男だけど電車で痴漢被害に遭った話
隠していようと思ったが、痴漢に関する論争がネットでバズるのを見るたびに、僕自身がつらいと云うべきか、つっかえて取り除くことの出来ない心の棘のようなものがあって、この際だから告白してしまおうと思う。
男だけど電車で痴漢をされたことがある。
小学5年生のときだった。祖父母の家に遊びに行く途中で、JR京都線の普通列車に乗り込んだところだった。車内は空いていて、人はほとんどいなかったと記憶している。
椅子は窓を背にして座るロングシート(縦座席)タイプだった。
僕が座席の一番端っこに腰掛けていると、すぐ後からおじさんが乗り込んできて、僕の隣にぴったりと身体をくっつけて座った。
他に空いている席がいくらでもあるのに、どうして真横に座るんだろうと不思議に感じていた。
電車が動き出して少し経ったとき、おじさんが僕の膝の上に手を置いてきた。僕はジャージの長ズボンを穿いていた。
悪意のあるものだとは思っていなかったので「手を置く場所を間違えていますよ」みたいな言葉をかけるべきか否か迷った。おじさんの上半身は前後に揺れていて、もしかしたら眠っているのかもしれないと思った。
黙っていると、おじさんはジャージの上から僕の太ももをさすり、それでも抵抗しないのを見て取ると、今度はジャージのポケットの中へと手を差し入れてきた。そしてポケット越しに、内股を撫で始めた。
この段になってようやく、自分が何か良くないことをされているのに気がついた。しかしそれが具体的に何であるのか、理解できない。
当時は小学5年生だったが『痴漢』の言葉自体は知っていた。通学路のトンネルに『ちかんに注意』と書かれた看板があって、トンネルに出没する不審者が痴漢なのだと認識していた。まさか人目のあるはずの電車のなかでそのような犯罪行為をする人が存在するとは、そのときは夢にも想像していなかった。
だから僕は「この人はスリなんだな」と考えた。ポケットの中をまさぐって、何かを盗むつもりなんだなと理解した。
(シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンや怪人二十面相にハマっていたから、痴漢よりもスリの方がずっと身近に想起される犯罪だった)
上着のパーカーの方のポケットには、家の鍵や切符や小銭入れが入っていた。これを盗まれては大変だと、空いた方の手でぎゅっと鍵を握りしめていたのを覚えている。
電車が走っている間、おじさんは動かしているかいないかのゆっくりとした速さで、ズボンのポケット越しに僕の内股やその先を触っていたが、やがて次の停車駅に着きドアから人が乗り込んでくる少し前に、手を引いた。
今しか逃げるチャンスはないと、慌てて電車から降りた。振り返って、おじさんが追いかけてくる気配がなかったので安心する。各駅停車で、駅の間は5分程度だから、実質的に3分か4分か、短い間のできごとだったのだろう。しかし体感としては、とても長い時間に感じられた。
電車から降りた直後の僕は少し興奮していて、ショックよりもむしろ「勝ったぜ!」という気持ちの方が大きかった。
つまり、僕はおじさんのことを痴漢ではなくスリとして認識していたから、「鍵と小銭入れをスリの手から守り通したぜ! くくく、残念だったな。ズボンのポケットには何も入っていなかったんだよ」みたいな心境だった。今にして思うと悔しい話だ。
結果として盗まれたものがなかった(被害がないと認識していた)こともあり、このことは駅員や警察に話していない。小学生の自分には、事態の深刻さや適切な対処方法が分からなかった。携帯電話も持ち歩く年齢ではなかった。
家に帰ってから、僕は少し自慢げに「電車でスリに遭ったけど大丈夫だった」と母に報告した。母は話を聞いて「それはきっとスリじゃないよ……」と曖昧に言ったが、そこから先は語らなかった。
だから精神的なショックを受けることになったのは実際に被害に遭った時期よりもずっと後の話で、たしか高校生くらいになって痴漢が何であるかを知ったとき「あのときのあれは痴漢だったのか……」と驚くと同時に、腑に落ちたのだった。
インターネットで痴漢犯罪に関するニュースや体験談が話題に上がるとき、しばしば――というか必ずと言って良いほど、はてブでは「男性対女性」の対立構造でコメント欄が荒れる。
悲しく思う。
男女の対立構造を持ち出して痴漢について語るとき、そこには「男性の痴漢被害者」の存在が無視されている。そもそも存在自体が知られていないのではないか。
だから声を上げた。
具体的な解決策を提示できなかったとしても、それでも伝えられることは書いておかなければと思い、書いた。
争っている場合ではないし、団結して戦わなければいけない。一刻も早く、この忌まわしき犯罪が、社会から無くなることを願っている。
(了)
国民年金の免除・猶予申請では「青色申告特別控除」が意味を持つ
人生は思うように行かないもので、Webライターを始めて4年が経つも収入は一向に上がらず、昨年は想定外の出費が重なり経済状況はいよいよ厳しくなり、このたび国民年金の免除申請をすべく市役所へ向かったのだった。
さて、国民年金は前年所得が57万円以下の場合に、全額免除または納付猶予が適用される。
(※世帯構成や扶養親族数等によって基準が異なる。詳しくは、保険料を納めることが、経済的に難しいとき|日本年金機構 を参照されたし。)
この基準となる所得とは、例えばフリーターの人であれば源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が所得金額となる。給与所得控除は最低でも65万円分は枠があるので、57万+65万=122万の計算となり、つまり年収122万円以下の給与所得者であれば全額免除・納付猶予の対象となり得る。
では、ボクのような給与所得控除が使えないフリーランス(個人事業主)の場合はどうなるだろうか。今回はそれを確かめたくて、昨年度の申告書と決算書を持参し、市役所の年金窓口の方に聞いてみた。
ボク(確定申告書Bを見せながら)「個人事業主の場合、免除基準となる所得金額はどれになるのでしょうか」
市役所の人「確定申告書Bで言うところの【9番 ※所得金額の合計】が所得となりますね」
ボク「つまり、青色申告特別控除後の所得で良いのですね」
