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自治会がやる赤十字の寄付金集めについて当事者の立場から答えます

毎年5・6月頃になると、町内会や自治会の役員が各家庭を回って「日本赤十字社の活動資金徴収」にやってくる。

僕も自治会に関わるまでは(赤十字社と自治会ってどういう関係性で動いているんだ…?)と不思議に思っていた。

しかし今年の4月から僕は自治会長に選ばれてしまい(経緯については前回の記事を参照)、自治会活動を続けるなかで赤十字運動の概略についておおよそを知るに至る。

ここでは自治会がやっている「赤十字の寄付金集め」について、よくある疑問に一問一答形式で答えていきたい。

【目次】

Q1.そもそも何で自治会が日本赤十字社の寄付金を徴収するの?

A.赤十字から自治会長宛に寄付金集めの協力願いが届きます。強制ではなく、自治会が任意で「協力」しています

5月のあたまに赤十字奉仕団から「赤十字活動資金募集についてのお願い」という書類が自治会に届く。その書類のなかに、徴収した活動資金の振込用紙・専用の領収証・赤十字社のシールなどの必要品も封入されている。

ちなみに赤十字奉仕団とは、日本赤十字社の各都道府県支部のなかに設置されているボランティア組織で、どうやら各市町村にそのような赤十字関連の団体があるらしい。(ここでは便宜上「赤十字」と呼称し、実質的に日本赤十字社の統率下にあるものとして扱う)

インターネットから赤十字に寄付ができるこのご時世に、どうして自治会が?と思わなくもない。

赤十字側の説明によると「赤十字は地域に根差した活動をしているので、自治会には地域住民とのパイプ役として協力してほしい」とのこと。

地域に根差した活動として分かりやすいのが献血活動だ。例えば「○月○日に某所で献血キャンペーンをやりますよー」といった案内も、自治会が回覧板でまわしたり掲示板に貼ったりして告知に協力している。

赤十字奉仕団と行政機関そして自治会は相互に協力し合っている。赤十字の活動報告では「各地区の自治会から○○円の社資を集めた」という実績も開示される。

ただあくまで、日本赤十字社の寄付金集めに協力するのは自治会の善意でありボランティア活動の一環に過ぎない。自治会に寄付金集めの義務や強制があるわけでは、決してない。

Q2.自治会費の徴収と一緒にされるんだけど、赤十字への寄付って強制なの?

A.強制ではないです。また、赤十字社から自治会に対する圧力もありません。完全に任意です

まず、自治会費の徴収と赤十字の徴収が同じタイミングでなされるのは、単に時期的なタイミングがちょうど良いというのと、集金作業の二度手間を避けるくらいの意味しかない。

赤十字社から自治会に対しては「強制ではないので、必ず赤十字会員加入・継続(活動資金納入)の意思確認をしてください」と複数の書類で念押しされている。

したがって寄付金の徴収の際に「意思確認」がまったくなかったとすれば、それは自治会がアウトである。

もしも無理やりに寄付金や募金を徴収しようとするような自治会があったら、すみやかに脱退しよう。(自治会は任意加入団体!)

いずれにせよ、寄付は強制でするようなものではなく、いかなる性質があろうとも断ることができる。というよりも、はじめに意思確認をする義務が自治会側にはある。

Q3.赤十字の「義援金」と「寄付」って何が違うの?

A.義援金は被災地(行政機関)にそのままお金を届けます。自治会で集めている寄付金は「赤十字社の活動資金」として使われます

自治会が赤十字運動で集めたお金というのは、基本的には日本赤十字社の活動資金として使われる。

例えば、献血運動・救急箱の貸出・健康安全講習・生活支援講習・災害時の救援物資調達……等のさまざまな活動費用として運用がされる。

日本赤十字社の各支部のホームページで活動内容は公開されているので、興味のある人は見てみよう。うちの地域は看護師の養成に力を入れている。

Q4.徴収のとき、領収証に住所と氏名を書かされたんだけど何で?

