Webライターとして生きる

五条ダンのブログ。「楽しく書く」ための実践的方法論を研究する。

好きになったキャラが幸せになれない問題

 卵が先か、鶏が先かの問題になってしまうのだけれど、ボクの好きになったキャラクターに限って幸せになれない。推しキャラが悲劇的な顛末を迎える物語にこれまで多々出くわし、つらい。

 失恋する。闇堕ちする。夢を叶えぬままに死んでゆく。切ない笑顔を最期に見せて、この世を去ってしまう。

 そういった《報われない系》のキャラクターばかりに感情移入してしまって、とてもつらい。アニメを観たり漫画を読んだりするたびに喪失感を味わっている気がする。

 某魔法少女アニメではボクが好きになった順番にヒロインが死んでいって「おいふざけんなよ!!」と思った。

 よく少女漫画のヒロインが「わたしが好きになった人はみんないなくなってしまうの。だからもう誰も好きにならないし、誰も愛さない」みたいな台詞を口にする。まさにそんな気持ちだ。

 あるいは「こんなつらい気持ちになるならば、はじめから恋なんてしなければ良かった」のように、(くっ……あのとき3話で切っておけば良かった……)と悔やむ。

 無論、それほどに感情移入をさせる優れた作品であることの裏返し表現と受け取って欲しい。出来の悪い悲劇からは、悲しみも後悔も生まれないのだから。

 たとえ虚構であったとしても、そこから得た感情はまぎれもなく、本物だ。

 創作は、感情の錬金術である。

 さておき、今期アニメで最も安心して楽しめたのが『ゾンビランドサガ』だった。最初は佐賀県のPRアニメかー、とさして気にも留めていなかったが、これがとんでもないダークホースで、今期の覇権にふさわしい素晴らしさであった。

 アイドルモノだがヒロインは全員死んでおり、ゾンビになっている。夢半ばで壮絶な死を遂げた悲劇的なヒロインたちが集まるものの、コメディをベースに観客を笑わせ、しかし肝心なところではきっちり泣かせる、絶妙なさじ加減でギャグとシリアスを使い分ける傑作だった。

 ゾンビランドサガは見方によっては《悲劇を越えた先にあるもの》を描いた作品だった。

 夢を叶えられず生を終えたヒロインがゾンビとして蘇る。それは悲劇からの救済であり、運命に対する逆襲である。

 ゾンビランドサガのオープニングでは、つぎの前口上が語られる。

死んでも夢を叶えたい! いいえ、死んでも夢は叶えられる!

それは絶望?それとも希望?

過酷な運命乗り越えて、脈がなくても突き進む!

それが私たちのサガだから!

  ゾンビランドサガは、悲劇系ヒロインばかり好きになってしまい打ちひしがれていたボクに、ひとつの希望をもたらしてくれたように思う。

 命を散らしていった推しキャラがいつの日かゾンビとして復活し、生前の夢を叶える未来を切に願いたい。

(了)

SSSS.GRIDMANの最終話がボクに突きつけてきた残酷なメッセージについて

 もちろんこの記事にはSSSS.GRIDMANの最終話ネタバレが含まれるため未視聴の人は回避してほしい。

 と警告しておきながらさっそく本題に入るけれども、結局のところあれは『自身の創作物によって自己を救うことはできるか』『創作による自己救済は可能なのか』という問いかけを秘めた物語で、言うまでもなく新条アカネはこちら側(・・・・)の人間である。

  こちら側、つまり新条アカネは物語の演者である以前に、虚構世界を創作する側の人間であった。

 ボクは就活に失敗してメンタルが死にかけていた頃に、小説をひたすら書きまくった。誰に読ませるためでも誰に評価されるためでもない、自己救済のための小説だ。合計すると10作くらい書いた。

 地球に隕石が落ちて主人公が夢を叶えられないままに死んでゆく話だとか、入社式に行ったら自分はすでに死んでいてそこは冥界だった話だとか、就活で挫折して引きこもりになった男が虫のバケモノになった話だとか、人類が自殺ウイルスに感染して滅亡に向かうなか主人公がハローワークに行く話だとか、いろいろ書いた。ひどいやつをたくさん書いた。ボクはただ、自分の書く物語によって自分自身を救いたかった。

 そのために、虚構の世界でたくさんの人を殺したし、街を壊した。そして登場人物が気に入らなければリライトをしてそのキャラ自体を《存在しなかった》ことにした。何度も創っては壊した。

 ボツになった設定資料、未完の原稿、破綻したプロット、たくさんの出来損ないのデーターが次から次へと生み出されて、自分の周りは創作物の残骸を入れたゴミ袋でいっぱいになった。身動きの取れないゴミ屋敷だ。

 原稿を書いていると、時たま作中のキャラクターが「お兄ちゃん、こんな不毛なことはやめてもう一度就活に挑戦しようよ」と説教をしてきた。頭にきたボクは創作世界にナメクジオバケを解き放って彼女を死なせた。

 身勝手な神様のせいで、人が生まれ、世界が動き出す。そして人が死に、世界が壊れる。目的を果たすまで何度も何度も、新しい物語は生まれ続ける。

 自身の創作物によって自己を救うことはできるか。

 創作による自己救済は可能なのか。

 

 新条アカネは、ボク自身である。

 彼女が負の感情から怪獣を生み出したように、負の感情は得てして創作に昇華される。

 ボクの書く物語には、裕太や六花や内海はいるのだろうか。あるいは生みの親である作者に反旗を翻して立ち向かってくれるアンチ君はいるのだろうか。

 

 

 お願いだ――、助けてくれ、グリッドマン――。

(了)

文字単価0.1円で発注されるライティングタスク案件の正体

ランサーズやクラウドワークス等では「1文字単価0.1円」を下回るライティングタスク案件が数多く見つかる。

僕の平均筆速は時速1,600文字程度だから、これでは時給160円しか稼げない。小説家トップクラスの速筆を誇る森博嗣さんでさえ、1時間に進める原稿は6,000文字くらいだとインタビューで答えている。*1