市役所の人「はい、そうなります」
ボク(決算書を見せながら)「売上から経費を引いた差引金額は57万円を超えているのですが……」
市役所の人「ええ、そこから青色申告特別控除額を差し引いた額が所得金額となりますので、所得57万円以下で申請していただいて大丈夫ですよ」
ボク「これって仕組み上、白色申告の個人事業主さんは不利なんですかね……」
市役所の人「まぁ……えぇ……給与所得の方を主に想定している制度となりますので……」
結論
結論として「青色申告のフリーランスであれば、給与所得者と同じく年収122万円以下が国民年金の全額免除・納付猶予の対象となり得る」ことが分かった。
(※青色申告特別控除額65万円+57万円=122万円)
ただしケースバイケースの事例があるため、年収122万円以下だから必ず全額免除が適用されるとは限らず、日本年金機構の審査によって最終的に免除区分が決まるとのこと。
ヤフー知恵袋で調べてみると「青色申告控除前の金額に決まってるやろ!」みたいな回答をしているカテゴリーマスターさんがいて不安だったのだけれど、今回きちんと市役所の窓口で確認できて安心した。
「売上-経費-青色申告控除」が事業所得となる。もし事業所得の他に給与所得や不動産所得、雑所得等がある場合は、その合算が所得金額となる。
申告分離課税(特定口座・源泉徴収あり)で処理している株の配当金がどうなるかは確認しそびれてしまった……。※また次回市役所に行ったときに聞いてみます。
全額免除が適用されなくとも、半額免除や4分の1免除が適用されて支払額を減らせるかもしれないので、年金保険料を払うのが厳しくなってきたフリーランスの人は、市役所の年金窓口で相談することをおすすめしたい。
年金免除・納付猶予申請をする場合には「青色申告特別控除」が(制度の善し悪しは別として)プラスに働くのは確かなようだ。
ボクなんかも節税メリットを享受するほど全然稼げてはいないのだけれど、それでも青色申告はしておいて損はないということが分かった。
(了)
ボクはまだ仮想通貨で消耗していたという話
正常な判断をすることは難しい。それはもちろん、判断をするときは自分のことを正常だと信じて疑わないからである。
事件は起こった。
12月のある日、ボクはまだ仮想通貨トレードで大儲けする夢を捨てられず、取引所のチャートに張り付いていた。取引板は赤と緑色にちかちかと点滅し、その横ではチャットの文章がめまぐるしく流れている。
そこでふとした怪情報が目の前をよぎった。
「おい、海外取引所では仮想通貨のXEMが1ドルで売れているぞ」
目を疑った。1ドルといえば当時のXEMレートの2倍の価格だ。実際にその海外取引所へアクセスしてみると、たしかに異常な高価格レートで取引されている。
つまり、日本の取引所でXEMを買って、海外の取引所に送金して売却。ビットコインに交換してから日本の取引所に戻し、今度はビットコイン建てでXEMを購入し、海外取引所に送る。そしてまた売却してビットコインに替える。
なんとこの裁定取引(アービトラージ)を繰り返せば、無限に儲かる理屈だ!!!
ヒーハー、目の前にお金が落っこちているようなもんだぜ!! 楽勝じゃないか!!
と思ったボクはさっそく取引所口座に残っていた日本円でXEMを買い付け、すぐさま海外取引所のウォレットに送付した。
結果、送金ロストした。
海外取引所のXEMウォレットは『Maintenance』にステータスが切り替えられ、その後何週間待っても送ったXEMがウォレットに反映されることはなかった。サポートにメールをしてもまったく音沙汰がない。よくよく見ればその取引所は、運営者情報の一切が隠されているではないか。
英語で検索をかけてみれば、被害者と思われる他の投資家の嘆きの投稿で溢れかえっていた。
改ざん不可能でインターネット上に残り続けるXEMのブロックチェーン(台帳)には、ボクがその取引所の口座にXEMを送金した取引履歴のたしかな証拠が残っている。だがその優れたフィンテック技術も、悪意ある詐欺取引所を前にしてはまったくの無力だった。
またしてもボクは仮想通貨で愚かな失敗をしてしまったのだった。
(※過去記事→ 想通貨トレードで投入資金をすべて失ったボクが伝えたいこと)
その後XEMは価格が2倍に高騰し、結局は(国内取引所でも)1ドル付近で取引されるようになった。つまり余計なことをせずにそのままホールドしていれば、資金は2倍になったのだ。
悔しくて、絶対にやめると誓っていた仮想通貨トレードに再び手を伸ばしてしまう。夜間も、休日も、仮想通貨相場に休みはない。しかも現物取引であっても、レバレッジ25倍のFX並みに値動きをする恐ろしいジェットコースターである。
資金が30%近く増えたり減ったりする日常茶飯事に、さすがに感覚がおかしくなってしまう。やっていて(あっ……これは典型的なギャンブル依存症だな……)と自覚する。だが自覚があっても取引をやめられないのが依存症の怖いところである。
どのようなギャンブルであっても、勝ち逃げできずにトレードを繰り返した果てに行き着くのは「破産」である。
ついには夢のなかでさえボクは仮想通貨トレードをするようになって、夢の世界では赤色や緑色の数字があたり一面を駆け回っていた。高いビルの電光掲示板に『ビットコイン価格5000万円を突破!!』と表示され、ボクは目をまん丸にして(ついに億り人になるときが来たのか……)と興奮と共に目を覚ます。
飛び起きてスマホで確認してみると、保有通貨は前日比マイナス20%に下落していて、夢から一気に現実に戻った。不毛な生活である。
ミヒャエル・エンデの『モモ』をもう一度読み返さなければと思った。人々は未来のお金を得たいがために《今》というかけがえのない時間を――、命を失ってしまう。
投資は、時間のマジックを使ってお金を働かせる。しかしギャンブルでは我々がお金に弄ばれ、気がつけば時間を盗まれている。本末転倒ここに極まる。
さておき、仮想通貨そのものにお金を投じるよりも、ブロックチェーン技術の勉強をしてアプリやWebサービスの個人開発に取り組んだ方が、はるかに得られるものが多い。
JavaScriptで開発ができる仮想通貨LISKのコミュニティは技術方面でも盛り上がっているし、APIマニュアルが公開されている仮想通貨XEMでもさまざまなWebサービス・アプリを作ろうと試みる学習者が増えてきた。
