米国VI(恐怖指数)の長期ショートは「やめたほうがいい」という話
本来、恐怖指数のCFD取引なんてものは超上級者向けのトレードであるのだが、このところにわかに人気を集めている。
「米国VIの長期ショートは勝率が高くて期待利回りも高く、リスクも低く抑えられる!」とメリットを謳うブログが散見される。
しかし騙されてはいけない。世の中にローリスク・ハイリターンな都合の良い投資先など存在しない。少なくとも一般投資家がリーチできる範囲内には。
米国VIの長期ショートを考えている人は、これを見てほしい。
先日2018年10月11日のNYダウ暴落騒動のときにGMOクリック証券から届いた、恐怖のロスカット執行メールである。恐怖指数の急騰を受けて、米国VIのショートポジションが3つもロスカットされてしまった。
米国VI長期ショートのデメリットを下記に挙げていく。
【罠その1】恐怖指数はどこまで上がるか分からない
巷の情報サイトでは
「米国VIのショートはロスカット値を80以上に設定しておけばリーマンショック級の金融恐慌でも耐えられるので安心!」
といったようなことが書かれているが、これは安心でもなんでもない。
たしかに、1993年以来の恐怖指数の史上最高値はリーマンショック時(2008年11月)の「89.53/※VI値は 72.80」が最高である。
でもこれは、たまたま偶然に、リーマンショックのときは米国VIが 72.80 までしか上がらなかったという過去の事実に過ぎない。
もしかしたら 100を超えていたかもしれないし、それ以上だったかもしれない。
ちょっと考えてみてほしい。もしもあなたが、リーマンショック以前から米国VIの長期ショート戦略を取っていれば、過去のデータからこのように考えたはずである。
(恐怖指数の高値は、1997年のアジア通貨危機のときが 48.64 、翌年のロシアデフォルトで 49.53、2001年のアメリカ同時多発テロ事件のときでさえ 49.35 が最高値だった。市場に大きなパニックがあっても恐怖指数は 50 を超えたことが一度もない。
余裕を見て、ロスカットレートは 60 あたりに設定しておけばまず安全だろう。)
ほら、過去のデータは当てにならない。実際、1987年のブラック・マンデーのときにVIX指数が存在したならば、リーマンショック時の最高値を軽く超えていただろうという話もある。
万が一の際にも安全なロスカットレートを見極めるためには 恐怖指数 - Wikipedia に掲載されているVIX指数の算出式を理解し「理論上はこの数値以上にはなり得ない」と言えなければならない。
もちろん僕には恐怖指数の算出式は意味不明で、さっぱり理解できない。数Ⅲの勉強を疎かにしていたことを心底後悔している。
【罠その2】米国VIの長期投資は「宝くじ」の正反対である
もしかしたらこのように考えるかもしれない。
「ロスカットレートをリーマンショック時の2倍(140くらい)に設定しておけば、ロスカットにかかる確率など万に一つしかないのだから、米国VIの長期ショート戦略は極めて期待値の高い投資手法なのでは?」
たしかにそのとおりだ。
それゆえに厄介だともいえる。
なぜならば、これは「宝くじの正反対」だからである。
宝くじはほとんどの確率で外れを引いて投資元本を失う。その代わりに万に一つもない確率で大金を得ることができる。
対して、米国VIの長期ショートはほとんどの確率で勝つことができ、ロスカットレートを100以上に設定しても年利5~10%となかなかの成績で運用できる。その代わりに、リーマンショックをはるかに超える万が一の金融恐慌が起これば、投資元本をすべて失う。
さて、この「逆」宝くじを我々は買うべきだろうか。
【罠その3】そもそもメンタルが含み損に耐えられない
高値圏で S&P500 を買っていたインデックス投資家は、リーマンショックのときにマイナス50%もの含み損に耐えなければならなかった。当時のことは知らないが、おそらくセンセーショナルな報道が連日なされただろうし、人々は悲観に明け暮れていただろう。金融市場の終焉を信じた人も少なくなかったはずだ。
そのなかでなおポジションを手放さず S&P500 に積立投資を続けられるのは、とてもメンタルの強い投資家だけだった。米国経済の回復と成長を信じて貫いた人だけが、絶好の買い場を自分のものにできた。
さて、もはや言うまでもないことだが、リーマンショックのときに S&P500インデックスを持ち続けるよりも、米国VIのショートポジションを持ち続ける方がはるかにメンタルをやられる。
たとえロスカット値を100に設定していたとしても含み損はマイナス70%を超え(その上、恐怖指数はどこまで上がるか分からないので)追加の証拠金投入を迫られる。
米国VIが大きく値動きするのは米国市場がオープンしている夜間であるから、不安で眠れたものではないだろう。
もしもリーマンショック時に米国VIを 25 でショートしていた場合、含み損は2008年9月から翌年5月頃まで解消されない。
およそ8ヶ月もの間、耐えられるだろうか。ジェットコースターのような恐怖指数の値動きと、迫りくるロスカット、広がる含み損、悲観的な報道、不況……。
耐える自信がないのなら、米国VIの長期ショートはすべきではない。年利10%で資産を増やすことよりも、健全なメンタルを保つことのほうがずっと価値のあることだ。
【罠その4】ポジショントークに騙されないように
ここまで読んでくださった方ならば、米国VI長期ショートの隠れたデメリット、恐ろしさに気づいていただけたかと思う。
米国VI長期ショートは、たしかに勝率が高い。だが、ローリスクとは言えない。
年利 5%程度で良いならば S&P500インデックスに長期投資するので十分だ。たとえ暴落して含み損を抱えることになっても、そちらの方がメンタル的にはマシである。
投資初心者の人に対して米国VIショートを勧めているような情報サイトは、ある意味ポジショントークなところがあり、GMOクリック証券の口座開設をさせてアフィリエイト報酬を得ることを目的としている。
もちろん、サイト運営者の方を批判するつもりは一切ない。投資は自己責任の上で各々が自由に判断し、楽しんだら良いものと思う。
ただ、ツイッターなんかを見ていても不用意に米国VIショートを始める人が散見される。警鐘を鳴らす意味で、今回はリスクとデメリットをご紹介させて頂いた。
かくいう僕自身もCFDで下手なトレードをしたせいで今現在は多くの損失を抱えており、
たすけて……:;(∩´﹏`∩);:
って感じで今部屋の片隅に座り込んでガタガタ震えている。
浅はかで愚かなトレードをして後悔している僕みたいにならないよう、反面教師としていただけたら幸いだ。
(了)
【悲報】CFDトレーダー引退のお知らせ(フラグ回収)
【前回のあらすじ】
ヒャッハーーー!!
CFDトレードで 16連勝を果たしたぜ!!
我が天才的な頭脳と神がかった直感をもってすれば恐れるものは何もない。
かくなる次の一手は、日経225の全力ショート!!!!