すなわち、文字単価0.1円の案件というのは、常人はもちろん神様レベルの速筆家でも最低賃金を上回ることが不可能な案件であると言える。

しかしながら、このような低単価ライティングタスクは思いの外人気が高く、発注者が設定した作業枠がすべて埋まることも珍しくない。

なぜかというと、受注のハードルがとても低く、クライアントとのコミュニケーションコストも発生しないからだ。

提出した記事はクオリティが低くともほとんどの場合で承認される。修正指示が飛んでくる心配もない。

発注者側も文字単価0.1円で募集をかける以上、記事のクオリティは一切求めていない。「一切求めていない」とまで断言してしまうのは、その記事の利用用途ゆえんである。

ゾンビブログはどのようにして生まれるか

にわかに信じられないかもしれないが、古典的なブラックハットSEOは今なお健在である。古典的なブラックハットSEOとはすなわち「被リンクの偽装」だ。

"Content is King" , "SXO"(ユーザー体験最適化)の時代においても、被リンク獲得数は未だ検索順位に影響を与える。たくさんのサイトやブログからリンクを貼られたコンテンツを検索エンジンは「信頼できる」と判断し、検索結果の上位に表示する。

そこでブラック・アフィリエイターたちは

  1. メインサイト(アフィリエイトで稼ぐサイト)
  2. サテライトサイト(メインサイトにリンクを送る用のサイト)
  3. ゾンビブログ(サテライトサイトにリンクを送る用のサイト)

の多段ピラミッド構造にサイトを分け、メインサイトがさも自然な被リンクを獲得しているかのように検索エンジンに誤認させる。

もちろんこれは、Googleの策定する『品質に関するガイドライン』違反である。*2

2013年頃に、僕は『新卒者就職応援プロジェクト』という経済産業省の就職支援制度(インターンシップ)を利用していた。

そこで紹介された実習先企業が、上記のブラックハットSEOをやっていたアフィリエイト事業法人であった。

その企業では5名ほどの実習生を受け入れ、Web制作の練習と称して被リンクスパム用のゾンビブログを大量生産させていた。僕は実習生としてそこで数ヶ月働いていた。

毎日(IPアドレスを変えて)大量のメールアドレスとブログアカウントを取得する。自動ライティングツールやクラウドソーシング経由で入手した記事をブログに貼り付け、ブログがインデックスされたらサテライトサイトへのリンクを送る。

読者に決して読まれることのない、被リンク獲得のためだけの無味乾燥な文章の羅列。ゾンビブログの数は、自分の担当分だけでも1000を軽く超えていた。

国の助成金が結果的にはブラックハットSEOの会社に悪用されていたというわけである。

さておき、冒頭に挙げた「文字単価0.1円のライティングタスク」は往々にして、ゾンビブログ生成のために使われている。だから記事のクオリティなんてどうでも良いし、キーワードの入ったオリジナルの文章でさえあれば何でも良いのだ。

こんな小手先のSEOは、とっくに過去の遺物となったものだと思っていた。

そうであればどんなに良かったか。

2018年12月現在、ライティングタスクの追跡調査を独自に行ったところ「ゾンビブログ案件」は未だ健在であった。

クラウドソーシングの闇はまだまだ深い。

(了)

挫折、敗北、失敗、虚無感、悲しみ、およそこれらの絶望についての話

仕事やプライベートでつらいことが続き、キーボードは一打鍵が鉛のように重く、筆はナメクジが這うよりも進まない。顔が濡れ、愛と勇気を失い、そのうえジャムおじさんとバタコさんから見捨てられたアンパンマンのごとく、生きる力が根こそぎ奪われている。

3年間にわたり仕事として引き受けてきた、あるプロジェクトがご破算となった。

これまで私が設計・運営に携わった数十のウェブサイトが消えた。書いてきた数百の記事コンテンツが消えた。海の藻屑となって消えてしまった。跡形もなく消えてしまった。

よくあることだし、これ自体が悲しみの原因というわけでもない。ただ、「このサイトにアクセスできません(ERR_NAME_NOT_RESOLVED)」の真っ白な画面を眺めていたら、操り人形の糸がプツンと切れる音がした。

〆切に追われて胃をキリキリと痛めた日々だとか、理不尽な修正指示に耐え続けた結果が、この真っ白な《無》だったというだけだ。特段珍しいことではないし、過去に経験がないわけでもない。

ただなんというか、私はまだ就職活動での失敗を引きずっているのだと思った。内定を得ることは、学生が社会人になるための通過儀礼である。イニシエーションを乗り越えられなかった若者は周囲から見下されるし、良くても憐れまれる。

就活で失敗をすると、他者から認められること、社会人として評価されることのハードルがものすごく上がってしまう。

しばしば「就活をやめてプロブロガーになります!」「新卒でフリーランスになります!」とブログで宣言した人が、はてなブックマークのコメントでこてんぱんに叩かれているが、本人としては相当に辛いのではないか。

彼らの多くがおそらくは「サラリーマンにならなかった」わけではなく「サラリーマンになれなかった」のであり、自ら好んでレールを外れたというよりは、やむなくレールを外れざるを得なかったのだろうから。

もっとも、このあたりの恨み嫉みを述べるとそれはただのルサンチマンであるし、精神的に健全であるとは言えない。

なんにせよ、成功体験を積み上げられない挫折続きの人生では、自己肯定感を育むことができず、危ういことになる。

恨み、憎しみ、わななき、怖れ、止むなくもつらき労働の冬は、

今し、ふたたび、わが身のうちに、帰り来らんとし、

北極の地獄に落ちし太陽に似て、わが心は、

凍りたる赤色の、一塊に過ぎざらんとす。

 

(引用:「ボードレール詩集」秋の歌より抜粋/堀口大學 訳/1951年 新潮文庫 p.75)

デカダンス(退廃主義)は芸術に昇華できるのなら美しく人の心を打つ。しかし昇華できないのなら朽ち果てたカラスの死骸も同然である。虚無や絶望に酔いしれ、溺れないようにしたい。

 