XEMの投資家たちが「XEMの価格に一喜一憂することはもうやめて、どのようにその技術を使うのか、自分なりにできることからやっていこうよ」と呼びかけているのは、とても良い兆しだと感じる。
たとえバブルが弾けて仮想通貨の価値が今よりずっと低いものになったとしても、そこで培った知識と技術は、決して無駄にはならない。一生の財産と言ったら大げさだろうか、しかし貴重な経験とはなるだろう。
自分の魂を差し出すようなギャンブルは、やめなくてはいけない。
『賭ケグルイ』は漫画の世界だけに留めておきたい。
サンプル数が自分ひとりなので何とも言えないが、ボクのように仮想通貨ギャンブル依存症に陥ってしまう人は今後増えていくだろう。恐ろしいことだ。
言われなくても分かっている。
ビットコインの価格を1000万円にするよりも、自分自身の能力を1mmでも2mmでも高めることの方が大切だ。自己投資こそが、最高のパフォーマンスを誇る投資なのだから――。
(了)
半額の王様
ダメ出しをされるのには慣れており、おのれの未熟さをよくよく自覚している。しかしそれでもショックを受けるのが人間で、ある日、なにげなくエゴサーチをしたときに見つけてしまった。
『五条ダンというやからはライター失格だ。文章がなっておらず読むに堪えない。聞くところによると《自称ライター》とのことで、ああやっぱりなという感じだ』
読者から頂いた記事へのコメントは、おおよそそのような内容だった。効果は抜群。豆腐メンタルが儚くも砕け散る。
ショックだった。だがそれは自分が不当な評価を受けたことへの憤りではなく、不安定なアイデンティティの急所を突かれたことによる揺らぎであった。
ライター、失格。
大学時代、就職活動に失敗したボクは、何者にもなれなかった。何者にもなれないまま、何とかしがみついたのがWebライターの職であった。
「ライター」の肩書きは自信と安心を与えてくれたが、そんなものは誤魔化しだ。ボクには出版社で働いた経験もなければ、本を出した実績も無い。本職のライターの半額以下の報酬を提示して、ようやく仕事を貰えている立場に過ぎない。
そのような自分が「ライター」を名乗るのは、とてもおこがましいことで、ともすれば反感を買うものかもしれない。
ボクは、何者でもない。
きっと何者にもなれない者には生存戦略が必要である。
何者かになること、何者かであろうことに苦しむのではなく、頑張るのではなく、何者でもない自分が心の底から何を愛し、何を成し遂げたいのか、正直に、真摯に、真剣に、目を逸らさず、等身大の自己の気持ちと向き合わなければと強く感じた。
今日、十二月五日は関西でも真冬並みの気温で、駅舎を抜けると街灯の光を浴びた吐く息が白く濁った。
駅前の百貨店は、地下がスーパーマーケットになっている。夕食もとい夜食を買って帰ることにした。夜の七時を過ぎるとさまざまなお総菜が半額で売り出されるのだ。
エビフライもお刺身もコロッケも半額価格で買うことができ、懐が寂しい身としては大変ありがたい。両手にスーパーの袋を引っさげ、駐輪場へ向かう。このとき一階に上がって、フロアを通り抜ける必要があった。
百貨店の一階フロアは、ブランド服や腕時計、宝石を扱う高級店がきらびやかに並ぶ。閉店間際の八時少し前になると、スーツ姿の店員さんがずらりと出てきて「ご来店ありがとうございました」と深々お辞儀をして客を見送るのが慣例となっている。
そのなかをボクは、半額お総菜の入ったレジ袋を引っさげて歩くわけだ。まるで自分が場違いな世界に紛れ込んでしまったような気がして、そわそわと気恥ずかしくなる。
一歩進むごとに店員さんからの丁寧なお辞儀を受け、何だか自分が「半額の王様」であるような気持ちになるのだった。
(了)
仮想通貨トレードで投入資金をすべて失ったボクが伝えたいこと
(なんてことだ。仮想通貨トレードで資金をすべて溶かしてしまったぞ……)
乱高下するビットコイン Air FXの板を眺めながら、ボクは椅子に腰を沈める。セミの抜け殻のように放心していた。ショーターを焼き払った火柱は一瞬で消え、気まぐれな悪魔の笑みを浮かべて今度はロンガーを薙ぎ払いにいった。
ボクの頭にはさまざまな後悔が過ぎった。
ネムをナンピンせずにすぐ手放してさえいれば。ビットコインを損切りせず持ち続けていれば。欲をかかずにあのときビットコインキャッシュを利確しておけば。チャットの怪情報に騙されなければ。損を取り返そうとAir FXに手を出したりしなければ――。
すべてが、後の祭りだった。
今朝は人身事故が多かったと聞く。株であれ、FXであれ、仮想通貨であれ、ギャンブルと呼ばれるものはすべてそうだけれども、そこでは時として命のやり取りがなされる。自己責任とはいえ、電子データーの数値の上下で人の運命、生き死にが決まるのは、なんともSFチックでディストピアな話かもしれない。
かのイケダハヤト氏は「まだ仮想通貨持ってないの?」というブログを運営し、あろうことかビットコインFXをオススメするという、恐ろしい事業をやり始めた。ビットコインのイケイケ相場も、そろそろ終わりだろうか。
仮想通貨トレードを絶対にやめろとまでは言わないが、投入資金を全部失ったボクからは、下記の三点を注意しておきたい。
1.投機は「失っても良い額」以上は賭けない
今こうしてボクが、ブログ記事を書くくらいの精神的余力を残しているのは、ひとえに投資金額そのものが少なかったからである。
大学生のとき2013年~2015年のアベノミクス相場で、ボクは株式投資で多くの資産を失ってしまった苦い経験がある。そのとき、自分が――いや人間の思考というものが――いかに気まぐれで、コントロールが難しく、思い通りにならない代物であるかを思い知った。
つまり、自分がバカであることを知った。
当時、卒業論文で行動経済学について研究していた。しかし株で大負けして分かったのは、結局のところ、自分がどれだけ投資家心理やプロスペクト理論に詳しく、冷静な判断に基づいて取引しているつもりであっても、決して自己の認知バイアスから逃れることはできないという残酷な事実であった。