総裁選は終わった、円安は進み過ぎている。FRBの利上げシナリオに暗雲が漂いトランプ大統領が高らかに円安批判演説を始めれば為替には大きな調整が入り、不自然に釣り上げられた日経平均株価は奈落の底だぜ。知らんけど。
よーし、乗るしかない、このビッグショートに!!!!!
と丁寧なフラグを立てたのが下の前回の記事。
あれからどうなったのだろうと心配していた読者さんがいらっしゃるかもしれない。
安心してほしい。
フラグは無事に回収した。
収支がちょうどプラマイゼロになるあたりで設定した逆指値に引っかかり、口座を見に行った頃にはポジションが決済されていた。
成績は「16勝 3敗」
回数では勝ち越しているもののトータル利益は「-279円」で負けとなった。
これはまさにコツコツ勝ってドカンと負ける、典型的な敗北パターンだ。プロスペクト理論における認知バイアスの罠に囚われた、トレーダーのありふれた末路である。
今回、トレードのために投入した金額は 5万円だった。
16連勝を果たして 5万円は 6万5千円になった。しかし、たった3回の負けで 49,721円に減ってしまった。
ボクはCFD口座にお金を入れるときから(どうせ自分のことだから途中で調子に乗って大負けするんだろうな……)と予測していたから、大金は入れなかったし、逆指値の保険により被害を 279円で済ますことができた。
では、もしもCFDによる資産運用を本気で考え、500万円を投入していたらどうなっていただろうか。
そう、500万円 → 650万円 → 497万円 と手持ちの時価評価額が揺れ動くわけである。これに耐えられるメンタルを持った人間は、なかなかいない。
資産を投資で運用するのは構わないが、投機で運用してはいけないわけである。
投資と投機の違い
投資と投機の違いは、それが「ポジティブサムゲーム」か「ゼロサムゲーム」かである。
明日の S&P500(米国株価指数)がプラスになるかマイナスになるかは誰にも予想できない。指数トレードをして勝ったのであれば、それと同じだけの敗北者がいる。誰かが得をした分だけ、誰かが損をしている。それがゼロサムゲームの世界だ。
一方で、30年、50年と長いスパンで見たときに、第四次産業革命が起こり人類経済がより発展を遂げ、その中心となる米国企業がそれに見合った収益を上げるのであれば、S&P500は長期的に右肩上がりとなる。
米国市場に長期投資をしていた人間は、全員が利益を手にする。素晴らしきポジティブサムゲームだ。
もっとも、「金融恐慌の真っ只中で自分は死ぬかもしれない」「地球環境の致命的な悪化が資本主義を脅かすかもしれない」可能性は大いにあり、ポジティブサムゲームだからといって勝てるとは限らない。(けれども不安になっていても何も解決しない)
投機は人々の「時間」を奪う
投機が投資と決定的に異なるのは、それが人々の時間を奪うところである。投機は時間泥棒だ。
先物取引をしていれば否が応でも決済期限が気になるし、期限のないCFD取引だってレバレッジをかけていれば毎朝チャートを確認せずにはいられない。
どのタイミングで買って、どのタイミングで売り払うのか。為替レートや経済ニュースを絶えずチェックし、ポジションに頭を悩ませる。
判断する機会が多ければ多いほどに、我々は投機によって貴重な時間を失う。それは二度と戻ってくることがないものである。
ボクは今回のCFDトレードで279円の損失を出し、引退するに至った。けれども損失を出したこと自体はどうでもよく、問題なのは時間を浪費してしまったことだ。
これが適切な「投資」であったならば、時間が奪われることはない。年に1回リバランスをするくらいで、あとはほったらかし。チャートも見ない。
「自分が判断する機会」を限りなく減らし、そもそも投資したことなんか忘れてしまうのが理想といえる。目の前の仕事や生活に集中し、今この瞬間を楽しめるように生きたいものだ。
恐ろしい「投機」の時代が始まる
以上、よくある自己啓発書やビジネス書に書いてあるようなことを長々述べてしまった。自戒を込めて、というよりも自分に言い聞かせるつもりで書いている。
ところで「まだ仮想通貨持ってないの?」というブログを運営し、数多くの読者を仮想通貨沼にいざなった著名ブロガー、イケダハヤト氏が今度は「トライオートFX」に着目している。
彼は「日本一のFXブロガーになります!」と宣言し、FXの自動トレードを初心者に勧める記事を量産し始めている。
ボクは、イケダハヤト氏のアーリーアダプターとしての才覚は、純粋に評価している。おそらく本当に「トライオートFX」とやらはこれから大ブームになり、彼も日本一のFXブロガーになるのだと思う。(恐ろしい恐ろしい……)
投機沼に足を突っ込んで溺れるボクみたいな失敗をしないよう、どうかくれぐれも注意してほしい。
(了)
【ポートフォリオ公開】米国株ETF「QQQ」や「HDV」を保有して得る心理的効用について
ボクにはひとつの投資哲学があって、これは小説を書くときのテーマでもあるのだが「未来は分からない」繰り返そう、《未来は分からない》を個人的に信仰している。換言すれば、未来の不確実性に希望を見いだしている。
余談。ギリシア神話における「パンドラの箱」に残された最後の災厄は《予知》である。人類は予知能力を手にすることがなかったからこそ、災禍に荒れるセカイのなかでも生きる希望を捨てなかった。
未来が分からないのは、素晴らしい。ワクワクする。
未来が分からない前提において投資方針に優劣はない
今この文章を読んでいる読者さんでも、投資方針は十人十色だと思う。
- 国内外の株式・債券・不動産・ゴールドに均等分散投資をする人
- VT(Vanguard Total World Stock ETF)で世界経済の発展に賭ける人
- VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)で米国市場の発展に賭ける人
- AMZN(アマゾン)に全力投資の人
- 仮想通貨XRP(リップル)に全力投資の人
- CFDで米国VIのショート戦略を取っている人
未来が不確実である前提において、何に投資するのが最善であるかは、そのときになってみないと分からない。
ただひとつだけ言えるのは、あなたが自分の意思によって決めたその投資対象は、あなたを《幸せな気持ち》にさせるべく選ばれたということだ。
「心の会計」は人間の経済的不合理性を指すときに使われる言葉だけれども、案外「心が幸せになること」は侮れない。ボクは、自身の心理的効用を最大化させるべくポートフォリオを組んでいる。
異端の米国株ETFポートフォリオを公開
昨年からはこんな感じのポートフォリオで資産運用している。
QQQ(インベスコ QQQ トラスト シリーズ ETF)
VHT(バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF)
XLP(生活必需品セレクトセクターSPDRファンド)
VYM(バンガード 米国高配当株式ETF)
HDV(iシェアーズ コア 米国高配当株 ETF)
※各20%ずつ保有
このポートフォリオの意図をひとことで言うならば、
「情報技術セクター・ヘルスケアセクター・生活必需品セクター・高配当株・Google & Amazon が長期的に見てS&P500(米国市場平均)をアウトパフォームするだろう」
とボクが勝手に思い込んで組み上げたものである。