高校バドミントン部を題材としたスポーツ漫画「はねバド!」では、主人公が他者に対してリスペクトを持てずに悩むシーンが描かれる。

主人公の悩みに対してコーチは、本人が他者へのリスペクトが持てないと言うのならば、無理にリスペクトを持たせることに意味はない、と考える。

その上で「競技そのものに対してリスペクトを持て」とアドバイスをする。バドミントンが好きで、バドミントンそのものにリスペクトが持てるようになれば、やがてはバドミントンに携わるすべての人を愛せるようになるだろう、と。

これは自己肯定感が欠如する人にも同じことが言える。自分で自分を認められない、信じられない、好きになれない。肯定できない。

そんなときは、自己からひとまず目を離して、愛するものに目を向けたい。

私は自分の書くものには自信が持てないが、創作そのものを愛している。

失敗や挫折が重なり、自己嫌悪と自己不信が渦巻くなか、たとえ自分を信じることができなくとも、自分が心から愛するものに目を向け、その愛する気持ちと、それを愛する自分を信じて、前に進みたい。

(了)

自転車用の「暗証番号ボタン式リング錠」がかなり便利だった話

今年の《もっとはやく買っておけば良かった!便利アイテム》の優勝候補が、GORINから販売されている『Vブレーキ用リング錠 BLACK GR-523』だ。これは本当に、あと3年、いや10年くらい早くに買っておけば良かったと後悔した。

GORIN Vブレーキ用リング錠 BLACK GR-523

GORIN Vブレーキ用リング錠 BLACK GR-523

GORIN GR-523はクロスバイク用のリング錠だ。

その特徴としては「鍵が不要」であること。

キーレス式で、四桁の暗証番号のボタンを押すことで解錠できる。なおVブレーキではない一般的な街乗り自転車用のタイプも販売されている。

写真のように後輪のVブレーキ部分に簡単に取り付けられる。

四桁の暗証番号は元から決まっており、自分で設定したり変更したりすることはできない。また、番号を押す順番も関係がなく、とにかく4つの番号が合っていればOKというタイプ。

10個の数字ボタンのうち4つの数字ボタンを押して解錠する。つまり組み合わせは10C4で、210通りとなる。万が一暗証番号を忘れても力技でロックを突破することは可能だ。(もちろんリング錠そのものを取り外した方が早いが)

「暗証番号ボタン式リング錠」のメリット

自転車の鍵を探す手間から解放される

本製品のメリットはひとえにこの一点のみに集約される。

ボクも片付けるのが下手なタイプで、物をよく無くしてしまう。自転車の鍵はまさに無くしやすいものの典型例で、急いでいるときに限って自転車の鍵が家のどこにも見当たらない。

自転車の鍵が見つからなくて、かれこれ30分以上家中を探し回った結果「ポケットに入ってるじゃねーか!!!」とずっこけた回数も数え切れない。

あるいは外出先から戻って駐輪場に停めた自転車を取り出そうとしたときにも、鍵が見つからないことがよくある。大抵はカバンの奥底の隙間に入り込んでいたりするのだが、見つけるのに随分な時間がかかってしまう。

そういった「自転車の鍵が見つからない!!」といったトラブルから解放してくれるのがこの暗証番号ボタン式リング錠の素晴らしさだ。

自転車の鍵が毎回見つからなくてイライラさせられている人には、本製品を心からおすすめしたい。

デメリットはセキュリティの低さ

4桁の暗証番号があるとはいえ、組み合わせはたったの210通り。セキュリティはお世辞にも高いとは言えないです。高級なロードバイクやクロスバイクでは、本製品のような簡単にロックが外れてしまう鍵の単体使用は推奨できないです。盗難される危険性があります。

加えて、暗証番号タイプのリング錠は

  • ロックをかけ忘れやすい
  • 解錠後、凹んだボタンを元に戻さないと他者から暗証番号が丸わかりになる

といった欠点がある。

ボクが使っているクロスバイクは街乗り用のめちゃくちゃ安いやつなので、盗難されるリスクは低いと考えている。しかし高級自転車では上記のようなデメリットがあることは知っておきたい。

なお上記製品は、Vブレーキ装着車(クロスバイク等)専用で、それ以外の自転車には取り付けられないため注意。

いわゆるママチャリ用の暗証番号タイプリング錠であれば「GORIN ボタン式リング錠 GR-500 K」か「GORIN ボタン式リング錠 GR-520 SL」が対応製品となる。(いずれもリンク先はAmazon)

以上、暗証番号タイプのリング錠は私的になかなか便利で良かったという話でした。

(了)

米国VI(恐怖指数)の長期ショートは「やめたほうがいい」という話

本来、恐怖指数のCFD取引なんてものは超上級者向けのトレードであるのだが、このところにわかに人気を集めている。

米国VIの長期ショートは勝率が高くて期待利回りも高く、リスクも低く抑えられる!」とメリットを謳うブログが散見される。

しかし騙されてはいけない。世の中にローリスク・ハイリターンな都合の良い投資先など存在しない。少なくとも一般投資家がリーチできる範囲内には。

米国VIの長期ショートを考えている人は、これを見てほしい。

GMOクリック証券からのロスカット執行メール

先日2018年10月11日のNYダウ暴落騒動のときにGMOクリック証券から届いた、恐怖のロスカット執行メールである。恐怖指数の急騰を受けて、米国VIのショートポジションが3つもロスカットされてしまった。

米国VI長期ショートのデメリットを下記に挙げていく。

【罠その1】恐怖指数はどこまで上がるか分からない

巷の情報サイトでは

「米国VIのショートはロスカット値を80以上に設定しておけばリーマンショック級の金融恐慌でも耐えられるので安心!」

といったようなことが書かれているが、これは安心でもなんでもない。

たしかに、1993年以来の恐怖指数の史上最高値はリーマンショック時(2008年11月)の「89.53/※VI値は 72.80」が最高である。

でもこれは、たまたま偶然に、リーマンショックのときは米国VIが 72.80 までしか上がらなかったという過去の事実に過ぎない。

もしかしたら 100を超えていたかもしれないし、それ以上だったかもしれない。

ちょっと考えてみてほしい。もしもあなたが、リーマンショック以前から米国VIの長期ショート戦略を取っていれば、過去のデータからこのように考えたはずである。

(恐怖指数の高値は、1997年のアジア通貨危機のときが 48.64 、翌年のロシアデフォルトで 49.53、2001年のアメリカ同時多発テロ事件のときでさえ 49.35 が最高値だった。市場に大きなパニックがあっても恐怖指数は 50 を超えたことが一度もない。