仮想通貨投資を始めるとき、頭の中の99%は「よっしゃ! これで俺も億り人になってやるぜ!!」という謎の自信に満ちていたが、僅かに残った1%の理性が「全負けの可能性は十分にあり得るな……」と予測をしていた。
だから万が一、賭けた資金をすべて失ったとしても、精神的に納得はできる金額以上は投入しなかった。実際に「万が一」が起こり、判断は正解だった。
もし欲をかいて生活資金を使っていたならば、ボクは今ここにいなかったかもしれない。
ギャンブルは最初の賭け金を決める段階で勝負が決していると言っても過言ではなく、すなわち「負けたら人生が破滅する!」みたいなギャンブルは、実際にはお金ではなく自分の魂を差し出す行為に等しい。
もし含み損で精神的なダメージを受けているのであれば、それは最初から賭けてはいけないお金だったのだ。
自分の意思によって100%確実にコントロールできるのは「賭け金をいくらにするか」だけである。とにかくここで間違えてはいけない。
そのことが痛いほどによくわかった。
2.短期トレードによって失われる最も大きな資産は「時間」である
賭け金が少なかったので、金銭的ダメージは致命傷を避けられた。しかし考慮していなかったのが「時間」というかけがえのない資産である。
ボクはこのところ仮想通貨中毒になっていて、睡眠時間を削ってトレードをしたり、相場が気になって仕事が手につかなかったり、暴落の不安で眠れなかったり、むしろそちらの方が大ダメージだった。
寝不足と緊張がたたり体調を崩し、風邪を引いてしまった。
株取引をやっていたときは今の50倍以上の資金を動かしていた。だから自分がこれほどまでに消耗するとは思わなかった。
仮想通貨のボラティリティは株とは比較にならないほど大きく、ジェットコースター並みのスリルがある。
具体的に言えば、ビットコインキャッシュという仮想通貨はたった1日で価格が2倍に吊り上がり、その日のうちに値が半分に暴落した。ボクはその瞬間を目の当たりにしたが、この世の終わりを見たような気がした。
仮想通貨取引所のチャットでは、いろんな人が買い煽りや売り煽りのポジショントーク、それから株だったら絶対に逮捕されるレベルの「風説の流布」なんかを好き放題に投稿している。
仮想通貨は取引所によって値段が違うので、チャットの怪情報なんかでも釣られて買い板が動かされてしまう。チャットによる情報戦と板の読み合いで価格が変動するそれは、リアル人狼ゲームであり、ポーカーであり、ババ抜きであり、チキンレースでもあるのだが、脳内からドーパミンがドバドバと分泌されるのを実感することができる。
もちろんゲームと割り切ってしまえば面白いのだけれど、なんにせよネトゲ中毒と同等か、それ以上の中毒性が仮想通貨トレードにはある。
中毒に陥った結果、失われてしまうのは貴重な時間である。「トレードする暇があったら、働いてJPYマイニングした方が儲かる!」のはこの界隈ではよく知られた話だ。
3.取引所のサーバーを信じてはいけない
株やFXと、仮想通貨トレードとで大きく異なるのは「取引所」を信頼できない点にある。
相場加熱時には値が吹っ飛んでロンガーもショーターも焼き払われることがあるし、サーバーが落ちて損切りできないことだってある。
注文ボタンを押しても「現在は一時的に取引ができません」と表示され、注文が通らない。だから負けポジションを抱えたトレーダーは必死にF5キーや注文ボタンを連打して、なんとか逃げ切ろうとする。
ボクも昨日のあのときにボタンを押して注文が通ってさえいたのなら、30%の損失だけで抑えられていたというのに、まったく悔しい話である。
「相場加熱時に注文が通らない」は、ここ数日はわりと日常茶飯事で起きている。日本の複数の取引所でサーバーエラーがあり、韓国の取引所のサーバーも落ちたと聞く。
過去のこの記事ではZaifを取り上げたが、Zaifに限った話ではなく、仮想通貨取引所のサーバーを信じてはいけない。
多分、SBIが仮想通貨取引所を開いたら、少なくないトレーダーがそちらに移動するのではないかと思う。仮想通貨取引所はまだまだ発展途上の段階にある。
終わりに
ひとつだけアドバイスを。
ギャンブルに限らないが「損した分を取り返さなきゃ!」という思考になると大抵は負けてしまう。投資は「損したことを忘れて眠る」のが良い戦略で、投機は「損をする前提でトレードする」のが大切である。
おそらく今後「仮想通貨で○○万円儲かりました!」みたいな記事が、はてなブックマークにも上がってくるだろうと思う。そのときに頭の片隅にでも、この記事のことを思い出してくれたなら幸いである。
なお、当記事中の文章のいくつかは、ツイッターで呟いたツイートをそのまま抜粋している。
当記事の筆者に興味のある方はボク(五条ダン (@5jDan) | Twitter)のツイッターアカウントをフォローしていただけたなら嬉しく思う。
ただ仮想通貨トレーダーは引退、もとい退場させられたので、今後トレードに関するツイートをすることはないです。もしそれっぽいツイートをしていたらたぶん闇堕ちしてしまっているので、どうか全力で止めてほしい。
(了)
ブロガーが書きたがらない仮想通貨取引所「Zaif」のデメリット
仮想通貨ビットコインの価格は2017年の初めから終わりにかけて8倍近くに高騰し、バブルだバブルだと囁かれつつも、順調に市場規模を大きくしている。
「仮想通貨やってる人は今頃大儲けなんでしょ?」と思われるかもしれない。
だが、儲かっているのは主にビットコインを買っている人たちだ。僕みたいに夏頃にアルトコインに手を出してしまった勢は、含み損に頭を抱えつつ、隣のビットコイナーを恨めしく眺めている。
さておき、これから仮想通貨を始めようとする人に、ひとつ注意しておきたい。
それは、仮想通貨界隈はポジショントークの巣窟だということだ。
このブログにたどり着いた人は、おそらく仮想通貨取引所を比較検討しているところだと思う。
気をつけてほしい。多くのブロガーは(取引所の)メリットは饒舌に並べ立てるけれども、デメリットは口を閉ざして語りたがらない。
本題に入ろう。
仮想通貨取引所「Zaif」のデメリット
仮想通貨取引所「Zaif」のデメリットは次の通りである。
- サーバーが不安定!! ←これが最大の懸念事項
- 肝心な相場でサーバーダウンして「502 Bad Gateway」でアクセスできなくなる(2017年8月27日のZaifトークン事件)