A.寄付した人の連絡先を提出するよう、赤十字から依頼を受けています

とりあえず自治会としては、赤十字社から「2千円以上の寄付をした協力者の住所と氏名を送ってください」と依頼されている。

2017年度からは2千円以上の寄付をした人が「赤十字会員」となるそうで、その会員登録のための情報となる。会員になれば『赤十字NEWS』なる機関誌が自宅に届くとのこと。

加えて、赤十字社への寄付は確定申告時の「所得控除」に使える。その寄付証明として、領収証に住所氏名が必要なのらしい。

Q5.寄付は500円以上じゃないと駄目って自治会の人に言われたんだけどそうなの?

A.誤解です。1円からでも寄付は可能です

500円以上というのは赤十字社が「目安」として定めている金額で、とくに500円以上じゃなきゃ駄目という決まりはない。1円からでも寄付はできる。

一口いくらと決まっているわけではなく、自由に寄付金額は決められる。

Q6.納めた自治会費から勝手に赤十字への寄付金として天引きされていたのだけれど、これってありなの?

A.実務上そのように運営する自治会は少なくないものの、自治会構成員全員の承諾が得られていない場合には「違法」でありアウトです。

先にも述べたとおり、自治会としても「自治会費の徴収」と「赤十字社への寄付金集め」を同時並行でやるのは、少し手間となる。

なので自治会規約の方で「第○条 自治会費のうち○○円を日本赤十字社に毎年寄付する」といったふうに定めておいて、自治会として毎年一定額の納入をするという形を取るのが楽だ。実務上はそのように処理している自治会も少なくない。

自治会規約の方に定められており、自治会員「全員」の同意が得られているのれあれば、自治会費のなかから寄付をすることはまったく問題ない。

しかしながら、たったひとりでも寄付に反対する人が出た場合、これは非常に厄介な問題となる。

なぜならば、特定の団体に寄付をするかどうかは、その人の「思想・信条の自由」の領域であり、本人の意思を無視して強制的に天引きをすると憲法違反になってしまうからだ。

(日本国憲法第19条)

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

たとえ総会で議決された規約であっても、憲法違反とあらばその自治会規約そのものが無効となってしまう。

(民法第90条)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

実際、2008年には「自治会費に寄付金を上乗せ徴収しても良いか」が最高裁まで争われた事案がある。そして「公序良俗違反につき寄付金上乗せ徴収の自治会決議は無効」として判決が確定した。(つまり自治会側の敗訴)

赤十字の寄付金集めで苦労する自治会運営の人には気の毒この上ない話であるが、自治会費からの寄付金天引きは違法となりうることは絶対に知っておきたい。

(なおこの判決の件を当ブログの読者さんより教えていただき、2018年11月2日に記事内容を加筆修正しました。感謝申し上げます。)

加えて、自治会として寄付してしまうと(個人は)赤十字社の領収証が貰えない。ゆえに「所得控除に使えない」という節税上のデメリットが生じる。

赤十字としては単に寄付金を集めるだけではなく「赤十字活動を多くの地域住民に知ってもらう」ことを目標としている。したがって、自治会として一括で寄付するといった方法が広まるのは、赤十字側としてはあまり嬉しくはないらしい。

自治会一括納入方式よりも、地域住民ひとりひとりに寄付金のお願いをする方が望ましい。だから寄付金集めの方法について「ぜひご一考ください」と赤十字奉仕団の方から連絡が来ている。

話を最初の質問に戻すが、もしも自治会費の用途に納得が行かない場合は次のような方法を取ろう。

  1. 自治会役員に問い合わせる
  2. 自治会総会で発議する
  3. 自治会を脱退する

繰り返すけれども、自治会が任意加入団体であり、ただのボランティア組織に過ぎないことをお忘れなきよう。

Q6.自治会で集めた寄付金は本当に日本赤十字社に送られているの? ちょろまかされたりしないの?