余裕を見て、ロスカットレートは 60 あたりに設定しておけばまず安全だろう。)

ほら、過去のデータは当てにならない。実際、1987年のブラック・マンデーのときにVIX指数が存在したならば、リーマンショック時の最高値を軽く超えていただろうという話もある。

万が一の際にも安全なロスカットレートを見極めるためには 恐怖指数 - Wikipedia に掲載されているVIX指数の算出式を理解し「理論上はこの数値以上にはなり得ない」と言えなければならない。

もちろん僕には恐怖指数の算出式は意味不明で、さっぱり理解できない。数Ⅲの勉強を疎かにしていたことを心底後悔している。

【罠その2】米国VIの長期投資は「宝くじ」の正反対である

もしかしたらこのように考えるかもしれない。

「ロスカットレートをリーマンショック時の2倍(140くらい)に設定しておけば、ロスカットにかかる確率など万に一つしかないのだから、米国VIの長期ショート戦略は極めて期待値の高い投資手法なのでは?」

たしかにそのとおりだ。

それゆえに厄介だともいえる。

なぜならば、これは「宝くじの正反対」だからである。

宝くじはほとんどの確率で外れを引いて投資元本を失う。その代わりに万に一つもない確率で大金を得ることができる。

対して、米国VIの長期ショートはほとんどの確率で勝つことができ、ロスカットレートを100以上に設定しても年利5~10%となかなかの成績で運用できる。その代わりに、リーマンショックをはるかに超える万が一の金融恐慌が起これば、投資元本をすべて失う。

さて、この「逆」宝くじを我々は買うべきだろうか。

【罠その3】そもそもメンタルが含み損に耐えられない

高値圏で S&P500 を買っていたインデックス投資家は、リーマンショックのときにマイナス50%もの含み損に耐えなければならなかった。当時のことは知らないが、おそらくセンセーショナルな報道が連日なされただろうし、人々は悲観に明け暮れていただろう。金融市場の終焉を信じた人も少なくなかったはずだ。

そのなかでなおポジションを手放さず S&P500 に積立投資を続けられるのは、とてもメンタルの強い投資家だけだった。米国経済の回復と成長を信じて貫いた人だけが、絶好の買い場を自分のものにできた。

さて、もはや言うまでもないことだが、リーマンショックのときに S&P500インデックスを持ち続けるよりも、米国VIのショートポジションを持ち続ける方がはるかにメンタルをやられる。

たとえロスカット値を100に設定していたとしても含み損はマイナス70%を超え(その上、恐怖指数はどこまで上がるか分からないので)追加の証拠金投入を迫られる。

米国VIが大きく値動きするのは米国市場がオープンしている夜間であるから、不安で眠れたものではないだろう。

もしもリーマンショック時に米国VIを 25 でショートしていた場合、含み損は2008年9月から翌年5月頃まで解消されない。

およそ8ヶ月もの間、耐えられるだろうか。ジェットコースターのような恐怖指数の値動きと、迫りくるロスカット、広がる含み損、悲観的な報道、不況……。

耐える自信がないのなら、米国VIの長期ショートはすべきではない。年利10%で資産を増やすことよりも、健全なメンタルを保つことのほうがずっと価値のあることだ。

【罠その4】ポジショントークに騙されないように

ここまで読んでくださった方ならば、米国VI長期ショートの隠れたデメリット、恐ろしさに気づいていただけたかと思う。

米国VI長期ショートは、たしかに勝率が高い。だが、ローリスクとは言えない。

年利 5%程度で良いならば S&P500インデックスに長期投資するので十分だ。たとえ暴落して含み損を抱えることになっても、そちらの方がメンタル的にはマシである。

投資初心者の人に対して米国VIショートを勧めているような情報サイトは、ある意味ポジショントークなところがあり、GMOクリック証券の口座開設をさせてアフィリエイト報酬を得ることを目的としている。

もちろん、サイト運営者の方を批判するつもりは一切ない。投資は自己責任の上で各々が自由に判断し、楽しんだら良いものと思う。

ただ、ツイッターなんかを見ていても不用意に米国VIショートを始める人が散見される。警鐘を鳴らす意味で、今回はリスクとデメリットをご紹介させて頂いた。

かくいう僕自身もCFDで下手なトレードをしたせいで今現在は多くの損失を抱えており、

たすけて……:;(∩´﹏`∩);:

って感じで今部屋の片隅に座り込んでガタガタ震えている。

浅はかで愚かなトレードをして後悔している僕みたいにならないよう、反面教師としていただけたら幸いだ。

(了)

【悲報】CFDトレーダー引退のお知らせ(フラグ回収)

【前回のあらすじ】

ヒャッハーーー!!

CFDトレードで 16連勝を果たしたぜ!!

我が天才的な頭脳と神がかった直感をもってすれば恐れるものは何もない。

かくなる次の一手は、日経225の全力ショート!!!!

総裁選は終わった、円安は進み過ぎている。FRBの利上げシナリオに暗雲が漂いトランプ大統領が高らかに円安批判演説を始めれば為替には大きな調整が入り、不自然に釣り上げられた日経平均株価は奈落の底だぜ。知らんけど。

よーし、乗るしかない、このビッグショートに!!!!!

