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五条ダンのブログ。「楽しく書く」ための実践的方法論を研究する。

CFD取引で16連勝して得た利益など簡単に吹き飛ぶという話

2017年に仮想通貨FXを始めてすっかりギャンブル中毒となったボクは、18年のコインチェック流出事件とビットコイン大暴落騒動が起きたあとも熱が冷めずに、投機の新天地を求めて彷徨うがごとくGMOクリック証券のCFD口座を開設していた。

CFD取引では日本、米国、新興国等の株価指数や、原油価格、金価格、面白いところでは恐怖指数(VIX)に対してポジションを建てられる。株と違って夜間もトレードができ、先物と違って期限もない。CFDは「株版のFX」と呼ばれているそうだ。

ちょうどその頃ボクはAmazon Prime Videoで『マネー・ショート華麗なる大逆転』のドキュメンタリー映画を観てしまっており、スーパーマンを夢見る無垢な子どものようにショート(空売り)に憧れていた。


マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)/Amazon Prime Video

サブプライム問題の本質をいち早く見抜きリーマンショックでボロ儲けした投資家たちの話。原題の『The Big Short』や原作の『世紀の空売り』の方が聞き覚えがあるかもしれない。

The Big Short という題からてっきり株式を空売りするのかと思いこんでいたのだが、まったく見ず知らずの金融商品が作中で登場して(ふぁっ!?)となり、自分がリーマンショックをまったく理解していなかったことを思い知らされた。恐ろしい恐ろしい。閑話休題。

さておき、CFD取引の結果は順調で、なんと無敗で16連勝もしてしまった。

日経225をショートしたり新興国ブル3倍ETFをショートしたり米国VIをショートしたり、とにかくショートしかしてないがすべて勝った。

ヒャッッハアアアァァァ!!!! ボクは天才トレーダーだぜ、もう何も怖くない!!!!! 今までは様子見で少資金しか入れていなかったが、レバレッジを引き上げて投資金額を増やして100万円の不労所得をゲットしてやるぜイエアアアアアッッッ!!!!!

まずは手始めに日経225をショートだ。自民党総裁選も終わってしまえば材料出尽くし。トランプ大統領が日本との貿易戦争を匂わす発言をすれば今の不自然な吊り上げ相場など瞬く間に崩落。いくで、やるで、日本株全力ショートや!!!!!!

この時のボクはまだ知る由もなかった。

ショートをかけた翌日から日経平均株価は三角持ち合いを上放れし、その後年末に至るまで年初来高値を更新し続けることになろうとは……。※

※これはフィクション(になってほしいと筆者は願っている展開)です。

CFDトレードから学べる人間の本質

冗談はともかく、これが実際のトレードの成績である。

(GMOクリック証券 CFD口座)
  • 利益:平均 + 602 pips 回数 16 回
  • 損失:平均 - 2,970 pips 回数 1 回

上記のデーターから学べることは、大きく分けて3つある。

(1) 16連勝できたのは才能あるいは実力なのか?

競馬でもパチンコでも何でも良いのだけれども、連勝が続くと人間は、それが自分の実力であるかのように錯覚してしまう。ファンダの読みが当たったとか、テクニカル分析が功を奏したとか、(ふっ……計画どおり……)とほくそ笑んでしまうわけである。

今回、CFDで16連勝できたわけだが、これはボクが相場の動きを見抜く鋭い洞察力を有していたからであろうか。いや、運が良かっただけである。

上のキャプチャ画像の集計期間を見ていただければ分かるとおり、2018年5月から同年9月にかけての期間は、日経平均株価がちょうどボックストレンドで推移していた期間である。

ボックストレンド

雑な図解で申し訳ない。ボックストレンドでは株価が一定の範囲内で波のように行ったり来たりするから、上図のオレンジ色の箇所でロングポジションを持とうがショートポジションを持とうが、利益確定のタイミングはやがて訪れる。

もしも単調なボックストレンドが永遠に続くのであれば、トレードで10連勝しようが100連勝しようが何ら不思議はないのである。(もちろんトレンドが永遠に続くことはあり得ない)

2017年のとき、仮想通貨界隈は大盛り上がりしていた。

ビットコインやその他のアルトコインに投資していた人たちの中には「自分には先見の明があった」「我々はアーリーアダプターだ」「法定通貨はこれからどんどん減価してゆくというのに、未だ銀行に金を預けているやつは馬鹿だ」「米国株クラスタはざまあみろ」と声高に叫んでいた過激派もいた。