ただ正直なところ分散させ過ぎたなと思っており、もっとシンプルにQQQ(情報技術)・VHT(ヘルスケア)・XLP(生活必需品)で3セクター均等分散させた方が良かったかもしれない。分散させればさせるほど結局は市場平均に近づいてしまい、面白みに欠ける。
5銘柄を選んだ理由
QQQ、VHT、XLP、VYM、HDVの5銘柄を選んだ理由について、下記に簡単に記しておきたい。
ちなみに「5つのETF」に絞った理由は、ボクが《五条ダン》というペンネームで活動しており、純粋に資産を《五つ》に分けて運用するのが心理的に気持ち良かったからである。じつに馬鹿げた理由だ。
QQQ(情報技術+α)
QQQは「情報技術セクター」に投資がしたくて組み入れた。
VGT( バンガード・米国情報技術セクターETF)の方を選ばなかったのは、ボクが iPhone よりも Android 派であり、Mac よりも Windows 派であり、Safari よりも Chrome 派であり、つまるところAppleよりもGoogleの方が好きだからである。じつにしょうもない理由だ。
(注釈)
VGTはかつてアルファベット(Google)とフェイスブックが上位構成銘柄であったが、この2大企業は2018年のMSCIセクター変更で「コミュニケーション・サービス・セクター」に移されてしまう。つまりVGTの投資対象からは外れ、代わりにアップル(AAPL)の割合が20%近くに上昇することが見込まれている。(記事執筆時点では18.16%)
ついでに、QQQに含まれるAmazon社が世界を掌握する可能性にも賭けている。
VHT(ヘルスケア)
こんなことを言ったら笑われるだろうが、「不老不死の薬」を完成させる夢に賭けている。VHTで投資できる約360社のうちのどれかひとつが、もしもワンチャン不老不死薬の開発に成功したならば、世界中の富を恣にだってできるだろう。
さすがに不老不死は言い過ぎだとしても、ゲノム医療・遺伝子治療・再生医療といった最先端の医学が切り拓く未来の可能性を信じたい。
HDV(高配当)
HDVは売買回転率が高く構成銘柄をコロコロ入れ替える異色のETF。とてもユニークで面白い。S&P500を上回る未来はイメージできないけれども、一方で金融恐慌時には鉄壁のディフェンスを見せてくれそう。市場暴落時のHDVの動きをぜひ間近で見てみたい。
下げ相場のときにHDVを持っていたらワクワクしそう!といった、じつに子供じみた発想で組み入れた。
こんな調子で続くので、XLPとVYMについては割愛したい。
プーさんの風船と米国株ETFとではどちらに価値があるか
今回こんな記事を書いたのは、自分の銘柄選定の正しさや優位性を証明したいからではない(むしろ正反対)。ボクがいかに非合理的に、自分の感情を優先させて銘柄を選んだかを知ってほしかったからだ。
前置きが長かった。
そろそろ本題に入ろう。
現在上映中の『プーと大人になった僕』を観てきた。
とても良かった。
ネタバレはしないがどのくらい良かったかと言うと、見終わった直後にウォルト・ディズニー(DIS)の株を個別で買ってやろうかと思ったほどである。
それで映画を観ながらずっと考えていたのは、プーさんの持っているただの赤い風船と、ボクが持っている米国株ETFとではどちらの価値が高いのだろうということだ。
僕らは投資対象を選ぶとき、それがどれだけの経済的リターンをもたらすかで価値を判断している。
しかしここで見過ごされるのが「時間的損失」と「心理的効用」の2つの存在である。
例えばボクが日本株の信用取引でデイトレードをしていた頃、それなりに儲かっていた(時期もあった……)が、朝から昼までチャートに釘付けになっていなければならなかったし、それによる時間的損失は計り知れない。そして二度と戻ってこない。
仮想通貨投資をしていた頃もやはり結構儲かっていた(時期もあった……)が、1日に10回以上はビットコインの値動きをチェックしていなければ、不安で仕方がなく仕事に集中することもできなかった。
米国株ETFに投資し始めてからは「長期投資に債券は不要なのか」「新興国株は逆張りチャンスなのか」「優先株式とはなんぞや」みたいな情報をネットサーフィンするのでついつい夜更かししてしまい、寝不足の日が続いた。
いずれも失ったものは時間であり、おそらくはその時間で勉強なり読書なりお絵描きなりしていた方が遥かに有意義であった。
※もちろんデイトレードやビットコインをホールドするのが自分にとって楽しい時間であるならば全然構わない。
プーさんの風船には素晴らしい利点があって、それは風船を持っているだけで幸せで、楽しい気分になれることだ。
1000万円分の金融商品を持ってソワソワしたりイライラしたりするよりも、100円の風船を手にして楽しく遊んでいる方が心理的効用はずっと高い。
だからボクは、たとえ含み損になってもワクワクして持っていられるかどうかで、銘柄を選んでいる。銘柄紹介時に「気持ち良い・好き・夢がある・面白い」といった感情語句が頻出したのはそのため。
(※本当に含み損でワクワクしていられるかはその時になってみないと分からないが)
これは特別なことでも変わったことでもない。投資家は誰しも多かれ少なかれ、無意識的に投資対象を決めているのかもしれない。
自分の心理的効用を最大化させるべく。
幸せになれる風船を探して――。
以上、プーさんの映画良かったよ!というお話でした。
(了)
CFD取引で16連勝して得た利益など簡単に吹き飛ぶという話
2017年に仮想通貨FXを始めてすっかりギャンブル中毒となったボクは、18年のコインチェック流出事件とビットコイン大暴落騒動が起きたあとも熱が冷めずに、投機の新天地を求めて彷徨うがごとくGMOクリック証券のCFD口座を開設していた。
CFD取引では日本、米国、新興国等の株価指数や、原油価格、金価格、面白いところでは恐怖指数(VIX)に対してポジションを建てられる。株と違って夜間もトレードができ、先物と違って期限もない。CFDは「株版のFX」と呼ばれているそうだ。
ちょうどその頃ボクはAmazon Prime Videoで『マネー・ショート華麗なる大逆転』のドキュメンタリー映画を観てしまっており、スーパーマンを夢見る無垢な子どものようにショート(空売り)に憧れていた。
マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)/Amazon Prime Video
サブプライム問題の本質をいち早く見抜きリーマンショックでボロ儲けした投資家たちの話。原題の『The Big Short』や原作の『世紀の空売り』の方が聞き覚えがあるかもしれない。
The Big Short という題からてっきり株式を空売りするのかと思いこんでいたのだが、まったく見ず知らずの金融商品が作中で登場して(ふぁっ!?)となり、自分がリーマンショックをまったく理解していなかったことを思い知らされた。恐ろしい恐ろしい。閑話休題。
さておき、CFD取引の結果は順調で、なんと無敗で16連勝もしてしまった。
日経225をショートしたり新興国ブル3倍ETFをショートしたり米国VIをショートしたり、とにかくショートしかしてないがすべて勝った。
ヒャッッハアアアァァァ!!!! ボクは天才トレーダーだぜ、もう何も怖くない!!!!! 今までは様子見で少資金しか入れていなかったが、レバレッジを引き上げて投資金額を増やして100万円の不労所得をゲットしてやるぜイエアアアアアッッッ!!!!!