と丁寧なフラグを立てたのが下の前回の記事。

 

あれからどうなったのだろうと心配していた読者さんがいらっしゃるかもしれない。

安心してほしい。

フラグは無事に回収した。

(GMOクリック証券 CFD口座)

収支がちょうどプラマイゼロになるあたりで設定した逆指値に引っかかり、口座を見に行った頃にはポジションが決済されていた。

成績は「16勝 3敗」

回数では勝ち越しているもののトータル利益は「-279円」で負けとなった。

これはまさにコツコツ勝ってドカンと負ける、典型的な敗北パターンだ。プロスペクト理論における認知バイアスの罠に囚われた、トレーダーのありふれた末路である。

今回、トレードのために投入した金額は 5万円だった。

16連勝を果たして 5万円は 6万5千円になった。しかし、たった3回の負けで 49,721円に減ってしまった。

ボクはCFD口座にお金を入れるときから(どうせ自分のことだから途中で調子に乗って大負けするんだろうな……)と予測していたから、大金は入れなかったし、逆指値の保険により被害を 279円で済ますことができた。

 

では、もしもCFDによる資産運用を本気で考え、500万円を投入していたらどうなっていただろうか。

そう、500万円 → 650万円 → 497万円 と手持ちの時価評価額が揺れ動くわけである。これに耐えられるメンタルを持った人間は、なかなかいない。

資産を投資で運用するのは構わないが、投機で運用してはいけないわけである。

投資と投機の違い

投資と投機の違いは、それが「ポジティブサムゲーム」か「ゼロサムゲーム」かである。

明日の S&P500(米国株価指数)がプラスになるかマイナスになるかは誰にも予想できない。指数トレードをして勝ったのであれば、それと同じだけの敗北者がいる。誰かが得をした分だけ、誰かが損をしている。それがゼロサムゲームの世界だ。

一方で、30年、50年と長いスパンで見たときに、第四次産業革命が起こり人類経済がより発展を遂げ、その中心となる米国企業がそれに見合った収益を上げるのであれば、S&P500は長期的に右肩上がりとなる。

米国市場に長期投資をしていた人間は、全員が利益を手にする。素晴らしきポジティブサムゲームだ。

もっとも、「金融恐慌の真っ只中で自分は死ぬかもしれない」「地球環境の致命的な悪化が資本主義を脅かすかもしれない」可能性は大いにあり、ポジティブサムゲームだからといって勝てるとは限らない。(けれども不安になっていても何も解決しない)

投機は人々の「時間」を奪う

投機が投資と決定的に異なるのは、それが人々の時間を奪うところである。投機は時間泥棒だ。

先物取引をしていれば否が応でも決済期限が気になるし、期限のないCFD取引だってレバレッジをかけていれば毎朝チャートを確認せずにはいられない。

どのタイミングで買って、どのタイミングで売り払うのか。為替レートや経済ニュースを絶えずチェックし、ポジションに頭を悩ませる。

判断する機会が多ければ多いほどに、我々は投機によって貴重な時間を失う。それは二度と戻ってくることがないものである。

ボクは今回のCFDトレードで279円の損失を出し、引退するに至った。けれども損失を出したこと自体はどうでもよく、問題なのは時間を浪費してしまったことだ。

これが適切な「投資」であったならば、時間が奪われることはない。年に1回リバランスをするくらいで、あとはほったらかし。チャートも見ない。

「自分が判断する機会」を限りなく減らし、そもそも投資したことなんか忘れてしまうのが理想といえる。目の前の仕事や生活に集中し、今この瞬間を楽しめるように生きたいものだ。

恐ろしい「投機」の時代が始まる

以上、よくある自己啓発書やビジネス書に書いてあるようなことを長々述べてしまった。自戒を込めて、というよりも自分に言い聞かせるつもりで書いている。

ところで「まだ仮想通貨持ってないの?」というブログを運営し、数多くの読者を仮想通貨沼にいざなった著名ブロガー、イケダハヤト氏が今度は「トライオートFX」に着目している。

彼は「日本一のFXブロガーになります!」と宣言し、FXの自動トレードを初心者に勧める記事を量産し始めている。

ボクは、イケダハヤト氏のアーリーアダプターとしての才覚は、純粋に評価している。おそらく本当に「トライオートFX」とやらはこれから大ブームになり、彼も日本一のFXブロガーになるのだと思う。(恐ろしい恐ろしい……)

投機沼に足を突っ込んで溺れるボクみたいな失敗をしないよう、どうかくれぐれも注意してほしい。

(了)

【ポートフォリオ公開】米国株ETF「QQQ」や「HDV」を保有して得る心理的効用について

ボクにはひとつの投資哲学があって、これは小説を書くときのテーマでもあるのだが「未来は分からない」繰り返そう、《未来は分からない》を個人的に信仰している。換言すれば、未来の不確実性に希望を見いだしている。

余談。ギリシア神話における「パンドラの箱」に残された最後の災厄は《予知》である。人類は予知能力を手にすることがなかったからこそ、災禍に荒れるセカイのなかでも生きる希望を捨てなかった。

未来が分からないのは、素晴らしい。ワクワクする。

未来が分からない前提において投資方針に優劣はない

今この文章を読んでいる読者さんでも、投資方針は十人十色だと思う。

  • 国内外の株式・債券・不動産・ゴールドに均等分散投資をする人
  • VT(Vanguard Total World Stock ETF)で世界経済の発展に賭ける人
  • VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)で米国市場の発展に賭ける人
  • AMZN(アマゾン)に全力投資の人
  • 仮想通貨XRP(リップル)に全力投資の人
  • CFDで米国VIのショート戦略を取っている人

未来が不確実である前提において、何に投資するのが最善であるかは、そのときになってみないと分からない。

ただひとつだけ言えるのは、あなたが自分の意思によって決めたその投資対象は、あなたを《幸せな気持ち》にさせるべく選ばれたということだ。

「心の会計」は人間の経済的不合理性を指すときに使われる言葉だけれども、案外「心が幸せになること」は侮れない。ボクは、自身の心理的効用を最大化させるべくポートフォリオを組んでいる。

異端の米国株ETFポートフォリオを公開

昨年からはこんな感じのポートフォリオで資産運用している。

QQQ(インベスコ QQQ トラスト シリーズ ETF)

VHT(バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF)

XLP(生活必需品セレクトセクターSPDRファンド)

VYM(バンガード 米国高配当株式ETF)

HDV(iシェアーズ コア 米国高配当株 ETF)

※各20%ずつ保有

このポートフォリオの意図をひとことで言うならば、

「情報技術セクター・ヘルスケアセクター・生活必需品セクター・高配当株・Google & Amazon が長期的に見てS&P500(米国市場平均)をアウトパフォームするだろう」

