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五条ダンのブログ。「楽しく書く」ための実践的方法論を研究する。

SSSS.GRIDMANの最終話がボクに突きつけてきた残酷なメッセージについて

 もちろんこの記事にはSSSS.GRIDMANの最終話ネタバレが含まれるため未視聴の人は回避してほしい。

 と警告しておきながらさっそく本題に入るけれども、結局のところあれは『自身の創作物によって自己を救うことはできるか』『創作による自己救済は可能なのか』という問いかけを秘めた物語で、言うまでもなく新条アカネはこちら側(・・・・)の人間である。

  こちら側、つまり新条アカネは物語の演者である以前に、虚構世界を創作する側の人間であった。

 ボクは就活に失敗してメンタルが死にかけていた頃に、小説をひたすら書きまくった。誰に読ませるためでも誰に評価されるためでもない、自己救済のための小説だ。合計すると10作くらい書いた。

 地球に隕石が落ちて主人公が夢を叶えられないままに死んでゆく話だとか、入社式に行ったら自分はすでに死んでいてそこは冥界だった話だとか、就活で挫折して引きこもりになった男が虫のバケモノになった話だとか、人類が自殺ウイルスに感染して滅亡に向かうなか主人公がハローワークに行く話だとか、いろいろ書いた。ひどいやつをたくさん書いた。ボクはただ、自分の書く物語によって自分自身を救いたかった。

 そのために、虚構の世界でたくさんの人を殺したし、街を壊した。そして登場人物が気に入らなければリライトをしてそのキャラ自体を《存在しなかった》ことにした。何度も創っては壊した。

 ボツになった設定資料、未完の原稿、破綻したプロット、たくさんの出来損ないのデーターが次から次へと生み出されて、自分の周りは創作物の残骸を入れたゴミ袋でいっぱいになった。身動きの取れないゴミ屋敷だ。

 原稿を書いていると、時たま作中のキャラクターが「お兄ちゃん、こんな不毛なことはやめてもう一度就活に挑戦しようよ」と説教をしてきた。頭にきたボクは創作世界にナメクジオバケを解き放って彼女を死なせた。

 身勝手な神様のせいで、人が生まれ、世界が動き出す。そして人が死に、世界が壊れる。目的を果たすまで何度も何度も、新しい物語は生まれ続ける。

 自身の創作物によって自己を救うことはできるか。

 創作による自己救済は可能なのか。

 

 新条アカネは、ボク自身である。

 彼女が負の感情から怪獣を生み出したように、負の感情は得てして創作に昇華される。

 ボクの書く物語には、裕太や六花や内海はいるのだろうか。あるいは生みの親である作者に反旗を翻して立ち向かってくれるアンチ君はいるのだろうか。

 

 

 お願いだ――、助けてくれ、グリッドマン――。

(了)


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