Webライターとして生きる

五条ダンのブログ。「楽しく書く」ための実践的方法論を研究する。

執筆スランプを抜け出すには30分あれば良いという話

文筆業を営む者にとってオバケよりも恐ろしいのが「執筆スランプ」だ。僕は専業Webライターとなって3年になるけれど、スランプオバケにはたびたび悩まされている。

文章を書くのが好きでライターやってるんでしょ?とよく言われる。でもぶっちゃけてしまえば、文章を書くのは基本的には苦しいし、面倒だし、やる気が出ないときもある。(いや、日常茶飯事だ)

それでも、筆一本に生活が懸かっている。

やる気がなくても、本気を出せなくても、あるいはうまく書けなくてベッドの上をのたうち回ることになっても、僕は原稿を書き上げなくてはならない。

すなわち執筆スランプを抜け出すための「実用的なノウハウ」が必要なのだ。

先延ばしをするのは好きでないので、結論を最初に書いてしまおう。僕は執筆スランプを回避するため、あるいは抜け出すために、下記のルールに従って執筆している。

  1. 執筆時にはストップウォッチを用意する。「STARTボタンを押したら書き始める」と条件付けしておく。
  2. ストップウォッチでは「カウントダウンモード」を使い、30分後にアラームが鳴るように設定する。
  3. 調子が悪いときは30分で500文字、調子が良いときは30分で1,000文字を達成するように原稿を書き進める。とにかく、30分だけで良いので集中して取り掛かる。
  4. 30分後にアラームが鳴り、筆が乗っていたらそのまま書き進める。疲れていたら休憩に入り、ストレッチをしたり少し散歩をしたりする。10分~20分くらいの休憩が終わったら、またストップウォッチのボタンを押し、30分間集中して文章を書く。

「ストップウォッチ」は執筆の良き友である

『パブロフの犬』はご存知だろうか。犬に餌を与える前に、ベルの音を鳴らす。習慣を続けていると、やがて犬はベルの音を聞くだけでよだれを垂らすようになる。ロシアの生理学者イワン・パブロフによる『古典的条件づけ』である。

我々人間も『◯◯の合図で△△する』という条件付けをしておくと、物事に取り掛かりやすくなる。学校のチャイムが鳴ったら、授業が始まるのと同じように。

在宅ライターはとくにそうなのだけれど《プライベートモード》と《仕事モード》の切り替えがやりづらい。ついつい執筆中にツイッターのタイムラインをぼーっと眺めたり、ニコニコ動画でアニメを見始めたり、はてなブックマークでブコメ巡りに時間を潰したりと、脱線しがちだ。

1日が終わる頃には原稿がまったく進んでおらず(ああ、僕はなんて意志が弱い人間なんだ!!)と後悔を抱えてベッドに潜り込むハメになる。

それを回避するためのアイテムが……。

ストップウォッチ!!

そう、ストップウォッチは執筆の良き友である。

僕が使っているのはセイコー(SEIKO) ALBA PICCO MULTITIMER ブラック ADME001という3,000円ほどのストップウォッチなのだけれど、重要なのはカウントダウン機能があること。時間をカウントダウンし、アラームを鳴らしてくれる機械であったら何でも代用できる。

キッチンタイマー、目覚まし時計、スマホのカウントダウンアラームでもOK。(ただしスマホを使う場合は、執筆に集中するためツイッターやメールの通知を切っておいた方が良い)

で、冒頭のパブロフの犬とどう繋がるのかと言うと「ストップウォッチのボタンを押したら執筆を開始する」という条件付けがやりたいのだ。

速筆で有名な西尾維新さんも執筆中にストップウォッチを使っている、と言えば、少しは信憑性が増すだろうか。(※ソース:西尾維新さん - あのひとの「ほぼ日手帳」 - ほぼ日手帳2014

とにかく、ストップウォッチのボタンを押したら原稿を書き始める、と決めておこう。

執筆スランプなんて怖くない。「書かなきゃ!」と意気込む必要はまったくない。

ストップウォッチのボタンを押しさえすれば、頭が《執筆モード》へと切り替わるのだから。そのような習慣を身につけておくと、後々楽である。

30分の時間的制約を設けて執筆に集中する

冒頭にも書いたように、ストップウォッチはボタンを押したら「30分のカウントダウン」をし、残り時間ゼロでアラームが鳴るように設定する。もちろん30分でなくても良いのだけれど、集中力は時間的制約のなかで発揮しやすい

ストップウォッチは、集中して原稿に取り掛かるための手助けをしてくれる。

ところで一般的なWebライティングでは、重めの案件だと「1記事6,000文字」くらいの記事ボリュームとなる。執筆には(僕の平均だと)8時間はかかり、なかなかにしんどい。

好きなことを書くならいざ知らず、クライアントの要求に応えた6,000文字を書くのは大層骨が折れる。こうした「大変さ」が執筆スランプを引き起こす。

長編小説を書くのは、さらに挫折しやすい。「あと10万文字も書かなきゃいけないなんて……」と思うと足が竦み、書き進める勇気が削がれてしまう。

だけど思い出してほしい。6,000文字の記事だって、10万文字の長編小説だって、100文字程度の文章の積み重ねに過ぎない。「困難は分割せよ」とデカルトは言った。執筆も同じだ。

「とりあえず30分だけ、500文字だけで良いから書いてみよう」と書き始めてみることは極めて重要である。

たった30分、たった500文字だけでいい。一旦書き始めてしまえば、筆が乗ってくる。書き始めなければ、いつまで悩んでも書けるようにはならない。

「書けない悩み」の大半は「書き始められない悩み」と言い換えられる。とにかく、30分書き続けたなら、頭が執筆モードに切り替わる。

僕の場合は、調子が乗らないときは「30分で500文字だけで良いから書こう」と決めている。500文字でハードルが高ければ、200文字でも構わない。調子が出ているときであれば30分1,000文字も行けるが、とにもかくにも1文字でも2文字でもまずは書き始めることだ。

30分単位で時間を区切って、集中して執筆に取り掛かる。1時間だとハードルが上がるし、10分だと原稿を書くには短すぎる。私的には30分が《執筆モード》に入るのに程よい時間と感じる。

僕は例えば「今日は30分枠×12本で仕事を終わらせよう」と1日の初めにスケジュールを立てている。

「30分だけ」と考えることで物事に取り組むときの面倒臭さが軽減されるし、集中して取り掛かることができる。

これは「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれる時間管理術をアレンジしたやり方なのだけれど、仕事になかなか集中できない在宅ライターにはおすすめの方法だ。

詳しくは

の記事にも書いたので、宜しければぜひ。

話が大分バラけてしまったのでもう一度まとめよう。執筆スランプを抜け出すために僕が実践している手法は次のとおり。

  1. ストップウォッチを用意する。ストップウォッチのSTARTボタンを押したら執筆を開始する、という習慣をつける。
  2. 30分のカウントダウンでアラームが鳴るように設定する。「とりあえず30分で原稿を500文字進めよう」と達成できる目標を決める。
  3. やる気が出なくても大丈夫。ストップウォッチのボタンを押したら、とにかく目の前の原稿を1文字でも2文字でも書き進めていくことに集中する。
  4. 30分後にアラームが鳴り、筆が乗っていたらそのまま書き進めても良し。疲れていたら休憩に入ろう。ストレッチをしたり少し散歩をしたりする。10分~20分くらいの休憩が終わったら、またストップウォッチのボタンを押し、30分間集中して文章を書く。

メリハリをつけて「集中」と「休憩」を繰り返すこと。それが、執筆を無理なく持続させる一番のポイントかもしれない。

(終わり)

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