- 相場加熱時に「注文は一時的に利用できません」と表示され、注文が通らなくなる(2017年11月2日のビットコイン急騰事件)
- 相場加熱時に「貸付残高の不足」により、信用取引の注文が通らなくなる
- チャットの買い煽りや売り煽りがひどい
- ZaifアカウントからXEM送金した際に、マルチシグトランザクション未対応の海外取引所では送金がウォレットに反映されない
- (追記)Air FXをユーザーに無告知で新規受付停止にし、現物価格から値を大幅にふっ飛ばした挙句にショートポジションを持っていた人たちを強制ロスカットさせた ※17年12月
- (追記)APIキーが不正使用され一部顧客の保有コインが盗まれる。緊急の出金制限対応 ※18年1月6~8日
- 上記のような肝心の情報を公式ツイッターアカウントで呟くだけで、サイト上で分かるような告知をしない
Zaifサーバーが時折不安定なことは、仮想通貨トレーダーにとってはもはや有名である。
にもかかわらず仮想通貨取引所の比較記事なんかを見ても、Zaifのデメリット項目に挙げられているのは「取引画面が使いづらい」みたいな当たり障りのない欠点だけで、肝心のことが書かれていない。
これは記事の書き手がZaifで取引をしたことがないか、意図的にデメリットを隠しているからである。
サーバーダウンや注文エラーは、致命的なデメリットだ。
仮想通貨なんて、ただでさえボラティリティ(価格変動)が大きい。レバレッジをかけて仮想通貨FXをしている人であれば、相場変動時にいかに迅速にロスカットするかに生命線がかかっている。
そんなときに「502 Bad Gateway」が表示されたら顔が引きつるだろうし、「注文は一時的に利用できません」の警告表示で注文が通らないとあらば、キーボードを叩き割りたくなるだろう。
Zaif運営はとにかく、投資家が安心して取引できる環境を整えてほしい。
補足その1:2017年8月27日のZaifトークン事件とは
ブロックチェーンソリューション「COMSA」プロジェクトとZaifトークンの連携期待から、17年8月27日にZaifトークン価格が2.5円付近まで急騰。
しかし直後にZaif公式ツイッターアカウントが
『ZaifトークンとCOMSAプロジェクトは、今のところまだ連携などの予定はありません。是非一度落ち着いてください』
といった内容の、冷水を浴びせるようなツイートをし、投げ売りパニックで0.3円台まで叩き売られた騒動。
高値でZaifトークンを買ってしまった人は、たった一日のうちに資産が5分の1以上溶けるという、悪夢のような惨状に。
もっともそれ自体は「自己責任」だが、アクセスが集中した結果zaifのサーバーがダウンし、「502 Bad Gateway」で一時的に取引できない状態となる。ホルダーは損切りできない恐怖を味わったことだろう。
Zaifのサーバーエラーは、2017年だけでも1月11日、3月24日、5月27日、6月4日、6月20日、8月27日、8月30日、9月29日、10月27日、11月2日、11月8日、11月12日、11月27日、12月2日、12月4日にも発生している。(補足漏れを含めればもっと多くなるはず)
公式運営はサーバー増強に努めているようだが、まだまだ不安の域を脱せない。レバレッジ取引なんて、とてもじゃないが怖くてできない。
補足その2:2017年11月2日のビットコイン急騰事件とは
ビットコイン先物が17年内に米CMEで上場されるとの発表を受け、BTCが急騰。11月2日に80万円台の高値を更新する。
ところがZaifではサーバーエラーによる混乱があり(成行買い注文の殺到&空売りロスカットのコンボが決まったのだろう)80万円台どころか、一時的にBTCが99万円をつけるというびっくりな事態になった。
案の定サーバーは不安定で、注文が通らない。
(サーバーが繋がらないとイラストのような「F5アタック」をする人が出てきて、ますますサーバーに繋がりにくくなる)
ちなみにZaifチャットでは「注文ボタンを連打すれば行ける!!!」みたいな謎のアドバイスが流れてきて笑ってしまった。
ブロガーはなぜ仮想通貨取引所のデメリットを記事に書かないのか?
多くのブロガーが、仮想通貨取引所の(こういった生々しい本当の)デメリットを記事に書きたがらないのは、それが自分にとって不都合な事実だからである。
Zaifには、アフィリエイト制度がある。
記事中の紹介リンクを経由してZaifアカウントが開設されたときに、ブロガーには成果報酬が振り込まれる仕組みとなっている。
Zaifのアフィリエイト報酬は、キャンペーン中の17年11月現在では最大で18,000円と非常に高額だ。
こんなに美味しいアフィリエイト案件を逃すのは勿体無い話なので、報酬を目的とする人たちが声高に「仮想通貨は儲かるよ!」と甘言を囁き、仮想通貨取引所のメリットを喧伝する。
僕は別にZaifに恨みがあるわけではないし、むしろメインの取引所としてZaifを愛用している。XEMやMONAなどのアルトコインをトレードするのであれば、国内ではZaifが最も手数料が安いし(安いどころかmakerだと取引手数料がかからない)Zaifを重宝している。
しかしながら、あくまで「仮想通貨取引所のデメリットやリスクを知った上で、利用すること」が大切である。
このあたりの情報がネットには不足している(あまりにも偏っている)ため、走り書きながら記事にした。
以上、Zaif口座開設を検討する人のお役に立てれば幸いである。
(了)
【購入レビュー】DXRACER(フォーミュラ)の使い勝手と所感
DXRACERという4万円くらいする椅子(ゲーミングチェア)を買って、1ヶ月ほど使用した。今日はそのレビューを書きたい。
僕はWebライターを本業としているのだけれど、職業柄、とにかく椅子に座る時間が長い。
これまでは3千円くらいの格安オフィスチェアを使っていて「腰が痛い!」「めっちゃ姿勢が悪くなる!」「高さが合わない!」といった不満を抱えていた。
そこで予算を奮発して買ったのが「DXRACER ゲーミングチェア DX-57SV シルバー」という製品。
お値段なんと39,800円!!