とボクが勝手に思い込んで組み上げたものである。

ただ正直なところ分散させ過ぎたなと思っており、もっとシンプルにQQQ(情報技術)・VHT(ヘルスケア)・XLP(生活必需品)で3セクター均等分散させた方が良かったかもしれない。分散させればさせるほど結局は市場平均に近づいてしまい、面白みに欠ける。 

5銘柄を選んだ理由

QQQ、VHT、XLP、VYM、HDVの5銘柄を選んだ理由について、下記に簡単に記しておきたい。

ちなみに「5つのETF」に絞った理由は、ボクが《五条ダン》というペンネームで活動しており、純粋に資産を《五つ》に分けて運用するのが心理的に気持ち良かったからである。じつに馬鹿げた理由だ。

QQQ(情報技術+α)

QQQは「情報技術セクター」に投資がしたくて組み入れた。

VGT( バンガード・米国情報技術セクターETF)の方を選ばなかったのは、ボクが iPhone よりも Android 派であり、Mac よりも Windows 派であり、Safari よりも Chrome 派であり、つまるところAppleよりもGoogleの方が好きだからである。じつにしょうもない理由だ。

(注釈)

VGTはかつてアルファベット(Google)とフェイスブックが上位構成銘柄であったが、この2大企業は2018年のMSCIセクター変更で「コミュニケーション・サービス・セクター」に移されてしまう。つまりVGTの投資対象からは外れ、代わりにアップル(AAPL)の割合が20%近くに上昇することが見込まれている。(記事執筆時点では18.16%)

ついでに、QQQに含まれるAmazon社が世界を掌握する可能性にも賭けている。

VHT(ヘルスケア)

こんなことを言ったら笑われるだろうが、「不老不死の薬」を完成させる夢に賭けている。VHTで投資できる約360社のうちのどれかひとつが、もしもワンチャン不老不死薬の開発に成功したならば、世界中の富を(ほしいまま)にだってできるだろう。

さすがに不老不死は言い過ぎだとしても、ゲノム医療・遺伝子治療・再生医療といった最先端の医学が切り拓く未来の可能性を信じたい。

 

HDV(高配当)

HDVは売買回転率が高く構成銘柄をコロコロ入れ替える異色のETF。とてもユニークで面白い。S&P500を上回る未来はイメージできないけれども、一方で金融恐慌時には鉄壁のディフェンスを見せてくれそう。市場暴落時のHDVの動きをぜひ間近で見てみたい。

下げ相場のときにHDVを持っていたらワクワクしそう!といった、じつに子供じみた発想で組み入れた。

こんな調子で続くので、XLPとVYMについては割愛したい。

プーさんの風船と米国株ETFとではどちらに価値があるか

今回こんな記事を書いたのは、自分の銘柄選定の正しさや優位性を証明したいからではない(むしろ正反対)。ボクがいかに非合理的に、自分の感情を優先させて銘柄を選んだかを知ってほしかったからだ。

前置きが長かった。

そろそろ本題に入ろう。

 

 

 

 

 

現在上映中の『プーと大人になった僕』を観てきた。

 

とても良かった。

 

www.youtube.com

ネタバレはしないがどのくらい良かったかと言うと、見終わった直後にウォルト・ディズニー(DIS)の株を個別で買ってやろうかと思ったほどである。

それで映画を観ながらずっと考えていたのは、プーさんの持っているただの赤い風船と、ボクが持っている米国株ETFとではどちらの価値が高いのだろうということだ。

僕らは投資対象を選ぶとき、それがどれだけの経済的リターンをもたらすかで価値を判断している。

しかしここで見過ごされるのが「時間的損失」と「心理的効用」の2つの存在である。

例えばボクが日本株の信用取引でデイトレードをしていた頃、それなりに儲かっていた(時期もあった……)が、朝から昼までチャートに釘付けになっていなければならなかったし、それによる時間的損失は計り知れない。そして二度と戻ってこない。

仮想通貨投資をしていた頃もやはり結構儲かっていた(時期もあった……)が、1日に10回以上はビットコインの値動きをチェックしていなければ、不安で仕方がなく仕事に集中することもできなかった。

米国株ETFに投資し始めてからは「長期投資に債券は不要なのか」「新興国株は逆張りチャンスなのか」「優先株式とはなんぞや」みたいな情報をネットサーフィンするのでついつい夜更かししてしまい、寝不足の日が続いた。

いずれも失ったものは時間であり、おそらくはその時間で勉強なり読書なりお絵描きなりしていた方が遥かに有意義であった。

※もちろんデイトレードやビットコインをホールドするのが自分にとって楽しい時間であるならば全然構わない。

 

プーさんの風船には素晴らしい利点があって、それは風船を持っているだけで幸せで、楽しい気分になれることだ。

1000万円分の金融商品を持ってソワソワしたりイライラしたりするよりも、100円の風船を手にして楽しく遊んでいる方が心理的効用はずっと高い。

だからボクは、たとえ含み損になってもワクワクして持っていられるかどうかで、銘柄を選んでいる。銘柄紹介時に「気持ち良い・好き・夢がある・面白い」といった感情語句が頻出したのはそのため。

(※本当に含み損でワクワクしていられるかはその時になってみないと分からないが)

これは特別なことでも変わったことでもない。投資家は誰しも多かれ少なかれ、無意識的に投資対象を決めているのかもしれない。

自分の心理的効用を最大化させるべく。

幸せになれる風船を探して――。

 

以上、プーさんの映画良かったよ!というお話でした。

(了)

CFD取引で16連勝して得た利益など簡単に吹き飛ぶという話

2017年に仮想通貨FXを始めてすっかりギャンブル中毒となったボクは、18年のコインチェック流出事件とビットコイン大暴落騒動が起きたあとも熱が冷めずに、投機の新天地を求めて彷徨うがごとくGMOクリック証券のCFD口座を開設していた。

CFD取引では日本、米国、新興国等の株価指数や、原油価格、金価格、面白いところでは恐怖指数(VIX)に対してポジションを建てられる。株と違って夜間もトレードができ、先物と違って期限もない。CFDは「株版のFX」と呼ばれているそうだ。

ちょうどその頃ボクはAmazon Prime Videoで『マネー・ショート華麗なる大逆転』のドキュメンタリー映画を観てしまっており、スーパーマンを夢見る無垢な子どものようにショート(空売り)に憧れていた。


マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)/Amazon Prime Video

サブプライム問題の本質をいち早く見抜きリーマンショックでボロ儲けした投資家たちの話。原題の『The Big Short』や原作の『世紀の空売り』の方が聞き覚えがあるかもしれない。

The Big Short という題からてっきり株式を空売りするのかと思いこんでいたのだが、まったく見ず知らずの金融商品が作中で登場して(ふぁっ!?)となり、自分がリーマンショックをまったく理解していなかったことを思い知らされた。恐ろしい恐ろしい。閑話休題。

さておき、CFD取引の結果は順調で、なんと無敗で16連勝もしてしまった。

日経225をショートしたり新興国ブル3倍ETFをショートしたり米国VIをショートしたり、とにかくショートしかしてないがすべて勝った。

ヒャッッハアアアァァァ!!!! ボクは天才トレーダーだぜ、もう何も怖くない!!!!! 今までは様子見で少資金しか入れていなかったが、レバレッジを引き上げて投資金額を増やして100万円の不労所得をゲットしてやるぜイエアアアアアッッッ!!!!!

まずは手始めに日経225をショートだ。自民党総裁選も終わってしまえば材料出尽くし。トランプ大統領が日本との貿易戦争を匂わす発言をすれば今の不自然な吊り上げ相場など瞬く間に崩落。いくで、やるで、日本株全力ショートや!!!!!!

この時のボクはまだ知る由もなかった。

ショートをかけた翌日から日経平均株価は三角持ち合いを上放れし、その後年末に至るまで年初来高値を更新し続けることになろうとは……。※

※これはフィクション(になってほしいと筆者は願っている展開)です。

CFDトレードから学べる人間の本質

冗談はともかく、これが実際のトレードの成績である。

(GMOクリック証券 CFD口座)
  • 利益:平均 + 602 pips 回数 16 回
  • 損失:平均 - 2,970 pips 回数 1 回

上記のデーターから学べることは、大きく分けて3つある。

(1) 16連勝できたのは才能あるいは実力なのか?

競馬でもパチンコでも何でも良いのだけれども、連勝が続くと人間は、それが自分の実力であるかのように錯覚してしまう。ファンダの読みが当たったとか、テクニカル分析が功を奏したとか、(ふっ……計画どおり……)とほくそ笑んでしまうわけである。

今回、CFDで16連勝できたわけだが、これはボクが相場の動きを見抜く鋭い洞察力を有していたからであろうか。いや、運が良かっただけである。

上のキャプチャ画像の集計期間を見ていただければ分かるとおり、2018年5月から同年9月にかけての期間は、日経平均株価がちょうどボックストレンドで推移していた期間である。

ボックストレンド

雑な図解で申し訳ない。ボックストレンドでは株価が一定の範囲内で波のように行ったり来たりするから、上図のオレンジ色の箇所でロングポジションを持とうがショートポジションを持とうが、利益確定のタイミングはやがて訪れる。

もしも単調なボックストレンドが永遠に続くのであれば、トレードで10連勝しようが100連勝しようが何ら不思議はないのである。(もちろんトレンドが永遠に続くことはあり得ない)

2017年のとき、仮想通貨界隈は大盛り上がりしていた。

ビットコインやその他のアルトコインに投資していた人たちの中には「自分には先見の明があった」「我々はアーリーアダプターだ」「法定通貨はこれからどんどん減価してゆくというのに、未だ銀行に金を預けているやつは馬鹿だ」「米国株クラスタはざまあみろ」と声高に叫んでいた過激派もいた。

しかしそれも、たまたまその年の相場環境が良かっただけ。運良く上昇トレンドが続いただけである。

自分の《先見の明》を信じて仮想通貨を手放せなかった人たちはどうなっただろうか。

18年の年初高値から9月にかけて、ビットコイン(BTC)はマイナス65% 、リップル(XRP)はマイナス70% 、ネム(XEM)はマイナス85% 、コムサ(COMSA)はマイナス96%も値下がりすることとなった。

今年に入っても仮想通貨の含み損に耐え続けているホルダーは「これからもビットコインの上昇トレンドは続くはず」「仮想通貨が法定通貨に取って代わる未来が訪れる」と信じている。

仮想通貨に限らず米国株に投資している人だって「米国市場は今後も右肩上がりで成長し続ける」「米国株はこれからも他の先進国・新興国株をアウトパフォームし続ける」「くくく、我らのAmazonがセカイを支配するのだ」と考えているかもしれない。

なんにせよ、自分の持つポジションに対して肯定的な未来予測を信じてしまうのは「肯定的幻想(Positive illusion)」と呼ばれる認知バイアスのひとつであり、ましてやCFD取引での16連勝をおのれの実力と誤認するのは典型的な「自己奉仕バイアス(Self-serving bias)」の事例である。

ともあれ、認知バイアスが存在するからこそ、ギャンブルは楽しいのもひとつの事実だ。

(2) コツコツドカンはどうして発生するか?

長話が過ぎたのであとはさくさく進めたい。

先程のCFDトレード成績で、「利益の1回あたり平均は 602 pips」であるのに対して「損失の1回あたり平均は 2,970 pips」であった点に注目したい。

つまり、小さく細かく利益確定を繰り返す一方で、損切りは損失が大きくなるまで先延ばしにしてしまう。コツコツ稼いでドカンと損する、いわゆるコツコツドカンというやつである。

プロスペクト理論 S字型効用関数

上図はプロスペクト理論におけるS字型効用関数と呼ばれるものだ。(もっとも正確なグラフではなく、あくまで参考イメージとして) 

人間は利得と損失が同じであれば、損失のほうを利得より 2倍も過大評価してしまう。

「株で1万円の利益が出た」喜びよりも、「株で1万円の損失を出した」ショックの方が倍近く大きい。

したがって含み益のときはせっせと利益確定してしまうのに対して、含み損を抱えているときは(損失を確定させることを恐れて)なかなか損切りができない。

人は含み損すなわち「心理的損失」を抱えるとリスク選好型の行動を取り、ポジションを維持したまま株価が元値へと戻る可能性に賭けてしまう。

だが、含み益すなわち「心理的利得」を得ているときはリスク回避型の行動を取り、強気相場が崩れることを恐れて株を売り払ってしまう。

人間であれば程度の差こそあれ、認知の歪みから逃れることはできない。

(3) 自分の意志でどうこうできるのは「賭け金」の決定だけ

結局のところ、我々が未来予知の超能力を持っていない以上、投資で勝つか負けるかは誰にもわからない。見出しのとおり、自分の意志でどうこうできるのは「賭け金をいくらにするか」の決定だけである。