A.システム上、不正行為はしづらいものと思われます

例えば自治会長をやっている僕が「寄付金として集めたお金をこっそり着服しよう」と考える悪い人間であったとする。その悪事が成功するかどうかとなると、なかなか難しい。

第一点として、他の自治会役員と共謀でもしない限り、そのような不正はできないこと。

第二点として、「赤十字活動資金領収証」は特別なフォーマットでできており、寄付金額の改竄や隠蔽はできない(困難な)形式となっていること。

第三点として、(悲しいことに)寄付金そのものがあまり多くは集まらないため、そもそも着服しようという気が起こらないこと。

その他諸々の理由があり、自治会の方で不正が起こるといったケースはまずないだろうと思われる。なにせ自治会役員自体が善意のボランティア集団であるため、そんなまどろっこしいことして私腹を肥やすくらいであれば、とっくに自治会を抜けている。

ただ万が一、日本赤十字社のロゴや印章の入っていない領収証を手渡された場合には(あやしい……)と疑っても良いかもしれない。

Q7.赤十字社員ってなんなの? 会社なの?

A.まぎらわしいため「赤十字会員」の名称へと変更されました

これまでは寄付した人を「社員」と呼んでいたみたいだが、どう考えてもややこしく誤解を招く。もちろん会社の社員とは何ら関係ない。

なので2017年度からは「会員」へと名称変更された。

ちなみに2000円以上の寄付で「会員」、2000円未満の寄付で「協力会員」となる。

会員になれば住所と氏名が赤十字に登録され、機関誌『赤十字NEWS』が送られてくる。

そのほかの特典の違いはとくにないので、会員と協力会員の区分などはあまり気にせず、寄付したい人が寄付できる金額で協力していくことが大切だと思う。

Q8.自治会を通さずに個人で勝手に寄付をしてもいいの?

A.もちろんOKです。コンビニでもネットでも赤十字社への寄付ができます

あまり知られていないかもしれないが、ファミリーマートの「Famiポート」やローソンの「Loppi」からでも日本赤十字社への寄付ができる。

また、日本赤十字社の公式ホームページからも赤十字会員に加入することができ、寄付にはクレジットカードや口座振替が使える。

自治会としても寄付金集めにまわるのが大変なので、むしろ個人としてどんどん寄付してほしい。

自治会で寄付金を徴収するシステムはどうしても、人手が必要になるし非効率的と言わざるを得ない。コンビニ端末で気軽に寄付をするといった感じに、寄付がもっと気軽にできる世の中になれば良いなと感じる。

Q9.赤十字社のシールを貰ったんだけどどうしたらいいの?

A.お礼の品です。玄関や表札に無理に貼る必要はありません

共同募金をしたときに貰える羽根と同じく、赤十字社の会員シールもお礼の品であって、とくに玄関や表札に貼らなければいけないということはない。

ちなみに、メルカリに赤十字社の社員証シールが出品されていて、しかも驚くべきことに落札されている。こういうことはさすがにやめよう。

赤十字からも、余ったシールは廃棄か返還をするようにと頼まれている。

Q10.自治会での寄付金集めはうまく行っているの?

A.こちらは厳しい状況です

当自治会、および周辺地域の自治会では、集まる寄付金は年々減少傾向にある。うまく行っているとはいえない状況だ。

僕が自治会長を務めているところは、加入世帯数が数百を超えている。しかし、それらすべてで集まった寄付金額を合算しても1万円に満たない。

自治会役員達の労力(本来の人件費)を思えば、自分のポケットマネーから出した方が早いのではないかと思われる。

ベルマーク集めよりかはマシかもしれないが、正直なところ自治会による寄付金集めは(効率性を考えると)無理が生じてきていると感じる。

もしも赤十字の寄付金集めに「強制感」を抱く人がいるとすれば、それは自治会という地域コミュニティの性質そのものが深く関与している。自治会費と一緒に寄付金を集めます!というやり方は、どうにもいただけない。(断りたくても断れない人はいるだろう)

なお、当自治会ではこちらから寄付金をお願いすることは一切なく「寄付をご希望される方は集金に伺いますので、回覧板の名簿に名前をご記入ください」という方式を採っている。

どうにも赤十字奉仕団の決算報告書を読んでいると、活動費集めをちょっと自治会に頼りすぎているのではないかと感じる部分があり、危うく感じる。

とはいえスマートな代替案を持っているわけではなく、赤十字奉仕団だって自治会と同じボランティア組織だから、なかなか大変なのだと思う。

こちらとしては次期自治会へと今まで通りに引き継いでいくしかなく、歯がゆい。

(終わり)


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