まずは手始めに日経225をショートだ。自民党総裁選も終わってしまえば材料出尽くし。トランプ大統領が日本との貿易戦争を匂わす発言をすれば今の不自然な吊り上げ相場など瞬く間に崩落。いくで、やるで、日本株全力ショートや!!!!!!
この時のボクはまだ知る由もなかった。
ショートをかけた翌日から日経平均株価は三角持ち合いを上放れし、その後年末に至るまで年初来高値を更新し続けることになろうとは……。※
※これはフィクション(になってほしいと筆者は願っている展開)です。
CFDトレードから学べる人間の本質
冗談はともかく、これが実際のトレードの成績である。
- 利益:平均 + 602 pips 回数 16 回
- 損失:平均 - 2,970 pips 回数 1 回
上記のデーターから学べることは、大きく分けて3つある。
(1) 16連勝できたのは才能あるいは実力なのか?
競馬でもパチンコでも何でも良いのだけれども、連勝が続くと人間は、それが自分の実力であるかのように錯覚してしまう。ファンダの読みが当たったとか、テクニカル分析が功を奏したとか、(ふっ……計画どおり……)とほくそ笑んでしまうわけである。
今回、CFDで16連勝できたわけだが、これはボクが相場の動きを見抜く鋭い洞察力を有していたからであろうか。いや、運が良かっただけである。
上のキャプチャ画像の集計期間を見ていただければ分かるとおり、2018年5月から同年9月にかけての期間は、日経平均株価がちょうどボックストレンドで推移していた期間である。
雑な図解で申し訳ない。ボックストレンドでは株価が一定の範囲内で波のように行ったり来たりするから、上図のオレンジ色の箇所でロングポジションを持とうがショートポジションを持とうが、利益確定のタイミングはやがて訪れる。
もしも単調なボックストレンドが永遠に続くのであれば、トレードで10連勝しようが100連勝しようが何ら不思議はないのである。(もちろんトレンドが永遠に続くことはあり得ない)
2017年のとき、仮想通貨界隈は大盛り上がりしていた。
ビットコインやその他のアルトコインに投資していた人たちの中には「自分には先見の明があった」「我々はアーリーアダプターだ」「法定通貨はこれからどんどん減価してゆくというのに、未だ銀行に金を預けているやつは馬鹿だ」「米国株クラスタはざまあみろ」と声高に叫んでいた過激派もいた。
しかしそれも、たまたまその年の相場環境が良かっただけ。運良く上昇トレンドが続いただけである。
自分の《先見の明》を信じて仮想通貨を手放せなかった人たちはどうなっただろうか。
18年の年初高値から9月にかけて、ビットコイン(BTC)はマイナス65% 、リップル(XRP)はマイナス70% 、ネム(XEM)はマイナス85% 、コムサ(COMSA)はマイナス96%も値下がりすることとなった。
今年に入っても仮想通貨の含み損に耐え続けているホルダーは「これからもビットコインの上昇トレンドは続くはず」「仮想通貨が法定通貨に取って代わる未来が訪れる」と信じている。
仮想通貨に限らず米国株に投資している人だって「米国市場は今後も右肩上がりで成長し続ける」「米国株はこれからも他の先進国・新興国株をアウトパフォームし続ける」「くくく、我らのAmazonがセカイを支配するのだ」と考えているかもしれない。
なんにせよ、自分の持つポジションに対して肯定的な未来予測を信じてしまうのは「肯定的幻想(Positive illusion)」と呼ばれる認知バイアスのひとつであり、ましてやCFD取引での16連勝をおのれの実力と誤認するのは典型的な「自己奉仕バイアス(Self-serving bias)」の事例である。
ともあれ、認知バイアスが存在するからこそ、ギャンブルは楽しいのもひとつの事実だ。
(2) コツコツドカンはどうして発生するか?
長話が過ぎたのであとはさくさく進めたい。
先程のCFDトレード成績で、「利益の1回あたり平均は 602 pips」であるのに対して「損失の1回あたり平均は 2,970 pips」であった点に注目したい。
つまり、小さく細かく利益確定を繰り返す一方で、損切りは損失が大きくなるまで先延ばしにしてしまう。コツコツ稼いでドカンと損する、いわゆるコツコツドカンというやつである。
上図はプロスペクト理論におけるS字型効用関数と呼ばれるものだ。(もっとも正確なグラフではなく、あくまで参考イメージとして)
人間は利得と損失が同じであれば、損失のほうを利得より 2倍も過大評価してしまう。
「株で1万円の利益が出た」喜びよりも、「株で1万円の損失を出した」ショックの方が倍近く大きい。
したがって含み益のときはせっせと利益確定してしまうのに対して、含み損を抱えているときは(損失を確定させることを恐れて)なかなか損切りができない。
人は含み損すなわち「心理的損失」を抱えるとリスク選好型の行動を取り、ポジションを維持したまま株価が元値へと戻る可能性に賭けてしまう。
だが、含み益すなわち「心理的利得」を得ているときはリスク回避型の行動を取り、強気相場が崩れることを恐れて株を売り払ってしまう。
人間であれば程度の差こそあれ、認知の歪みから逃れることはできない。
(3) 自分の意志でどうこうできるのは「賭け金」の決定だけ
結局のところ、我々が未来予知の超能力を持っていない以上、投資で勝つか負けるかは誰にもわからない。見出しのとおり、自分の意志でどうこうできるのは「賭け金をいくらにするか」の決定だけである。
今回、ボクがこんな長ったらしい記事を書く余裕があるのは、CFD口座には「ガチャに課金して失っても後悔しないくらいの」金額しか入れていないからだ。
もしも生活資金をぶっ込んでいれば、16連勝してそのあと大きく1敗したら正気でいられなくなってトレードにのめり込んでいったと思う。
賭け金の設定の時点で、勝負は決している。失っても良い金額以上をCFD口座なんかには突っ込んではいけない(自戒を込めて)。
もっとも去年に仮想通貨FXにハマっていた頃も、最初は1万円から始めて徐々に後に引けなくなってしまい、10万円、50万円……と次第に投入金額が増えていきギャンブル中毒になってしまった反省があり、そもそも下手なギャンブルには最初から近づかない方が身のためなのだ。
おのれの自制心とやらを信用してはいけない。(その時点で心理バイアスがかかっている)
以上、CFD取引で16連勝して得た利益などいとも簡単に吹き飛ぶという話でした。
(追記:後日譚を書きました)
「文章が書けない病」と等身大の自分
執筆スランプがひどくて、趣味のブログや小説まで書けなくなってきている。このブログも下書きリストに100記事近く「書きかけの未完原稿」が溜まっており、たいていは書き始めるも途中で嫌になって投げ出してしまう。