※17年11月現在のAmazonでの価格です。価格変動があるので、詳細は商品ページでご確認ください。
個人的には椅子に4万円もかけるのは大きな出費となる。さらにグレードの高い椅子だと、10万円超えも珍しくないらしいが……。さすがにそこまでは手が出ない。
DXRACERの使い勝手の悪いところ(デメリット)
最初に、一ヶ月使ってみて「これは使い勝手が悪い!!」と思ったデメリットを先に書こうと思う。総括すると良い椅子なのだが、まずは気になる点を挙げてから。
僕が感じた「DXRACER フォーミュラシリーズDX-57SV」のデメリットは次の通り。
- ランバーサポート(腰のクッション)が使いづらい!←これが一番大きい
- 組立時にうっかりするとボルト部品が椅子内部に入ってしまう
- 同価格でも型番で微妙に機能が異なる
ちょっとこれだけでは分からないと思うので、詳しく説明したい。
結論から述べると「腰のクッションが使いづらいこと」以外は大満足している。
1.ランバーサポートの機能性が悪い
ランバーサポートは腰部分を支えるクッションで、写真のように枕みたいな形をしている。程よい弾力性があり、これ自体はモノとして悪くない。
着脱はもちろん可能であるし、位置についてもベルト調節で上下に動かせる。
それなら何が駄目なのかと思われるかもしれないが、ここでランバーサポート裏面の写真をご覧いただきたい。
そう、ベルトとクッションが縫い付けられていて、分離できない構造となっているのだ。
だから一旦ベルトを椅子に固定してしまうと、着脱が面倒だ。
クッションを取り外すためには、ベルトをほどいて座面から引っこ抜いてやらなければいけない。
クッションの上下位置を調整しようにも(クッションがすーっとスライドしてはくれないから)立ち上がって椅子背面に回って、ベルトを調整してやる必要がある。
つまり何が言いたいかというと、
- ランバーサポートは着脱できる!(が、着脱が面倒)
- ランバーサポートは上下に位置調整できる!(が、調整が面倒)
の2つが、デメリットとしてそれなりに大きい。
DXRACERは「リクライニング」が目玉機能だ。
しかし想像してみれば分かる通り、リクライニング時には腰のクッションが邪魔になる。だからランバーサポートは簡単に着脱できてほしい。なのにこれができず、もどかしい。
正直なところ、DXRACERはランバーサポート以外の部分に大きな不満はない。ここだけどうしても、かゆいところに手が届かない部分となる。
ベルト部とクッション部が、マジックテープか何かで留まっているのだったら良かったのだけれど。
結局、僕はDXRACER付属のランバーサポートは使わず、市販の腰用クッション(紐やベルトがついていないやつ)を使うことにした。
いっそのこと、DXRACERのランバーサポートは、ベルトを切り落としてしまっても差し支えないとさえ思う。
もっとも、ランバーサポートはおまけのようなもの。使いづらいならば、市販品を買い足してカバーできる。ヘッドレストなんかもじつは、百円ショップのダイソーで手に入る。
ランバーサポートについて不満点はあるものの、解消しようと思えば解消できるので、まあ良いかなといった感じ。
2.組立時にボルト部品が椅子内部に入らないよう注意
デメリットというより、組み立ての注意点。
組立自体は簡単で、30分もあれば組み立てられる。とくに難しい工程もない。
ただ一点だけ注意点として「ボルト部品がうっかり椅子内部に入ってしまいやすい」ことが挙げられる。
DXRACERでは組立時に、座面にあらかじめ装填されているボルトを取り外す、という工程がある。
このときに、ボルトにくっついている金属製の輪っか(ワッシャー/平座金)が、取り外すときにポロッと椅子の布地のなかに入り込んでしまうケースがある。と他人事のように書いているけれど、僕がやらかしてしまった。
(写真はイメージサンプル。ボルトについている薄い円盤状の金属が、ワッシャー/平座金)
一度中に入ってしまうと取り出すのは至難の業で、絶望したのだが、幸い予備のボルトが一本ついていてそれで事なきを得た。
実際に見てみないとなんのことやらわからないと思うけれども、とにかくボルトを椅子から取り外す工程だけは、少し慎重に作業しよう。
3.同価格でも「最新モデル」の方が高機能である
僕が買ったのは、DXRACERフォーミュラシリーズの「DX-57SV」という製品で、17年11月現在、Amazonでは39,800円で販売されている。
これは2014年の販売モデルなのだけれども、より新しく販売されたモデルの方が(価格は変わらないのに)高機能になっている。
より具体的に述べると新モデル(DX-11)において、アームレストが1D→3Dに進化している。
「DX-57SV シルバー」は、アームレストの高さ調整はできるが、前後左右には動かせない。
ところが同価格(39,800円)で売られている「DXRACER ゲーミングチェア DX-11 フォーミュラシリーズ」(2016年販売モデル)だと、3Dアームレストが搭載されており、アームレストを上下(高さ)・前後(スライド)・左右(首振り)で立体的に動かせる。
ふつうは「値段が同じならば、機能も同じだろう」と考えるので、思わぬ落とし穴(というほど大げさでもないが)だった。
これからご購入される方は、同価格製品でも「3Dアームレスト」の搭載が商品説明欄にちゃんと書いてある製品を選ぶことをおすすめしたい。
僕はこの点でちょっと後悔している。
DXRACERの使い勝手の良いところ(メリット)
いろいろといちゃもんをつけたものの、DXRACERはゲーミングチェア・オフィスチェアとしては素晴らしい製品だと思う。
これまで3千円の格安チェアを使っていただけに、座り心地は抜群に改善された。
DXRACERの良いところは、第一に、座り心地の良さである。これは間違いない。
そもそもがゲームの長時間プレイ用に作られたゲーミングチェアであるので、長時間座っても疲れにくいようにできている。
僕は主に仕事用のPCチェアとして使っているけれど、腰も痛くならないし本当に助かる。
ただ一点だけ誤解のないように。
× DXRACERに座ると姿勢が良くなる(誤り)
○ DXRACERは姿勢を良くして座ることもできる(正しい)
ということだけは伝えたい。
基本的に、ゲーミングチェアはたしかに身体の負担は軽くしてくれるけれども「骨盤補正」「猫背改善」「正しい姿勢を保つ」といった効果までは期待できない。
僕も猫背がひどくて、DXRACERだろうがなんだろうが、気がついたら座る姿勢が崩れてしまっている。こればかりは自分の意識の問題でもある。
DXRACERはあくまで楽に座れるゲーミングチェアであって、姿勢改善を目的とする製品でないことは但し書きしておく。
リクライニング機能は素晴らしい
リクライニングは最大で150度倒すことができる。
ちょっと今日は仕事が長丁場になるなと思ったときに、背もたれを倒して仮眠を取ることができるし、仮眠のつもりだったのに気がつけば夜が明けていた……、みたいな体験もできる。
ちょうどよい場所にヘッドレストもある。リクライニングは至って快適といえる。
「ゆりかごモード」なる座面を揺らせる機能もある。といってもそんなに自由に揺れるわけでもなく、こちらはおまけ程度。