しかしそれも、たまたまその年の相場環境が良かっただけ。運良く上昇トレンドが続いただけである。

自分の《先見の明》を信じて仮想通貨を手放せなかった人たちはどうなっただろうか。

18年の年初高値から9月にかけて、ビットコイン(BTC)はマイナス65% 、リップル(XRP)はマイナス70% 、ネム(XEM)はマイナス85% 、コムサ(COMSA)はマイナス96%も値下がりすることとなった。

今年に入っても仮想通貨の含み損に耐え続けているホルダーは「これからもビットコインの上昇トレンドは続くはず」「仮想通貨が法定通貨に取って代わる未来が訪れる」と信じている。

仮想通貨に限らず米国株に投資している人だって「米国市場は今後も右肩上がりで成長し続ける」「米国株はこれからも他の先進国・新興国株をアウトパフォームし続ける」「くくく、我らのAmazonがセカイを支配するのだ」と考えているかもしれない。

なんにせよ、自分の持つポジションに対して肯定的な未来予測を信じてしまうのは「肯定的幻想(Positive illusion)」と呼ばれる認知バイアスのひとつであり、ましてやCFD取引での16連勝をおのれの実力と誤認するのは典型的な「自己奉仕バイアス(Self-serving bias)」の事例である。

ともあれ、認知バイアスが存在するからこそ、ギャンブルは楽しいのもひとつの事実だ。

(2) コツコツドカンはどうして発生するか?

長話が過ぎたのであとはさくさく進めたい。

先程のCFDトレード成績で、「利益の1回あたり平均は 602 pips」であるのに対して「損失の1回あたり平均は 2,970 pips」であった点に注目したい。

つまり、小さく細かく利益確定を繰り返す一方で、損切りは損失が大きくなるまで先延ばしにしてしまう。コツコツ稼いでドカンと損する、いわゆるコツコツドカンというやつである。

プロスペクト理論 S字型効用関数

上図はプロスペクト理論におけるS字型効用関数と呼ばれるものだ。(もっとも正確なグラフではなく、あくまで参考イメージとして) 

人間は利得と損失が同じであれば、損失のほうを利得より 2倍も過大評価してしまう。

「株で1万円の利益が出た」喜びよりも、「株で1万円の損失を出した」ショックの方が倍近く大きい。

したがって含み益のときはせっせと利益確定してしまうのに対して、含み損を抱えているときは(損失を確定させることを恐れて)なかなか損切りができない。

人は含み損すなわち「心理的損失」を抱えるとリスク選好型の行動を取り、ポジションを維持したまま株価が元値へと戻る可能性に賭けてしまう。

だが、含み益すなわち「心理的利得」を得ているときはリスク回避型の行動を取り、強気相場が崩れることを恐れて株を売り払ってしまう。

人間であれば程度の差こそあれ、認知の歪みから逃れることはできない。

(3) 自分の意志でどうこうできるのは「賭け金」の決定だけ

結局のところ、我々が未来予知の超能力を持っていない以上、投資で勝つか負けるかは誰にもわからない。見出しのとおり、自分の意志でどうこうできるのは「賭け金をいくらにするか」の決定だけである。

今回、ボクがこんな長ったらしい記事を書く余裕があるのは、CFD口座には「ガチャに課金して失っても後悔しないくらいの」金額しか入れていないからだ。

もしも生活資金をぶっ込んでいれば、16連勝してそのあと大きく1敗したら正気でいられなくなってトレードにのめり込んでいったと思う。

賭け金の設定の時点で、勝負は決している。失っても良い金額以上をCFD口座なんかには突っ込んではいけない(自戒を込めて)。

もっとも去年に仮想通貨FXにハマっていた頃も、最初は1万円から始めて徐々に後に引けなくなってしまい、10万円、50万円……と次第に投入金額が増えていきギャンブル中毒になってしまった反省があり、そもそも下手なギャンブルには最初から近づかない方が身のためなのだ。

おのれの自制心とやらを信用してはいけない。(その時点で心理バイアスがかかっている)

以上、CFD取引で16連勝して得た利益などいとも簡単に吹き飛ぶという話でした。

 

(追記:後日譚を書きました)


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