で、藁にもすがる思いで執筆スランプの脱出法をGoogle先生に聞いてみたら、なんと検索上位2つともボクが書いたブログの記事で、皮肉すぎてさすがに乾いた笑いがこぼれてしまった。
書けない病とショーペンハウアー
もっともショウペンハウエルに言わせれば、執筆スランプに喘ぐ物書きなどは、三流の愚か者なのだ。なぜならば、書けなくて悩むのは「考えもなしに書こうとしている」か「書くために考えようとしている」かのどちらかだからだ。
本物の文筆家であれば、まず自分の頭で考え抜いた思索があり、それを読者に届けようとして、ようやく筆を執り始める。伝えるべき事柄が最初になければならない。
原稿用紙のマス目を埋めるため、文字数を稼ぐために文章を書くのは、これは紛れもなく読者に対する詐術行為であり、そんなくだらない本はただちに投げ捨てるべきだ。
――とまで、ショウペンハウエルは書いている。(きっとショウペンハウエルが現代に生き返ったらインターネットにあふれかえる文章を見て発狂しそうだが)
ともあれショウペンハウエルの毒舌エッセイに興味のある人は一度彼の著作を読んでみてほしい。上の話は『読書について (光文社古典新訳文庫)/Amazon』の「著作と文体について」の章に書いてある。
書けないのは、伝えるべきことがないからであり、すなわち書けないときは書いてはいけない。書こうとする前に、徹底的に思索せよ。
ショウペンハウエルの言うことは厳しくて、本書を読み返すたびにボクなんかはすっかり震え上がってしまう。(というか切実に筆を折りたくなる)
等身大の自分と向き合う
ところでボクはバーチャルYouTuberになりたくて、なるための勉強をしている。
個人運営のバーチャルYouTuberさんを見ていると、ほんとすごいなと思う。自分よりも若い人たちが、絵を描いてLive2Dモデルを作って、Blenderで3Dモデリングして動かして、シナリオもやって動画制作もやって、Webサイトを立ち上げてプロモーションもやって、トークもうまいし企画力も並外れている。
かたやボクはと言えば、絵がうまくなりたいと思ってお絵描き教本を買い集めたは良いも正面顔のところから一向に練習が進まず、子供向けのUnityとC#の入門書を読み始めるも最初の30ページで悲鳴を上げるありさまで、おまけにバーチャル美少女youtuberになるべく「ふわふわり♪ ふわふわる♪」と裏声で歌う練習を深夜にしていたら死にたくなった。
自分が未熟すぎて落ち込むと同時に、もしこのまま成長しないで歳だけ取っていくことを考えると、やり場のない恐怖と焦燥感がこみ上げてくる。
けれども他者と自分を比較して得られる劣等感を糧に頑張るのは、経験則上うまくいかなかった。辛くて苦しいからだ。
「すごい自分」になろうと無理をしても、理想と現実のギャップに絶望してしまい長続きしない。
ボクが執筆スランプでブログが書けなくなったのも、おそらくは「ライターを名乗るからには他者から一目置かれる名文を書きたい!」といった見栄や自意識過剰によって自分を縛っているせいだろう。
《五条ダン》が生まれたばかりの頃、ボクは小説家になろうで『ぼっちの就活日記』というエッセイ風フィクションを連載していた。今読み返してもひどい文章&内容で、こんな黒歴史は葬り去ってしまおうと何度も考えたが、消さずに残している。
どんなに恥ずかしい黒歴史であったとしても、この頃の文章が最も自由にのびのびと書けていた気がする。等身大の自分で、好きなことを好きなように書いていた。
なので今はこのくらいのイラストしか描けなくても、等身大の自分に+αを積み重ねつつ、ゆっくりとナメクジのような歩みでも進んでいけたら良いなと思った。
けものフレンズの「わーい!」「すっごーい!」「たーのしー!」の三原則を創作するときも忘れないように。
バーチャルYouTuberデビューの方はまだ当分先になりそうだが、ニコニコ動画VOICEROID劇場職人(?)の方は一足先に念願のデビューを果たした。
こちらのマイリストにまとめており、ニコニコは会員登録しなくても動画が見られるように仕様変更されたので、良ければ見てほしい。
僕たちの戦いはこれからだ!
(了)
男だけど電車で痴漢被害に遭った話
隠していようと思ったが、痴漢に関する論争がネットでバズるのを見るたびに、僕自身がつらいと云うべきか、つっかえて取り除くことの出来ない心の棘のようなものがあって、この際だから告白してしまおうと思う。
男だけど電車で痴漢をされたことがある。
小学5年生のときだった。祖父母の家に遊びに行く途中で、JR京都線の普通列車に乗り込んだところだった。車内は空いていて、人はほとんどいなかったと記憶している。
椅子は窓を背にして座るロングシート(縦座席)タイプだった。
僕が座席の一番端っこに腰掛けていると、すぐ後からおじさんが乗り込んできて、僕の隣にぴったりと身体をくっつけて座った。
他に空いている席がいくらでもあるのに、どうして真横に座るんだろうと不思議に感じていた。
電車が動き出して少し経ったとき、おじさんが僕の膝の上に手を置いてきた。僕はジャージの長ズボンを穿いていた。
悪意のあるものだとは思っていなかったので「手を置く場所を間違えていますよ」みたいな言葉をかけるべきか否か迷った。おじさんの上半身は前後に揺れていて、もしかしたら眠っているのかもしれないと思った。
黙っていると、おじさんはジャージの上から僕の太ももをさすり、それでも抵抗しないのを見て取ると、今度はジャージのポケットの中へと手を差し入れてきた。そしてポケット越しに、内股を撫で始めた。
この段になってようやく、自分が何か良くないことをされているのに気がついた。しかしそれが具体的に何であるのか、理解できない。
当時は小学5年生だったが『痴漢』の言葉自体は知っていた。通学路のトンネルに『ちかんに注意』と書かれた看板があって、トンネルに出没する不審者が痴漢なのだと認識していた。まさか人目のあるはずの電車のなかでそのような犯罪行為をする人が存在するとは、そのときは夢にも想像していなかった。
だから僕は「この人はスリなんだな」と考えた。ポケットの中をまさぐって、何かを盗むつもりなんだなと理解した。
(シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンや怪人二十面相にハマっていたから、痴漢よりもスリの方がずっと身近に想起される犯罪だった)
上着のパーカーの方のポケットには、家の鍵や切符や小銭入れが入っていた。これを盗まれては大変だと、空いた方の手でぎゅっと鍵を握りしめていたのを覚えている。
電車が走っている間、おじさんは動かしているかいないかのゆっくりとした速さで、ズボンのポケット越しに僕の内股やその先を触っていたが、やがて次の停車駅に着きドアから人が乗り込んでくる少し前に、手を引いた。