キャスターで楽に動かせるので、寒い日は部屋の窓際に DXRACERを持っていって、窓越しの日光浴をしながらリクライニングで安らげる。背もたれを最大まで倒して、窓の向こうを流れる白い雲を眺めながら、ぼんやりと考えごとをする。
買う前はリクライニング機能なんていらないのでは……と思っていたが、いざ使ってみると、リクライニングできる椅子がこんなに心地よいものだとは知らなかった。
以上、長くなってしまった。この辺で購入レビューを締めくくりとしたい。
僕が買った製品は
- DXRACER ゲーミングチェア DX-57SV(Amazon)
で、上記のAmazonページから買える。
ただ先にも述べたとおり、こちらの製品はアームレストの3D機能がついていないので、アームレストにこだわる方は同価格の別モデルである
がおすすめ。
DXRACERフォーミュラシリーズは、型番によって微妙に仕様が異なるところがあって、上記のAmazonページにも書いてあるのだけれど
- DXR・DXZ・DX-57SV → 1Dアームレスト(高さ調整のみ)
- DX-11 → 3Dアームレスト(高さ調整&前後スライド&左右首振り)
となる。
僕はよく知らずに買ってしまったので、これから買う人(とくにアームレスト重視の人)はお間違いなく。
以上、DXRACERを購入するときの参考になれば幸いです。
(了)
あめゆじゆとてちてけんじや
「六甲のおいしい水を買うてきてほしいんやけど」と頼まれたのは、妹が緊急入院をして三日目の朝だった。病院食が喉を通らない絶食の状態で、点滴注射が痛々しい。小さく笑みをつくって、妹は六甲のおいしい水が飲みたいと言った。
僕は頷いて病室の外へ出る。よくわからない焦燥感に追われるように、病院のフロアを歩き回り、自動販売機を探す。六甲のおいしい水。僕の住まう地域では昔から馴染みの深いブランドで、我が家でその言葉が使われるときは一般的なミネラルウォーターのことを指す。
さておき自動販売機だ。経口補水液やらスポーツドリンクやらお茶やらはあるのに、ふつうの水がどうしてか売っていない。強いていえば「いろはす」という透明なボトルが、どうやら天然水らしい。しかし以前にミネラルウォーターだと思って「いろはす」を買ったら、炭酸が入っていたり、またあるときはミカン風の甘味がついていたり。いろはすの製品ラインナップを熟知していない僕にとっては、買うのに抵抗がある。
結局、病院を出て自販機を探して走る。妹の病状が急変したというのに主治医は海外に行ってしまっており帰国に数日かかる。恨み言を吐いても僕には何もできない。自販機を探すと同時に襲いくるのは途方もない無力感であり、自分には何もできない、ひとえにその兄としての情けなさである。
ふと(あめゆじゅとてちてけんじゃ)のフレーズが頭をよぎった。中学か高校の国語の授業で習った、宮沢賢治の詩作。表題は、永訣の朝。
けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
の書き出しで知られるこの詩は、若くして世を去った妹の死を悼んで書かれたものである。詩の全編は「宮沢賢治 『春と修羅』 - 青空文庫」でご覧いただきたいが、永訣の朝のなかで(あめゆじゅとてちてけんじゃ)の言葉は四回も繰り返される。
熱に浮かされた妹が『雨雪を取って来てちょうだい(あめゆじゅとてちてけんじゃ)』と賢治に頼んで、賢治は妹のことを想いながら雪のみぞれを集めに行く。
改めて読み返すと、これほどに、切実で、切迫した、悲しい歌があるだろうかと心に突き刺さる。
もっとも雪のなかみぞれを取りに行くのと、自販機でミネラルウォーターを買いに行くのとでは、天と地ほどの差があるのかもしれない。しかし薄暗い曇り空を見上げるとどうしてか(あめゆじゅとてちてけんじゃ)が幾度も想起されては、胸が痛くなるのである。
結局、自販機を四台回ってもふつうの水もといミネラルウォーターは見つからない。けれど初めからそんな徒労に明け暮れる必要はなかった。病院の目の前にあるセブンイレブンに行けばよかったのだ。
僕はセブンイレブンで「奥大山の天然水」なるブランドのミネラルウォーターを買って、病室に戻った。妹は目を閉じていた。
原因もよくわからない。ましてや未成年で本来かかるような病ではなく、不可解な点が多い。退院の目処は立たない。
不安な気持ちになり、病名でGoogle検索をかける。案の定、名のなきライターが書いたであろう、医療系キュレーションサイトの記事で埋め尽くされている。WELQ(ウェルク)の炎上騒動のときには、どこか他人事な気持ちがあったかもしれない。
いざ当事者になってみると、思う。これはたしかに、罪なのだ。単に一個人や一企業だけが背負えるものではない、インターネットという巨大な、資本と情報との過剰結合が生み出した、罪なのだと。
手元のタロットカードを一枚引く。
出てきたのは小アルカナのソード「剣10」の逆位置だった。
時間はかかる。
今はじっと、夜明けを待つしかない。
(了)
貸仮想通貨サービスの恐ろしいリスクに気づいてしまった話
貸仮想通貨取引所のひとつであるcoincheckには「貸仮想通貨」なるサービスがある。
イメージとしてはSBI証券の「貸株制度」の仮想通貨バージョンだ。仮想通貨を一定期間貸し出すことで、利子が得られる仕組みとなっている。
この金利がなかなか良くて、貸株だと年利0.1%だとか0.5%だとかそのレベルなのだけれど、coincheckでは最大で年率5%の金利を受け取れる。
(※補足:利息は日本円ではなく仮想通貨で付与される。仮想通貨は法定通貨ではないから、厳格には「利子」ではなく「利用料」と表記される)
貸し出し期間と金利は下記の通り。
- 14日間 年率1%
- 30日間 年率2%
- 90日間 年率3%
- 365日間 年率5%
資産を年利5%で運用するのはなかなか大変だが、貸仮想通貨ならこれが実現できる。
僕は、めっちゃええやん!!と思って、さっそく試しに「14日間 年率1%」のコースで手持ちの仮想通貨(XEM)を貸しに出した。
悲しいことに、悲劇はその14日間のうちに起こった。
貸仮想通貨サービスの最大のリスクは「損切りできない」こと
一応、貸仮想通貨サービスのリスクについては事前に調べていた。
貸仮想通貨は「消費貸借契約」であり、無担保の貸し出しだ。貸出期間中に万が一取引所が破綻すれば、貸し倒れとなる可能性がある。
しかし、どう転んでも二週間後にcoincheckが倒産するとは思えない。だから、ローリスク&ミドルリターンでめっちゃお得やなあ……という軽い気持ちで、貸仮想通貨サービスに申し込んでしまった。
もうひとつの致命的なリスクに気がつかぬまま――。
貸し出してから数日ほど経った日のこと、はてなブックマークを眺めているとこんなニュースが目に飛び込んできた。
- ビットコインは詐欺、取引行えば即解雇する-JPモルガンCEO - Bloomberg(2017年9月13日)
- 中国の仮想通貨取引所、9月末で全取引停止・閉鎖へ:朝日新聞デジタル (2017年9月14日)
悪材料を受けて仮想通貨の相場は総崩れし、ビットコインは50万円台から30万円台へ。僕が買っていたネム(XEM)は36円から18円へと大暴落した。
ネムに関して言えばたった10日のうちに、価格が半値になってしまったのだ!
