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「認定ランサー指名料」は実質的な手数料値上げなのか?

 クラウドソーシングの『ランサーズ』で、新たに補償付き認定ランサーなる制度が開始された。例えば、著作権侵害や納期遅延などでクライアント側に損害が発生した場合に、ランサーズから損害賠償金の補償がされるという制度だ。

 名も知らぬ相手に仕事の外部委託するというのは、不安を伴う。だから「補償付き認定ランサー」は、たしかにクライアントにとって、とても安心できる仕組みだと思う。

 これでクラウドソーシングへの発注が活性化すれば良いのだが、この制度にはいくつかの批判もある。ここでは「補償付き認定ランサー」の懸念される点を包み隠さず書いていきたい。

補償付き認定ランサーの問題点

 ランサーズの認定ランサー制度には、次のような疑問の声があがっている。

1.認定ランサー指名料は、実質的な手数料値上げではないのか

 認定ランサーにプロジェクトを依頼する場合、クライアント側は「認定ランサー指名料」として依頼金額の2%を負担しなければならない

 2%なら、1万円の依頼で200円なので、大したことはないと思われるかもしれない。しかし、ランサーズではこれとは別に「システム利用手数料」で20%が取られる。

 さらに消費税の8%も考えると、依頼金額のじつに30%も費用が発生することとなる。クライアント側としては、できるだけコストを抑えたい。ならば「認定ランサーよりもむしろ非認定ランサーに依頼した方が得じゃないの?」と考えるだろう。

1-a.手数料はクライアントとランサーのどちらが負担するのか?

 ランサーズのサイトによれば、次のようになっている。

  • 認定ランサー指名料(2%)→クライアントが負担
  • システム手数料(20%)→ランサーが負担

 つまり、プロジェクトを発注してもらうときに「ランサーズシステム手数料込みで○○円で承ります。消費税、認定ランサー指名料はご負担をよろしくお願い申し上げます」と了承を得ておく必要がある。

 けれども、クライアント側としては「いやいや、初めから税込み・認定ランサー指名料込み込みで提案してよ」となるだろう。

 つまり、何が言いたいのか。

 認定ランサー指名料の2%は、現実的には「ランサー側負担」となってしまうこともあり得る。=認定ランサーになると1.7%の収入減となる可能性がある。(※認定ランサー指名料のうち、0.3%はランサー側にバックされる)ということ。

2.認定ランサーよりも、非認定ランサーの方に補償制度が必要なのではないか?

 そもそも、認定ランサーは「補償制度が必要になるようなトラブルが、極めて起こりづらいランサー」である。ランサーズから認定ランサーに選ばれるためには、以下のような条件を満たす必要がある。

  1. 報酬の獲得額が上位20%に入っている
  2. クライアントからの評価が4.8以上ある
  3. 仕事完了率が90%以上ある
  4. メッセージの24時間以内の返信率が80%以上である
  5. 機密保持確認、本人確認、電話確認などのプロフィール設定項目が済んでいる

 ゆえに、認定ランサーが著作権侵害や情報漏洩、納期遅延などのトラブルを起こす確率は、かなり低い。(そのための認定ランサーなのだから!!)

 だとすると、万が一のトラブル時の補償制度が必要なのは「認定ランサーよりも、非認定ランサー」の方である。補償制度をつける対象が逆ではないのか、という疑問は拭えない。

 クライアントとしても「この人は信頼できるランサーさんだから、継続的にプロジェクトを発注しよう」とランサーズで継続案件をかけているケースが多い。

 ある日突然、「このたび認定ランサーになったので、申し訳ないのですが指名料の2%をご負担いただけませんか」と言われたら、複雑な心境になるだろう。

 わざわざ信頼のできる人を選んで発注しているのに、どうして補償制度の費用まで負担しなければならないの?と思うはずだ。信頼のできる「非認定ランサー」を探した方が得だと思われては元も子もない。せっかく認定ランサーになったのに、報酬や受注が減ってしまうのであれば本末転倒だ。

提案「補償制度は、オプションにすべきである」

 僕は、認定ランサーの補償制度そのものを批判したいわけではない。クラウドソーシングでの取引の安全性を担保するためにも、このような補償制度があることは素晴らしいと思う。いちランサーとしても、ランサーズの取り組みを応援している。

 ただし、補償制度の必要性を感じていないクライアントにまで、負担させるのはおかしいとこれだけは主張しておきたい。クライアント側の自由を制限しては、クラウドソーシングのメリットが薄れてしまう。

 補償制度は(認定・非認定の制限なく)クライアントがオプションで選択できるようにするのが理想だと思う。そうでないのなら「認定ランサー指名料は、実質的な手数料値上げではないの?」と言われても仕方あるまい。

 ランサーズには大変お世話になっているので「ランサー側のシステム手数料を下げろ」みたいなことは僕は決して言わない。システム手数料の20%を負担してでも、ランサーズを使うメリットは大きいからだ。

 けれども、クライアント側に不便を感じさせるような制度はやめて欲しい。補償制度そのものは素晴らしい試みだと思うので、お願いだからオプション制にしてほしい。

 クライアントがクラウドソーシングに求めるものは、もちろん「安心して取引ができること」もある。しかし、それ以上に「コスト削減」というのが最も重要だ。(これこそが本音だろう)

 クラウドソーシングの発注者は、法人とは限らない。個人の方もたくさんいらっしゃる。たった2%の指名料でも、節約したいと考える人は多いだろう。何度も言うけれど、認定ランサー指名料はオプション制にしてほしい。

最後に

 ランサーズを利用されるクライアントの方、ランサーの方、それからランサーズの運営に携わっている方々が、この記事を読んでくださっているのだと思う。

 もしもこの記事内容に共感してくださったのであれば、ぜひランサーズの方へその声を届けてほしい。ランサーズ運営も、サービス改善のために尽力している。

 上のお問い合わせフォームや公式Twitterアカウントの方に、改善してほしいことを伝えるのが一番良い方法だろう。改善案は、できるだけ多くの人の要望が集まったほうが良い。

 ランサーズも一企業として、利潤を追求しなければならない。認定ランサー指名料の件は、クライアント側からの改善要望が強ければ、見直しに繋がるかもしれない。

 ランサーズ、そしてクラウドソーシングの発展を心から願っている。僕自身も、ランサーとしてこれからも頑張っていきたい。

(了)

 

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