今しか逃げるチャンスはないと、慌てて電車から降りた。振り返って、おじさんが追いかけてくる気配がなかったので安心する。各駅停車で、駅の間は5分程度だから、実質的に3分か4分か、短い間のできごとだったのだろう。しかし体感としては、とても長い時間に感じられた。
電車から降りた直後の僕は少し興奮していて、ショックよりもむしろ「勝ったぜ!」という気持ちの方が大きかった。
つまり、僕はおじさんのことを痴漢ではなくスリとして認識していたから、「鍵と小銭入れをスリの手から守り通したぜ! くくく、残念だったな。ズボンのポケットには何も入っていなかったんだよ」みたいな心境だった。今にして思うと悔しい話だ。
結果として盗まれたものがなかった(被害がないと認識していた)こともあり、このことは駅員や警察に話していない。小学生の自分には、事態の深刻さや適切な対処方法が分からなかった。携帯電話も持ち歩く年齢ではなかった。
家に帰ってから、僕は少し自慢げに「電車でスリに遭ったけど大丈夫だった」と母に報告した。母は話を聞いて「それはきっとスリじゃないよ……」と曖昧に言ったが、そこから先は語らなかった。
だから精神的なショックを受けることになったのは実際に被害に遭った時期よりもずっと後の話で、たしか高校生くらいになって痴漢が何であるかを知ったとき「あのときのあれは痴漢だったのか……」と驚くと同時に、腑に落ちたのだった。
インターネットで痴漢犯罪に関するニュースや体験談が話題に上がるとき、しばしば――というか必ずと言って良いほど、はてブでは「男性対女性」の対立構造でコメント欄が荒れる。
悲しく思う。
男女の対立構造を持ち出して痴漢について語るとき、そこには「男性の痴漢被害者」の存在が無視されている。そもそも存在自体が知られていないのではないか。
だから声を上げた。
具体的な解決策を提示できなかったとしても、それでも伝えられることは書いておかなければと思い、書いた。
争っている場合ではないし、団結して戦わなければいけない。一刻も早く、この忌まわしき犯罪が、社会から無くなることを願っている。
(了)
国民年金の免除・猶予申請では「青色申告特別控除」が意味を持つ
人生は思うように行かないもので、Webライターを始めて4年が経つも収入は一向に上がらず、昨年は想定外の出費が重なり経済状況はいよいよ厳しくなり、このたび国民年金の免除申請をすべく市役所へ向かったのだった。
さて、国民年金は前年所得が57万円以下の場合に、全額免除または納付猶予が適用される。
(※世帯構成や扶養親族数等によって基準が異なる。詳しくは、保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構 を参照されたし。)
この基準となる所得とは、例えばフリーターの人であれば源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が所得金額となる。給与所得控除は最低でも65万円分は枠があるので、57万+65万=122万の計算となり、つまり年収122万円以下の給与所得者であれば全額免除・納付猶予の対象となり得る。
では、ボクのような給与所得控除が使えないフリーランス(個人事業主)の場合はどうなるだろうか。今回はそれを確かめたくて、昨年度の申告書と決算書を持参し、市役所の年金窓口の方に聞いてみた。
ボク(確定申告書Bを見せながら)「個人事業主の場合、免除基準となる所得金額はどれになるのでしょうか」
市役所の人「確定申告書Bで言うところの【9番 ※所得金額の合計】が所得となりますね」
ボク「つまり、青色申告特別控除後の所得で良いのですね」
市役所の人「はい、そうなります」
ボク(決算書を見せながら)「売上から経費を引いた差引金額は57万円を超えているのですが……」
市役所の人「ええ、そこから青色申告特別控除額を差し引いた額が所得金額となりますので、所得57万円以下で申請していただいて大丈夫ですよ」
ボク「これって仕組み上、白色申告の個人事業主さんは不利なんですかね……」
市役所の人「まぁ……えぇ……給与所得の方を主に想定している制度となりますので……」
結論
結論として「青色申告のフリーランスであれば、給与所得者と同じく年収122万円以下が国民年金の全額免除・納付猶予の対象となり得る」ことが分かった。
(※青色申告特別控除額65万円+57万円=122万円)
ただしケースバイケースの事例があるため、年収122万円以下だから必ず全額免除が適用されるとは限らず、日本年金機構の審査によって最終的に免除区分が決まるとのこと。
ヤフー知恵袋で調べてみると「青色申告控除前の金額に決まってるやろ!」みたいな回答をしているカテゴリーマスターさんがいて不安だったのだけれど、今回きちんと市役所の窓口で確認できて安心した。
「売上-経費-青色申告控除」が事業所得となる。もし事業所得の他に給与所得や不動産所得、雑所得等がある場合は、その合算が所得金額となる。
申告分離課税(特定口座・源泉徴収あり)で処理している株の配当金がどうなるかは確認しそびれてしまった……。※また次回市役所に行ったときに聞いてみます。
全額免除が適用されなくとも、半額免除や4分の1免除が適用されて支払額を減らせるかもしれないので、年金保険料を払うのが厳しくなってきたフリーランスの人は、市役所の年金窓口で相談することをおすすめしたい。
年金免除・納付猶予申請をする場合には「青色申告特別控除」が(制度の善し悪しは別として)プラスに働くのは確かなようだ。
ボクなんかも節税メリットを享受するほど全然稼げてはいないのだけれど、それでも青色申告はしておいて損はないということが分かった。
(了)
ボクはまだ仮想通貨で消耗していたという話
正常な判断をすることは難しい。それはもちろん、判断をするときは自分のことを正常だと信じて疑わないからである。
事件は起こった。
12月のある日、ボクはまだ仮想通貨トレードで大儲けする夢を捨てられず、取引所のチャートに張り付いていた。取引板は赤と緑色にちかちかと点滅し、その横ではチャットの文章がめまぐるしく流れている。
そこでふとした怪情報が目の前をよぎった。
「おい、海外取引所では仮想通貨のXEMが1ドルで売れているぞ」
目を疑った。1ドルといえば当時のXEMレートの2倍の価格だ。実際にその海外取引所へアクセスしてみると、たしかに異常な高価格レートで取引されている。
つまり、日本の取引所でXEMを買って、海外の取引所に送金して売却。ビットコインに交換してから日本の取引所に戻し、今度はビットコイン建てでXEMを購入し、海外取引所に送る。そしてまた売却してビットコインに替える。
なんとこの裁定取引(アービトラージ)を繰り返せば、無限に儲かる理屈だ!!!
ヒーハー、目の前にお金が落っこちているようなもんだぜ!! 楽勝じゃないか!!