株式であれば企業価値が毀損されない限り、理由もなしにここまで下げることは考えにくい。しかし仮想通貨の場合は「値上がり期待」の需給で価格が決まってしまっており、ストップ安もないから、落ちるときは底なしに落ちてゆく。恐ろしい恐ろしい。
パニックはパニックを生み、連鎖する。
僕は下落チャートを眺めながらワナワナと震え(損切りしたい……損切りしたいよぉ……)と涙を浮かべて手を合わせていたが、貸出中だから売ることができない。損切りができない。貸出の中途キャンセルは、もちろん不可である。
ただ真っ青になって、墜ちてゆくナイフを見守るだけだ。
そう、貸仮想通貨サービスの最大のリスクは「貸出中にどんな悪材料が出たとしても逃げられない」こと。
これはcoincheckが破綻するよりも、はるかに起こり得ることで、実際に起こっている。
価格変動リスクの高い商品を貸しに出すことの危うさを、僕は理解しておかなければならなかった。
もしもこれから貸仮想通貨サービスを利用してみようかなと考える人がいたら、このリスクだけはどうか頭の片隅に覚えて置いてほしい。
(追記)
18年1月7日現在、coincheckは未だ「仮想通貨交換業者」としての認可を金融庁から受けていない。破綻はないにしても、金融庁未認可のまま運営を続けるcoincheckには潜在的なリスクがある。
(了)
在宅ワーカーからの搾取によって成り立つテープ起こし業界の闇
正直に言ってこのような暗い内容の記事はもう書きたくもないのだが、あまりにも我慢ならないものを見つけてしまった。
後述するが、僕は一般社団法人 日本クラウドソーシング検定協会を経由してこのテープ起こし会社を知った。
上のサイトを見てもらえれば分かるとおり、テープ起こしを1分99円というあり得ない廉価で引き受けている。
通常、テープ起こしの相場は安くても240円/分くらいだ。通常の依頼で200円を切るなら大した買い叩きであるし、ましてや100円を切るだなんて考えられない。
だから上記のサイトを見たとき、ちょっとびっくりしてしまった。悪い意味でショックを受けた。
在宅ワーカーの時給は最低賃金を下回る
繰り返すけれども、先に挙げた「タイピングベース」なるサービスでは、テープ起こしを99円/分で引き受けている。これがいかに非常識的なことなのかを説明したい。
上記の採用情報をご覧のとおり、タイピングベースは在宅ワーカーにテープ起こしを外注している。(業務委託契約)
僕もテープ起こしの仕事をしていたことがあるのだけれど、テープ10分を起こすのには大体1時間の作業を要する。つまりテープ1分=99円で請けるのであれば、時給換算では990円前後となる。
ただしこれはクライアントから個人として直取引で請ける場合であって、タイピングベースの在宅ワーカーとして作業した場合は、分単価99円の報酬から[会社の利益]および[内勤スタッフの給与]がさらに差し引かれるはずである。
時給換算で800円か700円か、もしかしたら500円を切ることも十分に考えられるが、東京都の最低賃金である時給932円を上回る報酬を在宅ワーカーが得られるとは到底思えない。
この記事のタイトルのとおり。
今のテープ起こし業界は、在宅ワーカーからの搾取によって成り立っている。
暗澹たる気持ちである。
日本クラウドソーシング検定協会とタイピングベースの繋がり
やるせないと感じるのは、このような在宅ワーカー買い叩き企業のお仕事を、よりにもよって在宅ワーカーを支援するはずの日本クラウドソーシング検定協会が紹介してきたことだ。
日本クラウドソーシング検定協会は、駆け出しWebライターのための資格である「Webライティング実務士」の検定試験を実施している団体だ。
ここの検定教材の質がひどい!という話は、昨年に当ブログでも記事にした。
上のWebライティング技能検定の教材が、4万円も取るうえにまったくひどいクオリティだったので、本当に怒っていた。
そして今回、技能検定合格者に対して「タイピングベースに登録して在宅ワーカーになると、先着200名にモバイルバッテリーをプレゼントするよ」というメールが協会から送られてきたのだ。
上のページからも、日本クラウドソーシング検定協会が「タイピングベース」への登録を合格特典としていることを確認できる。
もう、悲しみのぶつける先が見つからないのだけれども……。
4万円の教材で「Webライターの資格」を与え、その資格者に買い叩きテープ起こしの仕事を紹介する。
これを搾取と言わず何であるのか。
タイピングベースにおける「はてブ」スパム(ブラックハットSEO)
今回、僕が少し強気になって特定のサービスを批難している理由のひとつとして、タイピングベースがブラックハットSEOをしている可能性が高いということが挙げられる。
タイピングベースのトップページには、34件のブクマがついている。すべて無言ブクマである。しかもうち33件がデフォルトのはてなアイコンである。
そして各ユーザーのブックマーク先を確認したところ「seoマスターの株式会社ディテイルクラウドクリエイティブ」という会社のトップページをブックマークしているユーザー(計10名)と100%一致した。
はい。完全に真っ黒な、はてなブックマークスパムですね。
在宅ワーカーはブラック企業と戦ってほしい
僕もこんな記事を書いたからには、SEOマスターからネガティブSEOや嫌がらせを仕掛けられるかもしれない。そのときはそのときである。
ただひとえに、テープ起こしをしている在宅ワーカーの人たちには、このようなブラック企業に負けることなく、戦ってほしい。
クライアントとフリーランスは、対等な関係性のうえでビジネスをしている。適正な価格で仕事を請け負うことは、社会のためであり、相手のためであり、そして何より自分のためでもある。
間違っても分単価99円の仕事を請け負ってはいけない。
僕とてまったく他人事ではなく、この業界を、買い叩かれるWebライターや在宅ワーカーの未来を、本当に何とかしたいと切に願っている。
一寸先は闇なれど、ともに戦っていこう。
(了)