今回、ボクがこんな長ったらしい記事を書く余裕があるのは、CFD口座には「ガチャに課金して失っても後悔しないくらいの」金額しか入れていないからだ。

もしも生活資金をぶっ込んでいれば、16連勝してそのあと大きく1敗したら正気でいられなくなってトレードにのめり込んでいったと思う。

賭け金の設定の時点で、勝負は決している。失っても良い金額以上をCFD口座なんかには突っ込んではいけない(自戒を込めて)。

もっとも去年に仮想通貨FXにハマっていた頃も、最初は1万円から始めて徐々に後に引けなくなってしまい、10万円、50万円……と次第に投入金額が増えていきギャンブル中毒になってしまった反省があり、そもそも下手なギャンブルには最初から近づかない方が身のためなのだ。

おのれの自制心とやらを信用してはいけない。(その時点で心理バイアスがかかっている)

以上、CFD取引で16連勝して得た利益などいとも簡単に吹き飛ぶという話でした。

 

(追記:後日譚を書きました)

「文章が書けない病」と等身大の自分

 執筆スランプがひどくて、趣味のブログや小説まで書けなくなってきている。このブログも下書きリストに100記事近く「書きかけの未完原稿」が溜まっており、たいていは書き始めるも途中で嫌になって投げ出してしまう。

 で、藁にもすがる思いで執筆スランプの脱出法をGoogle先生に聞いてみたら、なんと検索上位2つともボクが書いたブログの記事で、皮肉すぎてさすがに乾いた笑いがこぼれてしまった。

Webライターとして生きる/ときまき! 五条ダン・筆

書けない病とショーペンハウアー

 もっともショウペンハウエルに言わせれば、執筆スランプに喘ぐ物書きなどは、三流の愚か者なのだ。なぜならば、書けなくて悩むのは「考えもなしに書こうとしている」か「書くために考えようとしている」かのどちらかだからだ。

 本物の文筆家であれば、まず自分の頭で考え抜いた思索があり、それを読者に届けようとして、ようやく筆を執り始める。伝えるべき事柄が最初になければならない。

 原稿用紙のマス目を埋めるため、文字数を稼ぐために文章を書くのは、これは紛れもなく読者に対する詐術行為であり、そんなくだらない本はただちに投げ捨てるべきだ。

 ――とまで、ショウペンハウエルは書いている。(きっとショウペンハウエルが現代に生き返ったらインターネットにあふれかえる文章を見て発狂しそうだが)

 ともあれショウペンハウエルの毒舌エッセイに興味のある人は一度彼の著作を読んでみてほしい。上の話は『読書について (光文社古典新訳文庫)/Amazon』の「著作と文体について」の章に書いてある。

 書けないのは、伝えるべきことがないからであり、すなわち書けないときは書いてはいけない。書こうとする前に、徹底的に思索せよ。

 ショウペンハウエルの言うことは厳しくて、本書を読み返すたびにボクなんかはすっかり震え上がってしまう。(というか切実に筆を折りたくなる)

等身大の自分と向き合う

 ところでボクはバーチャルYouTuberになりたくて、なるための勉強をしている。

 個人運営のバーチャルYouTuberさんを見ていると、ほんとすごいなと思う。自分よりも若い人たちが、絵を描いてLive2Dモデルを作って、Blenderで3Dモデリングして動かして、シナリオもやって動画制作もやって、Webサイトを立ち上げてプロモーションもやって、トークもうまいし企画力も並外れている。

 かたやボクはと言えば、絵がうまくなりたいと思ってお絵描き教本を買い集めたは良いも正面顔のところから一向に練習が進まず、子供向けのUnityとC#の入門書を読み始めるも最初の30ページで悲鳴を上げるありさまで、おまけにバーチャル美少女youtuberになるべく「ふわふわり♪ ふわふわる♪」と裏声で歌う練習を深夜にしていたら死にたくなった。

 自分が未熟すぎて落ち込むと同時に、もしこのまま成長しないで歳だけ取っていくことを考えると、やり場のない恐怖と焦燥感がこみ上げてくる。

 けれども他者と自分を比較して得られる劣等感を糧に頑張るのは、経験則上うまくいかなかった。辛くて苦しいからだ。

「すごい自分」になろうと無理をしても、理想と現実のギャップに絶望してしまい長続きしない。

 ボクが執筆スランプでブログが書けなくなったのも、おそらくは「ライターを名乗るからには他者から一目置かれる名文を書きたい!」といった見栄や自意識過剰によって自分を縛っているせいだろう。

《五条ダン》が生まれたばかりの頃、ボクは小説家になろうで『ぼっちの就活日記』というエッセイ風フィクションを連載していた。今読み返してもひどい文章&内容で、こんな黒歴史は葬り去ってしまおうと何度も考えたが、消さずに残している。

 どんなに恥ずかしい黒歴史であったとしても、この頃の文章が最も自由にのびのびと書けていた気がする。等身大の自分で、好きなことを好きなように書いていた。

 なので今はこのくらいのイラストしか描けなくても、等身大の自分に+αを積み重ねつつ、ゆっくりとナメクジのような歩みでも進んでいけたら良いなと思った。

 けものフレンズの「わーい!」「すっごーい!」「たーのしー!」の三原則を創作するときも忘れないように。

 

 バーチャルYouTuberデビューの方はまだ当分先になりそうだが、ニコニコ動画VOICEROID劇場職人(?)の方は一足先に念願のデビューを果たした。

 こちらのマイリストにまとめており、ニコニコは会員登録しなくても動画が見られるように仕様変更されたので、良ければ見てほしい。

 僕たちの戦いはこれからだ!

(了)


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