と思ったボクはさっそく取引所口座に残っていた日本円でXEMを買い付け、すぐさま海外取引所のウォレットに送付した。
結果、送金ロストした。
海外取引所のXEMウォレットは『Maintenance』にステータスが切り替えられ、その後何週間待っても送ったXEMがウォレットに反映されることはなかった。サポートにメールをしてもまったく音沙汰がない。よくよく見ればその取引所は、運営者情報の一切が隠されているではないか。
英語で検索をかけてみれば、被害者と思われる他の投資家の嘆きの投稿で溢れかえっていた。
改ざん不可能でインターネット上に残り続けるXEMのブロックチェーン(台帳)には、ボクがその取引所の口座にXEMを送金した取引履歴のたしかな証拠が残っている。だがその優れたフィンテック技術も、悪意ある詐欺取引所を前にしてはまったくの無力だった。
またしてもボクは仮想通貨で愚かな失敗をしてしまったのだった。
(※過去記事→ 想通貨トレードで投入資金をすべて失ったボクが伝えたいこと)
その後XEMは価格が2倍に高騰し、結局は(国内取引所でも)1ドル付近で取引されるようになった。つまり余計なことをせずにそのままホールドしていれば、資金は2倍になったのだ。
悔しくて、絶対にやめると誓っていた仮想通貨トレードに再び手を伸ばしてしまう。夜間も、休日も、仮想通貨相場に休みはない。しかも現物取引であっても、レバレッジ25倍のFX並みに値動きをする恐ろしいジェットコースターである。
資金が30%近く増えたり減ったりする日常茶飯事に、さすがに感覚がおかしくなってしまう。やっていて(あっ……これは典型的なギャンブル依存症だな……)と自覚する。だが自覚があっても取引をやめられないのが依存症の怖いところである。
どのようなギャンブルであっても、勝ち逃げできずにトレードを繰り返した果てに行き着くのは「破産」である。
ついには夢のなかでさえボクは仮想通貨トレードをするようになって、夢の世界では赤色や緑色の数字があたり一面を駆け回っていた。高いビルの電光掲示板に『ビットコイン価格5000万円を突破!!』と表示され、ボクは目をまん丸にして(ついに億り人になるときが来たのか……)と興奮と共に目を覚ます。
飛び起きてスマホで確認してみると、保有通貨は前日比マイナス20%に下落していて、夢から一気に現実に戻った。不毛な生活である。
ミヒャエル・エンデの『モモ』をもう一度読み返さなければと思った。人々は未来のお金を得たいがために《今》というかけがえのない時間を――、命を失ってしまう。
投資は、時間のマジックを使ってお金を働かせる。しかしギャンブルでは我々がお金に弄ばれ、気がつけば時間を盗まれている。本末転倒ここに極まる。
さておき、仮想通貨そのものにお金を投じるよりも、ブロックチェーン技術の勉強をしてアプリやWebサービスの個人開発に取り組んだ方が、はるかに得られるものが多い。
JavaScriptで開発ができる仮想通貨LISKのコミュニティは技術方面でも盛り上がっているし、APIマニュアルが公開されている仮想通貨XEMでもさまざまなWebサービス・アプリを作ろうと試みる学習者が増えてきた。
XEMの投資家たちが「XEMの価格に一喜一憂することはもうやめて、どのようにその技術を使うのか、自分なりにできることからやっていこうよ」と呼びかけているのは、とても良い兆しだと感じる。
たとえバブルが弾けて仮想通貨の価値が今よりずっと低いものになったとしても、そこで培った知識と技術は、決して無駄にはならない。一生の財産と言ったら大げさだろうか、しかし貴重な経験とはなるだろう。
自分の魂を差し出すようなギャンブルは、やめなくてはいけない。
『賭ケグルイ』は漫画の世界だけに留めておきたい。
サンプル数が自分ひとりなので何とも言えないが、ボクのように仮想通貨ギャンブル依存症に陥ってしまう人は今後増えていくだろう。恐ろしいことだ。
言われなくても分かっている。
ビットコインの価格を1000万円にするよりも、自分自身の能力を1mmでも2mmでも高めることの方が大切だ。自己投資こそが、最高のパフォーマンスを誇る投資なのだから――。
(了)
半額の王様
ダメ出しをされるのには慣れており、おのれの未熟さをよくよく自覚している。しかしそれでもショックを受けるのが人間で、ある日、なにげなくエゴサーチをしたときに見つけてしまった。
『五条ダンというやからはライター失格だ。文章がなっておらず読むに堪えない。聞くところによると《自称ライター》とのことで、ああやっぱりなという感じだ』
読者から頂いた記事へのコメントは、おおよそそのような内容だった。効果は抜群。豆腐メンタルが儚くも砕け散る。
ショックだった。だがそれは自分が不当な評価を受けたことへの憤りではなく、不安定なアイデンティティの急所を突かれたことによる揺らぎであった。
ライター、失格。
大学時代、就職活動に失敗したボクは、何者にもなれなかった。何者にもなれないまま、何とかしがみついたのがWebライターの職であった。
「ライター」の肩書きは自信と安心を与えてくれたが、そんなものは誤魔化しだ。ボクには出版社で働いた経験もなければ、本を出した実績も無い。本職のライターの半額以下の報酬を提示して、ようやく仕事を貰えている立場に過ぎない。
そのような自分が「ライター」を名乗るのは、とてもおこがましいことで、ともすれば反感を買うものかもしれない。
ボクは、何者でもない。
きっと何者にもなれない者には生存戦略が必要である。
何者かになること、何者かであろうことに苦しむのではなく、頑張るのではなく、何者でもない自分が心の底から何を愛し、何を成し遂げたいのか、正直に、真摯に、真剣に、目を逸らさず、等身大の自己の気持ちと向き合わなければと強く感じた。
今日、十二月五日は関西でも真冬並みの気温で、駅舎を抜けると街灯の光を浴びた吐く息が白く濁った。
駅前の百貨店は、地下がスーパーマーケットになっている。夕食もとい夜食を買って帰ることにした。夜の七時を過ぎるとさまざまなお総菜が半額で売り出されるのだ。
エビフライもお刺身もコロッケも半額価格で買うことができ、懐が寂しい身としては大変ありがたい。両手にスーパーの袋を引っさげ、駐輪場へ向かう。このとき一階に上がって、フロアを通り抜ける必要があった。
百貨店の一階フロアは、ブランド服や腕時計、宝石を扱う高級店がきらびやかに並ぶ。閉店間際の八時少し前になると、スーツ姿の店員さんがずらりと出てきて「ご来店ありがとうございました」と深々お辞儀をして客を見送るのが慣例となっている。
そのなかをボクは、半額お総菜の入ったレジ袋を引っさげて歩くわけだ。まるで自分が場違いな世界に紛れ込んでしまったような気がして、そわそわと気恥ずかしくなる。
一歩進むごとに店員さんからの丁寧なお辞儀を受け、何だか自分が「半額の王様」であるような気持ちになるのだった。
(了)
仮想通貨トレードで投入資金をすべて失ったボクが伝えたいこと
(なんてことだ。仮想通貨トレードで資金をすべて溶かしてしまったぞ……)
乱高下するビットコイン Air FXの板を眺めながら、ボクは椅子に腰を沈める。セミの抜け殻のように放心していた。ショーターを焼き払った火柱は一瞬で消え、気まぐれな悪魔の笑みを浮かべて今度はロンガーを薙ぎ払いにいった。
