換える
- ビットコインを相手に送る
- ビットコインを日本円に換える
- 日本円を仮想通貨取引所の口座から引き出す
のすべてのプロセスにおいて手数料がかかってしまう。
ゆえに、投資や投機を目的とする以外で「ビットコインを使うメリットが薄い」ということを伝えたかった。
5.(デメリット)ビットコインの送付速度が遅い
もしビットコインの決済スピードが早い(リアルタイムで反映される)のであれば、コミケなどの同人誌即売会で活躍する機会はあったと思う。
しかし現状、ビットコインは送金速度が遅いので、リアル決済の場ではなかなか使いづらい。
仮想通貨取引所ビットフライヤーのFAQにはこのように注意書きがある。
ブロックチェーンにおけるトランザクションの承認には時間がかかる場合があり、承認に数日を要することもございます。
トランザクション(入出金取引)の完了に数十時間も待たされたという話も出ている。将来的には解決されるかもしれぬが、何にせよ使いづらい。
まとめ
クリエイターがビットコインを使うには、下記のリスクとデメリットがある。
- 価格変動の激しい仮想通貨を自分のファンに対して勧めるリスク
僕が仮想通貨投資で、10万円をたったの三日で7万7千円に減らしてしまった話を思いだそう。投資家が損失を出すのは自己責任で済む話だが、有名人が「ビットコインおすすめやで!」とファンを煽って買わせた場合、話は別である。 - BTC建てで貯めた売上金が、仮想通貨の相場崩壊によって大きく目減りしてしまうリスク
ビットコイン建てで売上金を貯めた場合、もしも仮想通貨バブル(?)が弾けて10%も20%も価格が下落したとき、自分が大きく損をしてしまう。 - 何かと手数料がかかってしまい、少額決済や投げ銭システムに使いづらい
- 何かと手数料がかかってしまい、国内であれば銀行振込の方が安く済む
- 送金速度が遅く、同人誌即売会などのリアル決済の場では使いづらい
クリエイターがマネタイズをするのであれば、わざわざビットコインにこだわる必要はなく「BOOTH」や「Enty」を使えば良いし、あるいはKDPで電子出版をしたって構わない。
「クリエイターはビットコインを始めるべし!」と無責任に勧める情報がWebに増えてきたので、注意喚起を兼ねてここではリスクとデメリットを取り上げた。
以上、クリエイターの皆さんのお役に立てれば嬉しく思う。
(了)