ボクの頭にはさまざまな後悔が過ぎった。
ネムをナンピンせずにすぐ手放してさえいれば。ビットコインを損切りせず持ち続けていれば。欲をかかずにあのときビットコインキャッシュを利確しておけば。チャットの怪情報に騙されなければ。損を取り返そうとAir FXに手を出したりしなければ――。
すべてが、後の祭りだった。
今朝は人身事故が多かったと聞く。株であれ、FXであれ、仮想通貨であれ、ギャンブルと呼ばれるものはすべてそうだけれども、そこでは時として命のやり取りがなされる。自己責任とはいえ、電子データーの数値の上下で人の運命、生き死にが決まるのは、なんともSFチックでディストピアな話かもしれない。
かのイケダハヤト氏は「まだ仮想通貨持ってないの?」というブログを運営し、あろうことかビットコインFXをオススメするという、恐ろしい事業をやり始めた。ビットコインのイケイケ相場も、そろそろ終わりだろうか。
仮想通貨トレードを絶対にやめろとまでは言わないが、投入資金を全部失ったボクからは、下記の三点を注意しておきたい。
1.投機は「失っても良い額」以上は賭けない
今こうしてボクが、ブログ記事を書くくらいの精神的余力を残しているのは、ひとえに投資金額そのものが少なかったからである。
大学生のとき2013年~2015年のアベノミクス相場で、ボクは株式投資で多くの資産を失ってしまった苦い経験がある。そのとき、自分が――いや人間の思考というものが――いかに気まぐれで、コントロールが難しく、思い通りにならない代物であるかを思い知った。
つまり、自分がバカであることを知った。
当時、卒業論文で行動経済学について研究していた。しかし株で大負けして分かったのは、結局のところ、自分がどれだけ投資家心理やプロスペクト理論に詳しく、冷静な判断に基づいて取引しているつもりであっても、決して自己の認知バイアスから逃れることはできないという残酷な事実であった。
仮想通貨投資を始めるとき、頭の中の99%は「よっしゃ! これで俺も億り人になってやるぜ!!」という謎の自信に満ちていたが、僅かに残った1%の理性が「全負けの可能性は十分にあり得るな……」と予測をしていた。
だから万が一、賭けた資金をすべて失ったとしても、精神的に納得はできる金額以上は投入しなかった。実際に「万が一」が起こり、判断は正解だった。
もし欲をかいて生活資金を使っていたならば、ボクは今ここにいなかったかもしれない。
ギャンブルは最初の賭け金を決める段階で勝負が決していると言っても過言ではなく、すなわち「負けたら人生が破滅する!」みたいなギャンブルは、実際にはお金ではなく自分の魂を差し出す行為に等しい。
もし含み損で精神的なダメージを受けているのであれば、それは最初から賭けてはいけないお金だったのだ。
自分の意思によって100%確実にコントロールできるのは「賭け金をいくらにするか」だけである。とにかくここで間違えてはいけない。
そのことが痛いほどによくわかった。
2.短期トレードによって失われる最も大きな資産は「時間」である
賭け金が少なかったので、金銭的ダメージは致命傷を避けられた。しかし考慮していなかったのが「時間」というかけがえのない資産である。
ボクはこのところ仮想通貨中毒になっていて、睡眠時間を削ってトレードをしたり、相場が気になって仕事が手につかなかったり、暴落の不安で眠れなかったり、むしろそちらの方が大ダメージだった。
寝不足と緊張がたたり体調を崩し、風邪を引いてしまった。
株取引をやっていたときは今の50倍以上の資金を動かしていた。だから自分がこれほどまでに消耗するとは思わなかった。
仮想通貨のボラティリティは株とは比較にならないほど大きく、ジェットコースター並みのスリルがある。
具体的に言えば、ビットコインキャッシュという仮想通貨はたった1日で価格が2倍に吊り上がり、その日のうちに値が半分に暴落した。ボクはその瞬間を目の当たりにしたが、この世の終わりを見たような気がした。
仮想通貨取引所のチャットでは、いろんな人が買い煽りや売り煽りのポジショントーク、それから株だったら絶対に逮捕されるレベルの「風説の流布」なんかを好き放題に投稿している。
仮想通貨は取引所によって値段が違うので、チャットの怪情報なんかでも釣られて買い板が動かされてしまう。チャットによる情報戦と板の読み合いで価格が変動するそれは、リアル人狼ゲームであり、ポーカーであり、ババ抜きであり、チキンレースでもあるのだが、脳内からドーパミンがドバドバと分泌されるのを実感することができる。
もちろんゲームと割り切ってしまえば面白いのだけれど、なんにせよネトゲ中毒と同等か、それ以上の中毒性が仮想通貨トレードにはある。
中毒に陥った結果、失われてしまうのは貴重な時間である。「トレードする暇があったら、働いてJPYマイニングした方が儲かる!」のはこの界隈ではよく知られた話だ。
3.取引所のサーバーを信じてはいけない
株やFXと、仮想通貨トレードとで大きく異なるのは「取引所」を信頼できない点にある。
相場加熱時には値が吹っ飛んでロンガーもショーターも焼き払われることがあるし、サーバーが落ちて損切りできないことだってある。
注文ボタンを押しても「現在は一時的に取引ができません」と表示され、注文が通らない。だから負けポジションを抱えたトレーダーは必死にF5キーや注文ボタンを連打して、なんとか逃げ切ろうとする。
ボクも昨日のあのときにボタンを押して注文が通ってさえいたのなら、30%の損失だけで抑えられていたというのに、まったく悔しい話である。
「相場加熱時に注文が通らない」は、ここ数日はわりと日常茶飯事で起きている。日本の複数の取引所でサーバーエラーがあり、韓国の取引所のサーバーも落ちたと聞く。
過去のこの記事ではZaifを取り上げたが、Zaifに限った話ではなく、仮想通貨取引所のサーバーを信じてはいけない。
多分、SBIが仮想通貨取引所を開いたら、少なくないトレーダーがそちらに移動するのではないかと思う。仮想通貨取引所はまだまだ発展途上の段階にある。
終わりに
ひとつだけアドバイスを。
ギャンブルに限らないが「損した分を取り返さなきゃ!」という思考になると大抵は負けてしまう。投資は「損したことを忘れて眠る」のが良い戦略で、投機は「損をする前提でトレードする」のが大切である。
おそらく今後「仮想通貨で○○万円儲かりました!」みたいな記事が、はてなブックマークにも上がってくるだろうと思う。そのときに頭の片隅にでも、この記事のことを思い出してくれたなら幸いである。
なお、当記事中の文章のいくつかは、ツイッターで呟いたツイートをそのまま抜粋している。
当記事の筆者に興味のある方はボク(五条ダン (@5jDan) | Twitter)のツイッターアカウントをフォローしていただけたなら嬉しく思う。
ただ仮想通貨トレーダーは引退、もとい退場させられたので、今後トレードに関するツイートをすることはないです。もしそれっぽいツイートをしていたらたぶん闇堕ちしてしまっているので、どうか全力で止めてほしい。
(了)